定年、老後が迫る50代。「この先の暮らしにかかるお金が不安…ならば投資と思うけれどリスクがこわい…」。そんな方々も多くいると思います。

  • 50代からの「所得」のつくり方。老後資金を増やす4つの方法

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所得を増やすには「『可処分所得』に目を向けてほしい」と話すのは、ファイナンシャル・プランナーとして、これまで5000名以上のクライアントに運用指南を行ってきた杉原隆さん。杉原氏が50代でもまだ間に合う、” 老後資金を増やす方法”について解説します。

■お金の作法

人を称して「人柄が良いから」と口にしたことはありませんか。お金にも「金柄」があります。人柄と金柄。「人柄×金柄=幸せな人生」になる確率が高まります。
お金の作法には3つあります。貯める、増やす、使う。貯めても増やせない、増やしても使えない、往々にして過去の延長線上でお金と向き合っている方々です。

預金利率6%の時代は日本では戻ってこないでしょう。消費税がなくなることもほぼありません。一方で所得税や社会保険料の軽減、期待はすれど実現の可能性は低いものです。それでも少しの知恵と工夫と実践力で、まだまだ打つ手はあります。

■まずは貯める、そして増やす

お金も身の回りの整理整頓と同じです。「お金の置き場所」を決めてあげることが「無理・無駄」を最小限にする秘訣です。50歳前後は人生のライフイベントが集中する時期でもあります。

例えばお子さんの教育資金、ご両親の介護費用援助、そしてご自身の10年以内に直面するだろう役職定年への準備開始等です。独身の方であれば定年後、ご自身の生活資金や医療費、介護費用等も心配の種でしょう。それぞれ必要なお金の置き場所をちゃんと分けていますか。置きっぱなしになっていて「お金に働いてもらうこと」を忘れていませんか。

「貯める」ことを給与所得に依存してないでしょうか。貯めることの目的は「いつか使う」ためだと思います。ここでキーポイントです。「所得=使えるお金」ではないということ、お金が動くときは通常「税金」というコストが好むと好まざるとついてきます。

大切なのは「使えるお金=可処分所得(収入から、税金や社会保険料などを除いた所得。手取り収入)」を如何に増やしていくかということです。 「給与所得に依存しない可処分所得の貯め方」、きっとあなたの掌にもあるはずです。

次は「増やす」こと。黄金律は「複利の効果」を最大限活用することです。一定の金額が溜まったときの資産運用は株式、投資信託、不動産投資、外貨預金等ありますが、好みと相性で選択するのが良いでしょう。

留意しておきたいのは「増やした後、手元にどれだけ使えるお金が残るか」です。繰り返しになりますが、お金が動く時についてくるものがありましたよね、そう「税金」です。金融商品には金融所得税、不動産の売却時には譲渡税等、払うものはしっかり払い、出口で必ず待っていてくれる「税金」と上手に付き合うことを忘れないでください。

■使い方に出る「お金の品格」

お金は使ってこそ価値があるものです。天国へ持っていくことはできません。「その時」が来れば、配偶者やお子さんにお金(他の資産を含めて)を渡して旅立ちます。お金が動くのでもれなく「税金」というコストが待っています。負担するのはあなたではなく、最愛のご家族です。

全てを使いきり資産ゼロで「行ってきます!」というのは至難の業です。そこで多くの人が「生前贈与」で、「死後相続」で負う家族のコスト削減を計画的に行っています。贈与も相続も「控除」というお土産を国は用意してくれています。

ご家族にとって、どちらの「控除」を利用した方が「手元に残るお金」が多くなるのかを、人生の中間地点で一度計算してみることをおすすめします。

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■「可処分所得」に目を向ける

50歳と言えば人生100年時代の折り返し地点。「所得」のつくり方にもひと工夫したいものです。一般的には「労働」の対価として所得を得るということですが、他にも所得を得る方法はあります。

大切なのは「可処分所得」、税金や社会保険料等を差し引いた後の「使えるお金」です。50歳からは、4つの所得を手にすることができないか、少し考えてみましょう。

1.労働所得
給与所得の良いところは申告手続きが簡易というもの。会社員の方の納税申告はほとんど勤務先の会社が行ってくれます。「退職金控除」があり、長年勤務すれば一定期間を開けて退職金税制を利用でき、「可処分所得」を膨らませることができます。終身雇用時代が過去のものとなり新しい働き方になっても、この制度を十分に利用したいものです。

一方で累進課税制度の中で、会社員の方が税率をコントロールする術がほとんどないというデメリットもあります。また、病気等で働けなくなった時、一気に所得が減少するという不安がつきまといます。これらのリスクを最小限にするために、以下3つの所得の引き出しを日頃から準備しておくことは、安心を得るためにも転ばぬ先の杖となるでしょう。

2.不労所得
株式運用や投資信託、賃貸不動産などで所得を得ている方も多くいます。「貯蓄から投資へ」という国が掲げる方針に沿った将来設計として、今後欠かせない所得の得方です。多種多様な不労所得があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

1) 賃貸不動産
ご自身だけでなく、ご両親が行っている場合もあるでしょう。最大のメリットは「資産圧縮効果」があるということ。詳細は割愛しますが、一定の資産を持つ方は一つの選択肢です。デメリットは、人口減少時代の日本で首都圏でさえ不動産の立地や築年数、設備等で「空き家リスク」を全面的に排除することは困難です。

また、入居者が近隣住民へ迷惑をかけてしまったり、賃料未払が発生したりということを想定内としなければなりません。また、物件売約時に得られる利益は「譲渡所得」の対象になります。

2)株式
短期間で大きな上昇を見込める株式は、魅力的ですが、難しいのは銘柄選び。株式保有の目的にもよりますが、「ビンゴ!」という訳にはなかなかなりません。また、売却時には「金融所得」となり20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%+住民税5%。以下同様)の源泉分離課税(申告課税との選択制)となります。

3)投資信託
株式で難しい銘柄選びを容易にしたのが、いわゆる投資信託です。ファンドという括りで株式の集合体をつくり、株価の上昇下降のリスクを分散し、より安定的な運用を目指すものです。ただ、株式同様に売却時には金融所得、配当の分配を受けた場合は配当所得となり、20.315%の源泉課税があります。

分かりやすく言えば、株式も投資信託も「所得税一律20.315%」と考えれば良いでしょう。

4)生命保険
国民の約80%が何らかの形で購入している生命保険。最大の目的は保障ですが、近年、生命保険を資産運用のひとつとして利用する方も増えてきました。株式や投資信託と異なる点は、生命保険で得た利益は金融所得にあたらず、「一時所得」になるというものです。

例えば、解約時に得る解約返戻金が、保険料支払い総額より多くなった時に得る利益は一時所得となります。毎年50万円の控除があり、利益の半分にしか課税されないという優遇された所得となります。

3.相続(生前贈与)
一次相続と二次相続※を同時に考えることが大切です。この世に生まれてくる順番ははっきりしていますが、天国へ逝く順番は誰にも分かりません。順番が異なることで家族が負うコスト、即ち相続税の金額も大きく異なってきます。そこで、有効な対策として使えるのが「生前贈与」です。

見方を変えれば、受け取る側は「所得」のひとつですね。相続で受け取る際に一定の控除がありますが、計画的に受取る生前贈与にメリットの軍配があがります。

生前贈与には2つの種類がり、一般的に利用されている「暦年贈与」は、毎年110万円間では非課税で、110万円超の贈与に対して累進課税となります。例えば、父から子に310万円を贈与した場合、20万円を納税し、290万円が「可処分所得」となります。

(310-110)X10%=20

累進課税なので最高税率は55%と高率なってしまうので、「時間をかけて少しずつ」が鉄則かもしれません。

もう一つの方法が「相続時精算課税」という贈与方法です。暦年贈与と異なり「2500万円」まで非課税が大きな特徴です。加えて2500万円超の部分は「一律20%」課税というのが最大のメリットです。

相続に付きまとう「争族」を避けたいと、一定の資産をお持ちでの方は生前贈与、特に「相続時精算課税」を利用して、一気に資産を圧縮していらっしゃいます。

相続や生前贈与で得る「所得」は一定の税金を収めるという前提ですが、国が用意してくれている「非課税」のルールを賢く利用することも悪くないと思います。

4.病気・介護の保険
60歳を過ぎると急に上昇する「病気罹患カーブ」と、75歳を過ぎると同様に上昇する「要介護者カーブ」です。50歳の今、まだ時間があるその時に預貯金で備えることも大切なことです。

ただ、50歳という年齢はライフステージの中で支出も重なる時期です。住宅ローンの返済、お子様の教育資金、親の介護費用援助等で、ご自身の将来に対する準備資金としての「可処分所得」はそう多くないと感じていると思います。

病気で入院や手術、一定の介護状態になった際に受取る給付金、保険金は「全額非課税」ということはあまり知られていません(所得税基本通達9-21)。厳しい状況の中で何とか蓄えた預貯金を治療費に使っていけば、いずれ残高が底をつく時が訪れます。

一方、元気なうちに購入し、預貯金同様に毎月(又は毎年)一定金額の保険料を払っていけば、残高の心配をすることなく治療に専念でき、勤務状態により減少した「給与所得」の補填になることもあります。

当該保険購入直後で支払い保険料が少額の時でも、約定どおりの給付金や保険金を非課税で手にすることができます。また、「病気罹患カーブ」や「要介護者カーブ」へ突入する頃、ワインが経年熟成するが如く、味わいあるものになるはずです。

入院や手術給付金の受取制限はありますが、制限一杯受取る方は多くありません。分かりやすく言えば、「前払いのサブスク(定額)医療費」で、「一生涯」という長期で見れば、預貯金との比較検討に値するのではないでしょうか。

※一次相続と二次相続
相続税は、一般的には両親の死亡にともない生じる。父と母、それぞれが死亡した際、2度の相続のうち、1度目を「一次相続」、2度目を「二次相続」という。

文/杉原 隆