「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉の意味をご存知でしょうか。見聞きしたことがあっても、意味はよくわからないという方も少なくないはず。
この記事では、「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味や由来、例などについて解説します。また、「バタフライエフェクト」との違いについても説明しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
風が吹けば桶屋が儲かるの意味・由来は?
ここではまず「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味や由来、そしていくつかの解釈などについてくわしくご紹介します。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、「あることによって、意外なところに影響が出ること」や「あてにできなそうなことを期待するたとえ」を意味することわざです。
「風が吹くこと」と「桶屋が儲かること」に、直接的な因果関係はないように考えられますよね。しかし、多くのステップを踏むことで「風が吹くこと」が「桶屋が儲かること」に繋がるのです。
風が吹くと埃が立ちます。その埃が人の目に入ると失明してしまうケースがあります。失明した人は聴覚を使って三味線で生計を立てる人が多く、その三味線を作るためには猫の皮が必要です。すると猫が減少し、猫が天敵であるネズミが増えて桶をかじります。結果として桶の需要が高くなって桶屋が儲かるという流れになるのです。
「少し強引なのでは?」と思えるかもしれませんが、一見何の関係もないように思える事柄も複雑な因果関係で結ばれていたということは多々あります。
このように、「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉は複雑に連鎖した因果関係のことを示しています。
使われるようになった時代や由来
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉は、江戸時代頃から使われるようになったといわれています。上記で説明した風が吹くことから桶屋が儲かるまでの一連の流れについては、江戸時代の「世間学者気質」という草子や、1800年頃に出版された十返舎一九の「東海道中膝栗毛」などの中などにも見られます。
当時から複雑な因果関係については考察されており、時代が変わっても一見関係ないと思える事柄に複雑な関係が結ばれているというケースは意外と多いため、ことわざのひとつとして現在でも使われているのです。
現代社会においても、一見まったく関係ないと思える出来事がきっかけで株価が大きく変動するといったケースは少なくありません。そのため、ビジネスシーンなどでも広く使われる表現となっています。
風が吹けば桶屋が儲かるは皮肉表現としても使用される?
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉には意外な因果関係や、予想もしていなかったところに影響が出るといった意味があります。しかし、それ以外にも皮肉的な表現として使われるケースも少なくありません。
十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の中の逸話でも、「風が吹けば桶屋が儲かる」は本来のことわざとしての意味と逆の意味で使用されています。風が吹くと盲人が増え、盲人が三味線で生計を立てるために猫が減り、増えたネズミが桶をかじるため桶屋が儲かると考えた男が桶に投資して稼ごうとしたのに、儲けることができなかったという内容が描かれています。
この逸話のように「風が吹けば桶屋が儲かる」は、本来はほとんど因果関係がないにも関わらず無理にこじつけていること、または単なる思い込みを指す表現として使われることもあるのです。
その一方で、小さな可能性に期待するさまとして使用されることもあります。
このように、使い方によってニュアンスが変わってしまうケースもあるため、状況に合わせてしっかりと意味やニュアンスを見極めることが大切です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」と「バタフライエフェクト」との違いは? 似た言葉と使い分け
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉にはいくつかの類似表現があります。ここからはその違いや使い分けなどについてご紹介します。
バタフライエフェクトとの違い
「風が吹けば桶屋が儲かる」に似た表現として挙げられるのがバタフライエフェクトです。
バタフライエフェクトとは、気象学者の講演の『ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか』という演題が由来の言葉で、「些細な出来事が後の大きな出来事のきっかけとなる」という意味を持ちます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」は「あることによって、意外なところに影響を与える」を意味するのに対し、「バタフライエフェクト」は「些細な出来事が後の大きな出来事のきっかけになるかもしれない」といった予測するニュアンスで使われます。
因果関係との違い
因果関係とは、一方の原因によってもう一方に引き起こされた結果などを示す関係です。まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」における「風」と「桶屋」の関係は因果関係であるといえます。
通常、因果関係とはもっとわかりやすい関係性のことを表すので「風が吹けば桶屋が儲かる」はより複雑な因果関係を示す表現です。
相関関係との違い
因果関係と混同されてしまいがちな表現として相関関係が挙げられます。因果関係は片方からもう片方に対して影響が一方的に与えられる場合に使われる言葉です。それに対して相関関係とはお互いに影響を与え合い、どちらかが変化することによってもう一方にも変化や影響が起こる関係のことを指します。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉では「風」が「桶屋」に影響を与えていますが、「桶屋」は「風」に対して影響を与えていません。そのため、相関関係ではなく因果関係であるといえるでしょう。
「風が吹けば桶屋が儲かる」を使用できるシーンの具体例
最後に「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがどのようなシーンで使われるのかを具体例を挙げながらご紹介します。
「風が吹けば桶屋が儲かる」が本来のことわざの意味通り複雑な因果関係を表す場合として、以下のような出来事が使用シーンの例として挙げられます。
新型コロナウイルスの蔓延によって小麦粉やホットケーキミックスが売り切れた
新型コロナウイルスが蔓延したことで外出を自粛しなければならなくなり、家でお菓子作りなどを楽しむ人が増えた結果、一見ウイルスとは関係のない小麦粉やホットケーキミックスなどが品薄になったという例です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味を知って使いこなそう
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざは、「あることによって、意外なところに影響が出ること」や「あてにできなそうなことを期待するたとえ」を意味することわざです。一方で、「無理やりのこじつけ」「ただの思い込み」のように皮肉として使用されることもあります。
意味が複数あることを理解してシーンによって正しく解釈できるよう気を付けましょう。
今回ご紹介した意味や使い方を頭に入れて、ビジネスシーンでのコミュニケーションなどで活用してみてくださいね。