金城Pが手がける『監察医 朝顔』でも、東日本大震災の津波で行方不明だった母親の遺骨が見つかったり、父親の認知症の症状が進行してしまったりする状況に直面した主人公が、前に進んでいく様子が描かれている。
「現実はドラマよりも残酷なことがあって、どんなに死なないでほしいと思っても死んでしまうし、起きてほしくないことが実際に起こってしまうこともあります。だからドラマでは、そうした不幸が起きたときにどう対応するかで、“人間って捨てたもんじゃないな”と見えて、そこに救いを求めてもらいたい。誰も死なず、全ての病気が治るハッピーなフィクションの世界を描くより、現実ですごくつらくなったときに“あの主人公も頑張ってたな”と思い出してもらえるようなドラマを作っていきたいと思っています」
それを踏まえ、改めて今作に込めた思いを聞くと、「もし自分が『明日死にます』と言われたら、残された人や家族には申し訳ないし、とても悲しいですが、いろんなものは食べたし、いろんなところに行ったし、いろんな人に会って、短いけどいい人生だったかなと思えるかもしれない。でも、そんなことを思うことができないような小さなお子さんが、これからの可能性が失われてしまうことを悲しいと思うのは、人間の本能的な感情だと思います」とした上で、「このドラマを見終わった後に、お子さんがいる方は我が子を抱きしめたくなるような、街を歩いていて昨日まで子どもの声が騒がしいと思っていた人も『この子たちが今日も元気で良かったな』と思えるような作品にできるといいなと思います」と願いを述べた。
■監修医師から小児救急・PICUの普及に期待
ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の効果で、フライトドクターの志望数が増加したという現象があったが、今作でも医療監修を務める浮山教授は「このドラマを通じて認知度が上がって、小児救急・PICUが日本中に広まり、全ての子どもたちが医療の恩恵を受けられるよう期待しています」とコメントしている。
そうした社会的貢献の役割について、金城Pは「ただのいち会社員なんで…」と謙そんしながら、「監修していただいている先生方は本当に頑張ってくださっているので、たくさんの方に見ていただくことで、先生方に何か恩返しできるとうれしいなと思いますし、ドラマなのでリアルとは少し違う部分もありますが、実際に働かれている方がご気分を害さないようにしたいと思っております」と真摯(しんし)に語った。
●金城綾香
1987年生まれ、兵庫県出身。12年フジテレビジョンに入社し、『5→9~私に恋したお坊さん~』『グッド・ドクター』『犬神家の一族』『監察医 朝顔』『SUPER RICH』『元彼の遺言状』など手がけ、22年10月クールで『PICU 小児集中治療室』をプロデュースする。