今年に入ってから、固定金利がじわじわと上昇しています。要因のひとつとして挙げられるのが、アメリカの長期金利の上昇です。深刻な物価上昇を防ぐための金融政策の引き締めのあおりを受けて、日本の長期金利も上昇したと考えられています。

固定金利が上昇する中、将来的に変動金利が上がってしまうことを心配し、どのような選択をしたらよいか迷っている方も多いと思います。本記事では、住宅ローンの金利タイプを振り返るとともに、変動金利を借りてもよい人・避けたほうがよい人の特徴や、変動金利で借りる場合のチェックポイントについて解説をしていきます。

  • 出典:フラット35「借入金利の推移(最低~最高)令和3年4月から」

住宅ローン金利とは?

住宅ローンは住宅の取得や改築のために金融機関から借りられるお金のことです。金融機関から借りるお金であるため、当然利子がかかります。その利子の割合を「金利」と言います。

金利には大きく分けて以下の3つのタイプがありますので、それぞれの特徴を確認していきましょう。

全期間固定型

変動型

固定期間選択型

固定期間選択型にした場合、固定期間が終了した後の変動金利は、通常の変動金利とは異なり5年ルールや125%ルールが適用されません。そのため金利の上昇に応じて頻繁に返済額が変わったり、見直し後の返済額が125%を超えたりする恐れがあります。

また固定期間選択型は、金利の固定期間が終了したあとの選択によって返済総額が変わります。全期間固定型とは異なり、借入時に返済総額や毎月の返済額は確定しないことが注意点です。

変動金利を組んで良い場合と避けたほうが良い場合とは? 「5年ルール」と「125%ルール」を解説

3つの金利タイプの中でも変動金利は、金利の低さから人気の金利タイプになっています。しかし、変動金利特有のルールを理解しておかないと、後々金利が上昇してしまった時に「こんなはずではなかった」という事態になってしまうので、しっかりとポイントを押さえておきましょう。

「5年ルール」とは

毎月の返済額が5年に1度のタイミングで見直されるというものです。半年ごとの金利見直しの度に返済額に影響があるわけではないため、頻繁に返済額が変わってしまうことを避けることができます。

「125%ルール」とは

返済額が前回の125%までしか上がらないというものです。このルールがあることによって金利上昇に伴って突然高額な支払いになることを避けることができます。

例えば毎月の返済額が10万円だった場合、どれだけ金利が上昇していても5年後の返済額の上限額は125%の12万5,000円となります。しかし実際は135%まで上昇しており、13万5,000円になっていた場合、残りの1万円は免除されるわけではなく、元金の返済よりも優先して利息に充当されることになります。

予定通り返済が進まずに返済期間満了時に元金が残っていると、最終返済月に一括請求される場合もありますので、金利が上昇しても計画通り返済ができるように余裕をもって貯蓄等をしておくことをお勧めします。

また、一般的に5年ルール、125%ルールを採用する金融機関が多いですが、採用をしていない銀行もありますので、必ずチェックをするようにしましょう。

そしてこれらの特徴を踏まえて、変動金利で組んでも良い例と避けたほうが良い例を挙げると、

〇変動金利を借りても良い例
・金利が上昇して毎月の返済金額が増加しても問題なく返済できる場合
・金利が上昇したらいつでも繰り上げ返済できる余裕資金がある場合
〇変動金利を避けたほうが良い例
・金利が上昇して毎月の返済金額が増加すると家計が回らない場合
・金利の変動をチェックするのが面倒な場合

変動金利を組む際のチェックポイント

住宅の担当者に、金利が上昇した場合のシミュレーションも作成してもらう

変動金利で組む場合は、あらかじめ上昇することを見込んで10年ごとに1%上昇していくシミュレーションや、最低限の基準として、固定金利の金利で計算しても月々無理なく支払える金額になっているかを確認することが重要です。

住宅の予算が借りられる額ではなく、返せる金額か

家庭ごとの希望するライフプランによって返せる金額は異なるため、銀行から融資してもらえる金額ではなく、返せる金額で予算を組むことが重要です。ただ、どうしても予算を下げられないという場合は、教育資金や老後資金が赤字にならないように、他の支出を削ることや資産運用を取り入れるといった、老後まで見据えた返済計画を立てた上で、住宅ローンを組みましょう。

35年間不確実だが、覚悟ができているか

総返済額が最初の時点で確定する全期間固定金利と比べ、変動金利は35年間ずっと半年ごとに変動し続けるため、総返済額が確定しません。不確定な中で生活をしていくことができるか、ご自身の性格や状況を考慮した上で、判断されることをお勧めします。

借り入れの額が5,000万以上の場合はミックスローンにすることも視野に入れる

固定金利と変動金利を2本組むというように、異なる金利タイプを組み合わせたものを「ミックスローン」と呼びます。ミックスローンを組めるかどうかは金融機関や商品によって変わりますが、全額を変動金利で借りるよりも金利上昇のリスクを抑えることが可能になります。

ミックスローンで組まない場合も、金利が大きく上昇した際に繰り上げ返済をできるように資金を確保しておきましょう。

まとめ

住宅は人生で一番大きな買い物と言われている中で、どの金利タイプもそれぞれ一長一短で正解がなく迷う方が多いと思います。今回一番伝えたかったことは、変動金利で組む場合はあらかじめ住宅ローン金利上昇時の対策を講じておくことが大切ということです。

また、変動金利で組んでも良い例や、避けたほうが良い例を紹介してきましたが、借入金額も重要なポイントです。住宅購入を検討している方や、購入済のお客様のライフプランを組んでみると、住宅の予算オーバーでお子様の進学時期や老後で赤字になってしまう人が多く、借りられる金額と実際に返せる金額は違うことを日々実感しています。

同じ年収でも家族構成やどこにお金をかけたいかなどの価値観によって、無理なく返せる金額は変わってくるので、本当に住宅を購入しても大丈夫か不安な方は、ライフプラン表を作成して将来のお金がどうなるのかを可視化してみましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。

執筆者:ブロードマインド株式会社 志村織帆(しむら・りほ)

1995年、神奈川県生まれ。教員免許を取得するも、人生において切り離せないお金の面で家庭をサポートしたいという思いから、ファイナンシャルプランナーの道を選択しブロードマインド株式会社へ入社。「家計収支改善」「節約術」「年金」を得意分野とし、年間約300世帯の個別面談やマネーセミナーの講師を経験。2022年4月から広報へ異動し活動中。