連続テレビ小説は『ごちそうさん』(13)、『ひよっこ』(17)に続き、『ちむどんどん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか)で3度目の出演となった俳優の井之脇海。彼が演じるのは黒島結菜演じるヒロイン・比嘉暢子の元同僚で一癖ありの矢作知洋役だが、一度フェードアウトしたかと思いきや突然再登場し、とんでもない騒動を起こした。そんな矢作役に井之脇はどう向き合ったのか? また、今回の朝ドラ出演ならではの収穫についても話を聞いた。

  • 『ちむどんどん』矢作知洋役の井之脇海

『ちむどんどん』では、沖縄料理に夢をかける暢子ら比嘉家4兄妹の奮闘が描かれる。矢作は暢子が勤めるリストランテ「アッラ・フォンターナ」で働いていたが、突如、退職届を出して姿を消してしまう。その後、久しぶりにフォンターナを訪れ、オーナーの大城房子(原田美枝子)を呼び出すが会えず、その後、店からフォンターナの売上金や店の登記済権利証を盗み、騒動を巻き起こした。

料理人としての役作りのため、井之脇は事前に稽古をし、自宅で調理の練習に励んだ。「もともと料理はそんなにしてこなかったので、今回のお話をいただいた時に、練習しなきゃなと思いました。クランクイン前に、料理監修をされているオカズデザインさんのアトリエで1回、イタリア料理指導をされている松本晋亮さんの元で2回、料理の基礎を学び、教えてもらったことを家でひたすら反復しました」

なかでも特に繰り返し作っていたのは、カルパッチョだったという。「イタリア料理を作る練習で、柔らかい魚と一緒に、盛り合わせのラディッシュなどの固いものを切るカルパッチョがいいよと言われ、昨年末は毎日カルパッチョを作っていました。基本的にオリーブオイルと塩で作るのですが、自分でバルサミコ酢を入れてみたりとアレンジして楽しんでいました。料理を一生懸命練習することで、矢作に近づけている感覚もあり、面白かったです」

3作目となった朝ドラ出演については「今までで一番、出演するたびに反響をいただくなと。今回も放送された時、親戚から連絡をもらったり、離れて暮らしている祖母も『毎朝、観るのが楽しみだ』と言ってくれて、やはり多くの方が観てくれているんだなと思いました」と笑顔を見せる。

矢作については、既婚者ということが判明した時や、突如、いなくなってしまった時に、ネットがざわついたことも記憶に新しいが、そういう視聴者からの反響を彼はどう受け止めているのか。

「僕は自分が影響されるので、あまりエゴサーチなどはしないようにしていますが、家族がネットで矢作に対する反響を見つけると、いい情報だけは教えてくれます(笑)。例えば、『Twitterのトレンドで1位に入ったよ』と聞くと、注目してもらえているんだと感じますし、矢作がフォンターナを辞めた後で、“矢作ロス”みたいに言ってくださった方がいて、その時も『本当に!?』とうれしくなりました」

最初に脚本を読んだ時、井之脇は矢作について「思考回路がねじれている人」という印象を持ったそうだ。

「矢作は暢子に対して、敢えてきつい嫌な言い方をしてしまう人ですが、そこは彼の面白いところでもあるし、こと料理に関しては、すんなり言葉が出てきます。実際、暢子が作った料理について『うめえ!』と素直に感想を言うなど、純粋さもちゃんと持ち合わせている人だなと。そういう料理に対する姿勢と、人と向き合う時のちょっと気難しい感じの両方を上手くお芝居に出せたら、より魅力的な役になるんじゃないかと思いました」

さらに井之脇は、矢作が暢子に対してトゲのある態度を取る理由について「暢子に対する嫉妬があるし、あの時代ならではの(レストランでの)女性料理人に対する偏見などから、ああいう態度を取っていたのかなとも思います」と捉えた。

また、「クランクイン前までは、僕も矢作を意地悪に演じようと考えていたのですが、後半につながっていくなかで、ただの記号的な意地悪にはしたくないと思い、その場に流れる空気のなかでつい言葉が出てしまったというふうに見えたらいいなあと思いながら演じています」と細やかにアプローチをした。