フリーアナウンサーとして出発を切ったが、現在の自分を作ってくれた古巣への思いは熱い。

「まず最初に、ニッポン放送でアナウンサーとしての基礎を築いたと思いますし、“働くことの意味”を教えてくれた場所です。当時、朝の番組で苦戦を強いられていたんですけど、その番組を卒業するときに、ある構成作家さんとの会話で、『キャバクラとかカラオケに行ったら楽しいか?』『楽しいです』。『お金どうしてる?』『払ってます』。『あの番組1年やってて楽しかったか?』『つらかったです』。『だからお前はお金をもらえたんだ。いいか、楽しい思いをしたらお金を払うんだ。つらい思いをするからお金がもらえるんだ。だから、これから理不尽なことがあったとしても、そのたびに頭の中で“チャリン”って鳴らせ』と言われまして、それが今の糧になってますね」

「フジテレビには17年いたんですが、本当に先輩たちからいろいろ教わって、後輩たちも友達みたいな感じで『スーさん、スーさん』と慕ってくれて、面白い人たちがたくさんいますし、とても自由が許された会社でもありました。最後に、港(浩一)社長、大多(亮)専務、矢延(隆生)取締役にも一人一人ご挨拶させてもらったんですけど、皆さん『これからも一緒に頑張ろう』と言ってくれて、こんなふうに送り出してくれるリーダーたちがいる会社は誇りに思いますし、社員に対して懐の深い優しい会社だなと、辞めるときに改めて思いましたね。本当にフジテレビで良かったなと思います」

■もっとフィールドを広げてやっていきたい

今後は、『RIZIN』を中心に、他の格闘技団体の実況も担当し、10月9日にはU-NEXTでライブ配信されたキックボクシング『GLORY COLLISION 4』で興奮を伝えた。また、フジ時代から取り組んできたeスポーツ実況にも力を注いでいきたい考えだ。

フジでは『超逆境クイズバトル!!99人の壁』で、実況とクイズ挑戦者の紹介VTRでナレーションを担当してきたが、これも引き続き担当。その他にも、フジとの関係が切れずに継続する番組があるという。

また、『RIZIN』のあおりVTRのナレーションを担当する立木文彦らがいる大沢事務所に10月1日付で所属し、「尊敬する立木さんの事務所でお世話になるということで、すごくありがたいです」と感謝。その上で、「ラジオ、テレビ、配信と経験しているので、もっとフィールドを広げてやっていきたいです。他局も含めて、今まで一緒にお仕事をすることができなかったプロデューサーやディレクターの方々ともご縁を作っていけたらと思います。もちろん、これから厳しいことを痛感することもあると思いますが、そこにも挑んでいかなければと思っています」と意気込んだ。

ちなみに、フリーになってから、周囲のすすめでメガネを外して活動。ただ、「実況のときはかなり眼球を動かすので、メガネでしゃべります。そのメガネも新しいものに替えたので、心機一転新しいスタイルでやっていこうと思います」とのことだ。

●鈴木芳彦
1979年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、03年ニッポン放送に入社し、06年フジテレビジョンへ転籍。『RIZIN』をはじめ格闘技などのスポーツ実況、eスポーツ実況を担当し、22年9月に退社、フリーアナウンサーに。今後は『RIZIN』を中心に格闘技中継や、バラエティ番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジ)などを担当する。