シンガーソングライターのZAQが2022年10月24日でアーティストデビュー10周年を迎える。そんな10年の集大成ともいえるベストアルバム『ZAQPOT』がリリースされている。本アルバムには、シングル表題曲・配信シングルなどに加え、書き下ろしの新曲も余すところなく収録。初回限定盤には、厳選されたセルフカバー楽曲8曲を収録した特典CDも付属する。今回、ZAQのインタビューが到着した。「売れる曲を作りたい」という言葉に込められた音楽への熱意を紐解いていく。
ライブの楽しさも知って欲しい
──10月24日でアーティストデビュー10周年を迎えます。まずは、この10年を振り返ってみての率直なお気持ちを教えてください。
ベストアルバムのリリースなどをはじめ、10周年に合わせて色々な活動をさせていただきましたが、ZAQとしては1年目が10回来ているような感覚なんです。常にフレッシュな気持ちで音楽と向き合っているので、「10年選手になったぜ!」みたいな感覚があんまりなくて。あっという間の10年だったなという気持ちでいっぱいです。
──思い描いていた通りの10年でしたか?
いえ、正直ここまで長くアーティスト活動をやるとは思っていなくて。24歳の頃にデビューしたのですが、30歳になったらもう私は楽曲提供側にまわると思っていたんですよね。何なら最初の頃は「すぐに飽きられてしまうだろうなぁ」といった、ネガティブな感情が強かったです。まさか10年もアーティスト活動を続けて、リリースも絶えずあるとは思ってもいなかったですね。
──求められていたからこそ10年続いたわけですが、ご自身の気持ちもついていかないとなかなか続けられないと思います。音楽制作に対する気持ちが途切れてしまったことなどはなかったのですか?
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大して色々なエンタメがストップしたときは、何を書けばいいんだろうと悩みましたね。自分が求められていることは何なのか、アーティストとしての需要はどこにあるのかと考えました。
──エンタメの在り方を考えさせられる期間だった気がします。
音楽って、生活必需品ではないですからね。別になくても生きてはいけるんです。ただ、あったほうがいいものだと、私は信じています。
──衣食住のように生きていくために必要なものではなりませんが、それでもエンタメがないと心が豊かにならないと、私はコロナ禍で改めて感じました。
同感です。ライブもめっきり減ってしまいましたね。音楽の在り方やライブに対する向き合い方が、恐らくこれから変わってくるだろうなと覚悟しています。
──ライブが少なくなったことでの影響を感じている?
フェスなどで新たなアーティストと出会う機会が減っていると思います。インターネットで発信するアーティストの情報しか受け取れない、届ける側もそれを意識するというのは大きな変化だったんじゃないかな。ボカロやTikTokが流行り続けているのも頷けます。そういう新たなエンタメを取り入れることや、時代の変化自体は、決して悪いことではありません。むしろいいことだと思います。ただ、これは個人的な思いですが、多感な時期の若い世代の子たちにはライブの楽しさも知って欲しいんですよね。音楽を自分で体感する、音圧を楽しむ経験をして欲しくって。音楽と出会うことで、考え方や人生が変わるってこともあると、私は信じています。「ライブは必要ない」って時代は来ないで欲しいですね。そうならないように、私たちも発信していく必要があると思っています。
時代に合わせた曲作り
──環境や届け方の変化に合わせて、ご自身も曲の作り方を変えていますか?
はい。アニソンには色々な楽曲がありますが、コールなどで声を出して盛り上がる、というのも文化のひとつだと思うんです。ただ、コロナ禍ではそれができません。今は声の代わりに手を叩いたり、踊ったりして盛り上がるようになっています。なので、お客さんがコールしなくても盛り上がれるというアプローチで曲を作ることを意識するようになりましたね。アルバムに収録されている「Dance In The Game」がまさにその作り方をしている曲です。ラテン系の踊れる曲で、今の若い世代にも刺さるような作り方をしました。
──なるほど。
あとは、サブスクが浸透したことで、ザッピングする人がかなり増えているという印象も受けます。そうなると、イントロの10秒で刺さる曲や短い曲のほうが多くの人に届く可能性が高いと思っていて。なので、インパクトのある入り方や、あえて間奏を作らず、3分以上4分未満で曲を終わらせるなどを意識するようにもなりました。
──アニメタイアップ曲で言えば、アニメのOP・EDを飛ばさせる仕様のサブスクサービスが多いというのも影響がある気がします。
そうですね。私もさまざまなサブスクサービスに入っているので分かるのですが、OPは「スキップするかどうか」選択できるし、EDはもはや「スキップする」選択肢すらなく、次のエピソードへ自動で進むサービスがあります。もしかしたら、TVサイズのアニメタイアップ曲は、どんどん短くなっていくかもしれないですね。ドラマのように、本編中に被らせるっていうことも増えるかもしれません。
──今後も、音楽、アニソンシーンの変化はまだまだあるかもしれませんね。
それに適応していかないと、この業界で生きていけないかもしれませんね。
──言いにくいかもしれませんが、自分が好きなものを書くというよりも、今の音楽シーンがこうだから、それに適した曲を書くという気持ちが強い?
どちらも包括しています。私、売れる曲を書きたいと思うようになったんですよね。それは、素晴らしいアニソンシーンを経験してきたから。例えば、デビューシングルの「Sparkling Daydream」はTV アニメ『中二病でも恋がしたい!』のOP主題歌で、ZAQの代名詞とも言える代表曲になりました。多くの方にカバーしていただきましたし、アニソンフェスで歌うと、多くの方が喜んでくださる1曲です。
──オープニング映像も含めて、すごく話題になった曲ですよね。
ステレオグラムで映像が切り替わるOPアニメーションは当時とても斬新で、中には「なんだ、これ」っていう人もいました。ただ、そういうものこそ文化として残っていくと思います。実際に多くの人に届いた曲になりました。私は、みんなに届くアンセムをまた作りたいんです。そうなると、私のわがままで作りたい曲を作り続けるだけでは、才気あふれるレスポンスの速い子たちには勝てません。だから時代や環境に適応しなきゃいけないですし、結果的にそれが自分のやりたいことにもなるって感じですね。