暢子役の黒島については「あれだけの出演量や台詞量で、暢子として生き続けなきゃいけないことは、はたから見ているととても大変なことに思えますが、黒島さんはどのシーンもちゃんと暢子として集中してその場にいらっしゃいます。本来ならヒロインに対して周りにいる僕たちがいろんな影響を与えられたらいいなと思いますが、実際に黒島さんと対峙すると、黒島さんからパワーをもらうことのほうが多かったりします。本当に素敵な女優さんだなと思う日々です」と心から賛辞を送る。
では、矢作にとって暢子はどういう存在だと受け止めているのだろうか。「どこか憧れがあったんじゃないかなと。矢作は好きな料理を一生懸命突き詰めて、フォンターナまで行きついたけど、暢子というイタリア料理をほとんど作ったことがないような人がいきなり店に入ってきて、しかもセンスと感覚だけで作ったものがとてもおいしいんです。矢作はこれまで料理を勉強してきたからこそ、その良さが分かるので、暢子の料理に対する天性の才能に嫉妬だけではなく憧れも感じていたんじゃないかなと」
7月29日放送の第80回では、久々に登場した矢作が派手なスーツ姿に身を包み、傍若無人なふるまいをして、視聴者に衝撃を与えた。
「再登場した矢作は人を裏切るようなことをするので、彼のいなかった時間を演出の方やプロデューサーとお話をし、想像を膨らませて後半に挑みました。通常のドラマだと、真ん中でガッツリいないということはなかなか経験できないので、そこを緻密に作りたくて。同じ人物なのに、前半と後半では違うというか、後半では矢作の成長や彼がいろんな経験をしてきたということを、お芝居で表現したいと思いました。それは演じていて楽しいですし、そういう感覚をほかの現場でもちゃんと使えるようにしたいなとも思いました」
また、矢作について「『なんだコイツ!』と思われるようなところもありますが、僕は演じていると、矢作をどんどん好きになっています。だから、ただ嫌なヤツではない感じで受け取ってもらえたらうれしいです」と矢作という役への愛着も語る井之脇。再び登場し、暢子が開く沖縄料理の店「ちむどんどん」で働くことになった矢作の今後にも注目だ。
1995年11月24日、神奈川県出身。子役としてドラマ『柳生十兵衛七番勝負 最後の闘い』(06)でデビューし、映画やドラマ、CMなどで幅広く活躍。NHK連続テレビ小説の出演は『ごちそうさん』(13)、『ひよっこ』(17)に続いて『ちむどんどん』(22)が3作目。近年の出演作はドラマ『義母と娘のブルース』シリーズ、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(20)、『俺の家の話』(21)、『失恋めし』(22)、映画『サイレント・トーキョー』(20)、『砕け散るところを見せてあげる』(21)、『ミュジコフィリア』(21)、『猫は逃げた』(22)など。『犬も食わねどチャーリーは笑う』が9月23日公開。
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