結婚や出産、子育てと仕事を両立させて、長くキャリアを積み重ねたい。そんな将来像を描いて就職活動をしている学生たちには、企業の産休・育休の制度内容やサポート体制がどうなっているのか気になるところでしょう。

社員の4割が女性、さらに女性の4割がワーキングマザーというオリックスグループでは、9月28日に産休・育休中の社員を対象に「ORIX Group Mom & Dad」セミナーを開催しました。

子育てと仕事の両立は可能なのか。就活生にとっては、そのリアルな実態や先輩たちのホンネを知る機会になるので、セミナーの様子を伝えます。

  • 企業の育休・産休制度はどうなっている?

子どもたちもセミナーに参加!?

オリックスグループでは、毎年同様のセミナーを実施していますが、東京や大阪でのリアル開催でした。今回はオンライン開催となったため、子育て中の社員約50名が全国から参加。

名称も昨年まで「ORIX Group Mom」と女性対象でしたが、今年は「Mom & Dad」と男性も参加できるようになりました。

画面の向こうには、子どもを抱っこしながらの参加者が集まり、癒やされる光景です。でも途中でぐずったり、着替えさせたりなど、リアルな日常も垣間見えました。

  • 産休・育休中の社員を対象にした「ORIX Group Mom & Dad」セミナーがオンラインで開催

ワーキングマザーは大切な戦力

「今年の10月から育児・介護休業法、いわゆる『産後パパ育休』が改正されるなど、社会全体で男性の育児参加を推進しています。オリックスグループでは時差出勤、在宅勤務もかなり定着し、仕事と育児を両立しやすい環境が整いつつあります。育児は女性の負担が大きいのが実態ですが、男性が育児に参加することで軽減されていくと考えています」と話すのは、オリックスグループ人事・総務本部 副本部長兼グループ人事部長の堀内拓也さん。

  • オリックスグループ人事・総務本部 副本部長兼グループ人事部長 堀内拓也さん

同グループでは、1980年代から女性採用に力を入れると同時に出産・子育てとの両立を支援するセミナー等を実施。初めて「ORIX Group Mom」を開催した2005年と今年3月末時点を比較するとワーキングマザーの割合は約7倍に高まったそうです。

「現在、女性の復職率はほぼ100%です。ワーキングマザーはもう特別な存在ではなく大切な戦力です」と同グループのグループ人事部人財開発チーム 西田さんも言い、復職後に活用できる制度・施策の充実にもオリックスグループは力を入れ、以下のような制度を用意しているのです。

・希望する部署で一定期間業務に従事できる「社内インターン制度」
・異動を希望する部門へ直接アピールできる「キャリアチャレンジ制度」
・利用料の一部を会社が負担する「ベビーシッター助成制度」
・自己研鑽などに利用できる「自分磨き制度」
・ワーキングマザー向けの研修・セミナー開催

さらに、育休者専用サイトも開設して必要な書類がダウンロードできたり、会社の最新状況がわかるようになったりしており、育休中でも会社とのつながりを感じられるよう配慮するという企業姿勢がうかがえます。

自分自身の取説力を意識しよう

参加者がグループに分かれて自己紹介した後、外部講師で、ワンダライフLLP代表 ファザーリング・ジャパン理事の林田香織さんによる講義がスタート。林田さん自身、3人の子育てをしながらセミナー講師等の仕事を続けてきたとのことです。

講義では、不安や具体策を共有し、復職時期や復職後の働き方、両立のための体制を具体的に検討し準備することを目的に、「復職&両立に必要な3つの力」「両立を叶えるコミュニケーション」「復職準備項目の確認」がレクチャーされました。

1つ目の3つの力とは「取説力:整理&共有する力」「相補力:お互いを補い合う力」「連携力:リソースを活用する力」を意味し、特に筆者の興味を引いたのが「取説力」。

復職後、どういう働き方をしたいのか、希望をはっきり意思表示して自身のキャリアプランを具体的にし、家族や上司、職場の人たちがどうサポートしたらいいのか分かりやすい人になりましょう、という「自分自身の取説」だと説明します。

また、女性の半数以上が夫のキャリアを優先させるケースが多いため、どうしても育児中はママの負担が大きくなりがちなので、育休中から両立体制を夫婦で構築することが重要。家族がお互いに「主担当」の意識を持って家事の負担を共有する「相補力」、同居家族以外に頼れる人がいるかどうかの「連携力」が必要となると言います。

働く人のハッピーが会社のハッピーに

講義テーマの2つめ「両立を叶えるコミュニケーション」については、職場でのコミュニケーションについて説明します。

「自分はこうして働きたいという希望を整理しておくのが大事。"たられば"でもいいので、自分が大切にしたい優先順位を決めた上で、職場の人たちに現状はここまでできる、本当はここまでやりたい、ときちんと伝えていきましょう」(林田さん)

3つめの「復職準備項目の確認」については、保育園の準備や病時対応、家事サポートなどについてのチェックシートを活用して、育休中に必ず家族で準備確認してください、とアドバイスがありました。

そして、林田さんは最後にこのような言葉で講義を締めくくりました。

「両立できているとは、自分にとってどういう状態なのか。能力を発揮できて、意義を感じ、周囲の人と関わりながら一緒に活動している状態が大事なので、周りの人の協力を仰ぎながら、環境を自分でコントロールできるようにしていってください。皆さんのハッピーが会社のハッピーにつながっている。いまは、そんな時代です」

男性の育休取得が今後の課題

セミナー終了後、参加者からお話を伺いました。

オリックスに新卒で入社後、昨年4月から産休・育休中の赤羽美咲さんは、「社内にワーキングマザーが多く、心強く感じていました。ただ、育休中は社会や会社との接点が一時的に希薄になるので、復職後にキャッチアップしていけるのか不安を感じています」とのこと。

いまは、社内の流れに取り残されないように、育児の合間に新聞を毎日読むよう意識しているそうです。

「育休を取得する当事者になって特に感じたのは、職場の理解やサポートのありがたさです。妊娠中、体調がすぐれないときや産休前の業務引き継ぎの際に上司・同僚にサポートしてもらいました。周りの理解があってこそ育休制度が利用しやすくなるのだと感じました」

また、現在育休中でセミナーに参加した30代男性社員は「今年から育児・介護休業法が改正となり興味を持ちました。妻が早期の職場復帰を希望していたので妊娠出産で負担をかけた分、自分にできることはないかと育休取得を決めました」と言います。

女性の場合は、育休に関して周りの情報を参考にしながら検討できるものの男性の育休取得に関してはまだ事例が少なく、今後の課題だと感じているそうです。

「いままで育休というのは子どもの面倒をみることしかイメージできていませんでしたが、保育園選びや予防接種、今後のライフプランの検討などやることがたくさんあることに気づかされました。出産や育児が身近になり夫婦ともに協力しあう家庭をつくるためにも育休制度は大変重要だと思います」

女性の両立支援に力を入れているオリックスグループでも、まだ男性の育休取得率は高くないとのこと。

ただ、今後は増えていくのではと期待できるほど、グループ全体で積極的に取り組んでいこうとする姿勢や職場でのサポート意識が醸成されていることが充分に伝わってきました。女性社員だけではなく男性社員にとっても子育てと仕事を両立できる環境が整っているか。

働く誰もが中長期的なキャリアを描けるか。その実現が企業価値の向上につながっているのは確かなようです。

もちろん、子どもができたら仕事をやめるという選択肢もあります。結婚や子育てなどのライフイベント、仕事でのキャリアアップに対して自分はどうしていきたいのか。

本記事が、就活生一人ひとりにとって考えるきっかけになれば幸いです。