マイナビミドルシニアは9月13日、『主婦からのライフシフト講座(入門編)』をオンラインで開催した。”人生100年時代”と言われる現代において、女性はどのような生き方を選択し、どのようにライフデザインを描いていけば良いのだろうか。

本講座では、専業主婦が一念発起して起業した事例などを通じて、ネクストステージに進む中高年女性のあるべき姿を紹介した。

  • マイナビミドルシニアが『主婦からのライフシフト講座(入門編)』を開催

■ライフシフトとは

本講座は、中高年(40代/50代/60代)向けの就職サイトの運営、ミドルシニア層の転職支援などを行っているマイナビミドルシニアによるコミュニティ「女性活躍アンバサダー Well-Pass(ウェルパス)」が実施したもの。

登壇したライフシフト・ジャパン取締役CMOの河野純子氏は、その冒頭で「人生100年時代は確実にやってきます。人生が長くなると、人生設計も変えなくてはいけません」と切り出す。そして調査データを紹介しながら「たとえば2007年生まれの子どもの半数は107歳に到達することが分かっています。人の寿命は10年単位で2~3歳は伸びており、ここから逆算すると1997年生まれの人の半数は105歳まで、1987年生まれの人の半数は103歳まで、1977年生まれの人の半数は100歳まで到達します」と解説する。

  • ライフシフト・ジャパン取締役CMOの河野純子氏

最新のデータによれば、日本人女性の平均寿命は87.5歳、男性では81.4歳。平均寿命は今後、さらに伸びていくことが予想されるため「だから私たち女性は、この先の時代、豊かな生き方を開発していくフロンティアになっていくわけです」と話す。

これまでは「人生80年時代」に見合ったライフデザインがあった。しかしそれを人生100年に当てはめると、老後・余生が長すぎてしまう。そこで同氏は「ライフデザインを変えていきましょう」と呼びかける。

  • 人生100年時代のライフデザインとは?

河野氏によれば、いまグローバルでは”Live Longer, Work Longer”(長く生き、長く働く)ということが言われているそう。「85歳まで働ける、とも言われています。『そんなに長く働けない、働く自信もない』という声も聞こえてきそうですが、現代を生きる85歳と、私たちが到達したときの85歳は違う。健康寿命もどんどん伸びていますので、まず元気に85歳になれると考えてください」(河野氏)。

そして「本来、働くことは楽しいことです」とも説く。その理由は、人の役に立って感謝され、仲間ができ、お金ももらえるから。そこで「やりがいを感じられること、好きなこと、仕事を楽しむ方法を開発していきましょう。それによって人生の豊かさにつながる時代がやってきます」と説明する。

このあとも、人生100年時代のライフデザインをひも解くキーワードを紹介。たとえばこの先、人々の仕事の半数がAIに置き換わり、価値観も変わっていくことが予測されている。そんな時代を自分らしく生き抜くためには、変化に柔軟になること、自身が変わるために学び続けることが重要となる。そこで”Learning & Transitioning”(学び続け、変わり続ける)を掲げる。

さらには、小さなことでも良いので自分の得意分野で仕事を立ち上げる、そんな自営業の働き方も勧めた。この”Self-Employment”(自分で自分を雇う)については「そんなにたくさんのお金を稼ぐ必要はありません。老後2,000万円問題が話題になりましたが、あれは年金だけでは世帯で月々5万円の赤字になる、という試算を元にしたもの。逆に、そのくらいの収入があれば豊かな老後を過ごせることを意味しています」。

そこで現在、パート、正社員として働いている人に向けて、将来のために役に立ちそうな仕事をいまのうちに見定め、働きながらスキルを身に着けていけたら、きっと老後に素敵な生き方ができると説明する。「長寿は天から与えられたギフトです。人生の主人公として、たくさんの人に『100年ライフ』を楽しんでほしいと思います」(河野氏)。

■主婦はいかに起業したか?

ここで2人の主婦の起業事例について紹介した。

36歳まで専業主婦をやっていたという渡邊智子さん。レストランのパート、介護ヘルパーの仕事をいずれも病気のため退職したが、42歳から近所のカフェで始めたパートが転機となり、やがて焙煎技術を学ぶ講座に通い始め、51歳で自宅に念願の焙煎工房をオープンさせた。頑張る渡邊さんを見て、夫、子どもも笑顔で手伝い始めたという。渡邊さんは「人を変えることは難しいけれど、自分が変わることで家族も変われるんだと実感した」と話している。

  • 焙煎工房をオープンさせた渡邊智子さん

また34歳でうつ病になり、51歳でがんを発症した佐野恵理さん。夫、子どものために一生懸命やってきたけれど、死ぬときは1人と覚悟したそう。「だとしたら後悔したくない」と、手術から3カ月後にそれまで憧れていたチュニジアに出かけた。帰国の折にガイドからもらった綺麗なチュニジアキリムを手にして「これを日本に紹介したい」と決意、ガイドブックに載っていたチュニジア雑貨店を訪ねて思いを伝えたところ経営者と意気投合して、パートを辞めるとすぐにチュニジアに渡って生地を仕入れる仕事に没頭。PCを購入してネットショップを立ち上げるなどし、現在はチュニジアにおける女性支援や産業支援も手がけているという。まったく違う人にライフシフトした佐野さんを家族も誇りに思い、応援しているとのことだ。

  • チュニジアキリムの輸入業を起業した佐野恵理さん

ここで河野氏は、2人の共通点をまとめる。それによれば、出発点で【1】心が騒ぎ(このままじゃいけない)、【2】旅に出て(何か始めてみる、行動を起こす)、【3】自分と出会い(本当にやりたいことを発見)、【4】学び尽くし(どんどんインプットする)、【5】人生の主人公になった(これこそが自分の人生だと知る)。ライフシフトは必ず上記の5つのステージを通る、しかも何周もするケースもある、と河野氏。

  • 必ず通る5つのステージ

河野氏はここで、さらに細かくライフシフトの法則を解説する。師というべき人と出会う、目的地を同じくする旅の仲間と交わる、人、本、病気などがネクストステージに案内する使者となる、といったステップがあるという。そして自分の価値軸に気づく大切さも説いた。

  • ライフシフトの第2法則

  • ライフシフトの第3法則

「私たちは、これまでの人生のなかで、知らず知らずのうちに変身資産(変わるチカラ)を蓄積しています」と河野氏。これは変化の時代において重要さを増す。しかし、ここで「変化を前に進める心のアクセル」と「変化を止めてしまう心のブレーキ」があることにも気づいておく必要がある。

  • 変身資産を活かすためには?

変化を前に進める心のアクセルとして10項目を紹介。たとえば、自分のなかに芽生えた内なる違和感を前に進む力に変える「違和感センサー」、これまでの人生とは違う新しい道に進むときの「旅立つ勇気」、日記をつけたりひとり旅をしたりして自分を見つめる内省を習慣づける「自己との対話」など。少なくとも3つくらい身についていると良い、と説明する。

  • 変化を前に進める心のアクセル

逆に心のブレーキとして、もう歳だからと「年齢バイアス」をかけていないか、失いたくない手放したくないと「ノットリリース」していないか、うまくいかなかったらどうしようと「失敗する恐怖」におびえていないか、といったチェック項目を紹介。

  • 変化を止めてしまう心のブレーキ

紙を用意して、これからの人生で活かしたいアクセル、手放したいブレーキを書き込むことで頭と心を整理していくと良い、と河野氏。

  • 「変わるチカラ」をチェックする

  • 「変わるチカラ」を育てるおすすめアクション

ちなみに河野氏によるチェックシートは、以下の通り。「もう50歳ではなく、まだ50歳と考えたときに会社を離れる勇気と、未来を手に入れる期待感が沸いてきました。ここまで色んな修羅場を超えてきたので自己への信頼もあります。もめごとは嫌いなので、そういう意味で対立からの逃避があり。サービス精神が旺盛なので、過度な自己犠牲も自覚しています」(河野氏)。

  • 河野氏による自己分析。これを今後のライフシフトに活かしていく

最後に、ライフシフト・ジャパンでは多様な「旅の仲間」とともにワクワクする100年ライフを描く3日間のワークショップ「LIFE SHIFT JOURNEY」を開催中であると宣伝。現在は10月期、11月期の参加者を募集していると紹介して『主婦からのライフシフト講座(入門編)』を締めくくった。