教育・評価が難しい「有人チャット」

NTT ネクシアは2022年6月、コンタクトセンター向けの顧客応対品質評価・分析を行う「応対診断サービス」に、「有人チャット」の応対品質評価メニューを追加した。

近年のコンタクトセンターでは顧客コミュニケーション手段のデジタル化が進み、従来型のメールと電話を中心とした応対からノンボイス化も加速している。FAQの充実やチャットボットの活用に加えて、採用が急増しているのが有人チャットだ。

ただし、有人チャットは歴史の浅い手法だけに、その教育手法や評価軸などが定まっていないと感じる企業も多く、専門的なノウハウを持つ外部評価を必要とする声が高まっていたという。

「今まではメールと電話の応対診断をしてきましたが、品質管理の手法が確立できていない有人チャットに関する診断を求めるお問い合わせが増えたことで、有人チャットに関するサービスの開発に着手しました」と語るのは、NTTネクシア センター企画調整部 センター企画部門 品質管理担当の石井令子氏だ。

  • NTTネクシア センター企画調整部 センター企画部門 品質管理担当の石井令子氏

石井氏によると、チャットボットと違って人間が対応する有人チャットには、メールや電話の応対と同じくフォローが必要だという。NTTネクシアは自社コンタクトセンターの品質改善にも取り組んできたことから、これまでの応対診断のノウハウに有人チャットの品質改善ノウハウを加えたサービスが提供できるのではないかと考えたとのことだ。

有人チャットは電話・メールによる対応と求められるものが違う

「有人チャットを導入した企業からよく聞く悩みは、『窓口は作ったものの個人のスキル頼りになってしまっている』、『今の状態でいいのか』、『どうやって担当者を指導すればよいのか』といったものです」と、語るのはNTTネクシア センター企画調整部 センター企画部門 品質管理担当の水森敬子氏だ。

  • NTTネクシア センター企画調整部 センター企画部門 品質管理担当の水森敬子氏

チャットは文字によるコミュニケーションではあるが、小さな画面で短文でやり取りする。そのため、長文をやりとりするメールとは気をつけるべき部分が違うそうだ。加えて、リアルタイム性という意味では電話に近いが、耳で聞いて理解しやすい伝え方と、チャット用の小さな画面を見て理解しやすい伝え方は異なる。

「メールや電話と違うところ、感覚の部分をどう評価するか、評価軸の策定には苦労しました。有人チャットにおけるやりとりの印象をどう評価するかが苦労のポイントでしたね。文字入力の速度が遅いとお客様にネガティブなイメージを与えてしまいますし、有人チャットの満足度があるのかを見極める際は苦労しました」と、水森氏は従来型のコミュニケーションとの差異と、有人チャットによる応対の診断サービス開発の苦労を語った。

長い文章はわかりづらいが、端的すぎたらぶっきらぼうにも見える。リアルタイムなやりとりであるために、待ち時間に対する感覚も違う。メールや電話による対応について十分なノウハウを持ったオペレーターでも、有人チャットにおいて顧客満足度の高い応対ができるとは限らないわけだ。しかし、有人チャットの需要は伸びており、対応が迫られているという。

「NTTネクシアの顧客対応でも、2020年度と2021年度で問い合わせが約7倍増えています。電話とは違い、有人チャットはオペレーター1人で複数のお客様対応をする必要があります。顧客接点が増える分、どのお客様にも同じサービスを提供するために応対診断サービスの利用が必要だと感じますね」と、NTTネクシア 企画総務部 経営企画部門 広報担当の瀧ヶ﨑康輔氏は実感を語っていた。

自社事例と応対評価ノウハウを組み合わせて応対レベルを数値化

有人チャットの応対診断サービスでは、そうした顧客の感じるもの、求めるものを細分化し、数値化する。

「当社で有人チャットの品質を改善するにあたり、指針がない中で、悩みながらもFAQやツールを作ったりしながらチャットの品質を見てきました。そうした経験と、電話やメールにおける応対診断のノウハウから、有人チャットにお客様が求めるものを細分化し、項目として整理した上で重要度の重み付けをすることにより、数値化を可能にしました」と水森氏。

項目ごとに影響度をはかり、大項目の中に小項目を作る形で整理。さらに、実際に評価を行う際は業界ごと、企業ごとに重視すべきポイントについてディスカッションしながら決める部分もあるという。

「共通項目以外に、企業として大切にしていること、診断をする目的などのすり合わせを行い、重み付けや基準の調整も行います」と、石井氏は話す。

「従来のメールと電話の診断では、さまざまな業界に属する多くの企業を対象にしてきました。コンタクトセンターといっても、保険会社や通販サイトなど企業によって求めるものやカラーはさまざまです。同様に、有人チャットの評価においてもお客様と調整しながら実施していきます」と、水森氏も細やかな対応を強調していた。