世の中のSUVは「タフ」な感じを押し出すか、街でも映える「上質さ」を売りにするかのどちらかにステ振りをしがちだが、日産自動車の新型「エクストレイル」はその両方を狙った欲張りな1台だ。二兎を追うものの例えもあるが、どんな仕上がりなのだろうか。実車を確認してきた。

  • 日産の新型「エクストレイル」

    日産が7月25日に発売する新型「エクストレイル」

上級志向な顧客ニーズを取り込む

通算4代目となる新型エクストレイルでは、初代モデルからのDNAである「タフギア」を継承しつつ新たに「上質さ」を加えたと日産。パワートレインは進化した第2世代「e-POWER」(ハイブリッド)のみとなる。日産の追浜工場にあるテストコース「グランドライブ」で少し乗ってみたが、電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」の効き目が大きいのか、立派な体格に見合った力強い走りと、その姿からは想像ができないほど俊敏な身のこなしには驚いた。

  • 日産の新型「エクストレイル」
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  • 日産の新型「エクストレイル」
  • 上質さを兼ね備えた本格SUVを目指した新型「エクストレイル」。オンロード/オフロードを問わず快適に乗れるクルマに仕上がったと日産は自信を示す

日産によると、エクストレイルが属する「L/MクラスSUV市場」では、ここ10年で40代以上の顧客が増加しているとのこと。具体的な割合は2011年が66%、2020年が75%だ。同セグメントの購入価格帯も高額化しているそうで、今や350万円以上が過半数となった。「目の肥えた顧客が増えており、価格帯が向上したことで期待値も上がっている」というのが日産の分析だ。

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    左が購入者の年齢層。右が車両本体価格(購入価格帯)。10年前は300万円以下のクルマが6割くらいを占めていた

市場分析では、MクラスSUV市場でニーズは高いものの、顧客が相対的に満足できていない要素がわかってきた。それが上質さだ。SUV人気が高まりセダンやミニバンから乗り換える客が増えているが、乗り換え前と同様に乗り心地や質感を求める客をSUV(日産製に限らず)は満足させられていない。そこに伸びしろがあると日産は考えた。

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    MクラスSUVの顧客がどこに満足していて、どこに満足していないのかを示した図

「四輪駆動のイメージを変える」というのも新型エクストレイルのテーマだ。四駆は特定の客、あるいは特定の状況のためものだった、というのが日産の見立て。例えば備えのためだったり、趣味のためだったりしたわけだが、新型エクストレイルのe-4ORCEではそれらもカバーした上で、日常の乗り心地のよさや運転の楽しさ、ワクワク感といった価値も提供したいとする。

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    新型「エクストレイル」では四駆の新たな価値も提示したいと日産

新型エクストレイルの価格は2WDが319.88万円~429.88万円、4WDが347.93万円~449.9万円。「粗削りだがアウトドアが似合う」というこれまでのイメージを「上質さを兼ね備えた本格SUV」に変えられるのか、新型の売れ行きに注目したい。

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  • センターコンソールはコンソール部分を宙に浮かせたブリッジ構造。シートはブラックのファブリックに加え、しっとりとした肌触りが特徴の独自開発シート素材「テーラーフィット」、タン色のナッパレザー、防水シートの計4種類を用意