横須賀市・NTT東日本・NTTe-Sportsによって作られた複合型ICT教育施設「スカピア」は、eスポーツやプログラミングといった習いごともできる新しい形の教育施設だ。NTTグループがスカピアをスタートさせた狙い、そしてその魅力とは?
学童保育と習いごとを同時に利用できるスカピア
神奈川県横須賀市とNTT東日本、NTTe-Sportsは2022年4月1日、横須賀市内に「保育・学び・ワーク・コミュニティ」をテーマとした複合型ICT教育施設「スカピア」をオープン。学童保育を行う「Nキッズアカデミー 横須賀校」を中心に、子どもから大人まで学べるレンタルスペースの提供や、横須賀地域の住民が交流できるコミュニティイベントの開催などの活動を行っている。
学童コースの特長は、子どもを安心して預けられるバックアップ体制に力を入れていること。防犯カメラなどの防犯設備を完備し、子どもの入退室時間はメールで通知。おやつや食事付きで最大21時まで、子どもをサポートする。さらに、学校から学童保育、学童保育から提携施設や自宅までの「お迎えお送り付添いサービス」などもオプションで提供されている。
また学童だけでなく、さまざまな習いごとも行える。書道・ピアノ・そろばん・英語といった定番のものから、eスポーツやプログラミングといった最新のICT教育まで、全9種類から受講可能。「安心して預けられる学童を利用しつつ、習いごともさせたい」、「普段は公設学童を利用しつつ、週に何日か習いごとをさせたい」というご家庭にピッタリだろう。
気になる料金は、週1~2回利用が2万円、週5~6回利用が2万5000円で、週の利用回数によって金額は異なるが、2万円台となっている。習いごとやお迎えお送り付添いサービスは別途料金が必要となる。
レンタルスペースは大きくICTルームと多目的ルーム、コワークルームの3つ。そのなかでも充実した設備を誇るのがICTルームだ。eスポーツ用のゲーミングPC8台、75インチ壁面モニター、Wi-Fiを完備しており、会議や研修だけでなく、ゲームやプログラミングイベントにも活用できる。
エムボットを使ったロボットプログラミング体験会
8月8日、そんなスカピアが夏休みスペシャル企画として「はじめての自由研究! embot(エムボット)でロボットプラグラムを体験しよう!」を開催した。小学1~3年生を対象としており、参加料は9,350円。作ったロボットは持ち帰ることができる。今回は8人のお子さんとその親御さんが参加。思い思いにエムボットを組み立てていた。
エムボットは、ダンボールや電子工作キット、身の回りのものを使ってロボットを作り、アプリで動きをプログラミングできるサービス。講師を担当したのは、エムボットの開発者であり、同サービスを展開するe-Craftの代表取締役CEOでもある額田一利氏だ。
額田氏は、教材やタブレットを配りつつ、「工作が苦手、プログラミングが難しそう。そんな心配はいらないよ。基本のロボットを組み立ててアプリでプログラミングをしてみれば、君の頭にはいろいろなひらめきが溢れてくるはず。そう、エムボットを作るための一番大切なパーツは君の自由なひらめきなんだ」と、子どもたちに自由な発想を促した。
子どもたちは、スタッフからアドバイスを受けつつ、ときには親と相談しながらロボットを作り進め、タブレットでロボットを動かすプログラミングにも挑戦。時間ギリギリまでワイワイと大盛り上がりでロボット作りを楽しんでいた。
NTTグループでほぼ初となる複合型ICT教育施設が横須賀市にできた理由
学童保育のみならず、スタディ・ワーク・コミュニティまでカバーしたスカピア。その経緯を紐解くと、2020年10月に横須賀市、NTT東日本、NTTe-Sportsで、ICTおよび新たなスポーツを活用した「地域活性化に向けた3者連携協定」を結んだことがきっかけだったという。
当初はeスポーツ施設として運営される予定だったスカピアが、教育を中心としたのはなぜだろうか。施設の運営を担当するテルウェル東日本の田中均氏は次のように説明する。
「近隣に別のeスポーツ施設ができまして、市場の取り合いを避けるという観点から、教育施設へとシフトしました。教育に柱を置きながらも、ICTスポットとして地域の活性化に繋げていきたいと思います」(テルウェル東日本 田中氏)
だがコロナ禍ということもあり、立ち上げには非常に苦労したとNTT東日本の平下陽子氏は話す。
「スカピアの建築やデザインは、横須賀の地元業者にお願いしました。2月というギリギリのタイミングで内装工事が始まりましたが、コロナ禍の影響で部材はなかなか調達できず、さらに工事関係者が新型コロナウイルスに感染してしまうというトラブルもありました。それでも4月オープンに間に合わせていただき、大変助かりました」(NTT東日本 平下氏)
こうして「Nキッズアカデミー 横須賀校」が開校される。現在、学童施設利用者数は20名強で、このほか夏休み期間だけ利用している方、習いごとだけをしている子どももいるそうだ。
「我々は、スカピアを子どもたちにとって自宅、親類の家に次ぐ第3の家のような居場所にしたいと思っています。内装も、子どもたちが安心して過ごせることを目指して整えました。親御さんからも『安心して預けられるだけでなく、教育もできる』と好意的な反応をいただいています」(テルウェル東日本 田中氏)。
また、eスポーツ用のゲーミングPCを活用し、高校生の部活動の支援も行っているという。その背景には、eスポーツが急速に普及している一方で、学校ではあまりハイスペックなPCを導入できないという事情もある。eスポーツという新しい分野の幅を広げ、子どもたちの選択肢を広げてくれることを期待したい。
「スカピアは、NTTグループでほぼ初となる複合型ICT教育施設であり、Nキッズアカデミー横須賀校は質の高い保育と居場所を提供できる学童施設です。NTTグループの持つICTのノウハウを活用した学びを提供できたらと思っています。今回のエムボット体験会もそのひとつで、会員様以外もご参加いただけるようにしました。夏休みの自由研究として楽しんでもらえたのではないかと期待しています。この他、eスポーツの体験会を開催したり、2023年度に向けた学童保育受け入れの説明会も10月1日、22日(ともに10:00~11:00)に開催していきますので、ご興味がありましたらぜひご参加いただきたいと思います」(NTT東日本 平下氏)
小学校におけるプログラミング教育が2020年度から必修化されたが、まだまだ学校も教師も教え方を模索しているというのが実際のところだろう。そんな教育機関において、NTTグループが展開するICT教育は指針のひとつにもなるのではないだろうか。
「現在は子どもたちがメインですが、レンタルスペースは企業の会議や街の寄り合いにも利用されています。今後は社会人が学び直せるきっかけ作りや、高齢者の健康増進の取り組みなども行っていきたいと考えています。我々は、多様な人材を育てる・活かすという観点から、横須賀市に貢献していきたいと思います」(NTT東日本 平下氏)
「とにかく、お子さんにはゆったり、のびのびと好きなことをして過ごしていただき、その中で自分の才能を伸ばしてもらいたいと思っています。スカピアは、安心してお預けいただける学童施設であると同時に、いろいろな習いごと、さまざまなアクティビティが行える施設です。多くの方に『こんなところが欲しかった』と喜んでいただける施設にしていきたいですね」(テルウェル東日本 田中氏)