■食事シーンのこだわり「ギャル曽根さんのスタイルを継承」
――同作の見どころの1つに食事シーンがあります。普段のお芝居とは違った難しさがあると思いますが、いかがですか?
私、食べることが、大好きなんです。それはお芝居以外でタレントとして食事のレポートをした経験が生きているのかなと思います。あくまでも食事シーンの主役は私ではなく料理。いかに料理がおいしく見えるかを考えて、自分でセッティングしています。あと何回撮るのかを確認して、その分量を用意して、どのタイミングで本番なのか、もう少しソースがあった方がよりおいしさが伝わるのかななど、こだわっています。
あと、こだわりとしては一口をなるべく大きくというのが私のモットーで、これはギャル曽根さんのスタイルを継承しています(笑)。たまにスタッフさんからは「ちょっとその一口は大きすぎるんじゃない?」と心配されることもありますが、ちゃんと計算しているので全然いけちゃいます。料理を見たリアクションもそのまま表現したいと思っているので、撮影まではできるだけ見ないようにしています。なので、あそこのシーンはドキュメンタリー要素もあります。そういう私のスタイルに合わせて、スタッフの皆さんも照明をその場で当ててくださったり、角度を調整してくださったり、さすがだなと思うと同時にこのチームじゃないと撮れないなと毎シーン思わされるすごく好きなシーンです。
――確かにとてもおいしそうに食べる姿が印象的ですが、そういう制作秘話があったんですね。そのほか撮影で印象に残っていることはありますか?
私は割と素直にストレートに台本を読むタイプなんですが、平岡さんは様々な角度から台本を読み解くタイプなんです。特に妄想シーンには力を入れていて、あるとき平岡さんから「このシーンさ、ずぶ濡れで入ってきたいんだよね」と言われて(笑)。私も「いやいや台本に書いてないし、どうしてずぶ濡れなの!?」とか話していたら、スタッフさんも慌てて「次のシーンもあるので、ずぶ濡れはダメです!」と止めていたり(笑)。シーズン1のときも妄想シーンでゾンビが蔓延る世界でコロと八角さんが立ち向かうというシーンがあって、そこで平岡さんは「俺、ゾンビに嚙まれている設定で、徐々に感染していく演技するから」と、本編の大事なシーンのときもずっとゾンビの練習をしていて(笑)。今回もその熱量は変わっていなかったです。
■コロは「自分の素を有効に活用できた役」
――前作に引き続き、今作でもコロは、ふとしたときに妄想の世界に入り込んでしまいますが、本仮屋さんがつい没頭してしまうことはありますか?
私もコロと似ているところがあって、妄想じゃないですが、特に歩いているときはマイワールドに入り込んでしまうんです。だから人に声かけられると、びっくりして声を上げてしまって(笑)。リアクションが大きいので相手も驚かせてしまう……。だからコロとリンクしやすいのかもしれません。コメディなので、動きやリアクションが大きいことがアクセントになりますし、妄想に入り込む気持ちもわかるし、自分の素を有効に活用できている役でした。
――今作では度々「自分で選択できる」というキーワードが登場します。幼少期から芸能活動をされて、女優という道を選択した本仮屋さんですが、自身の選択を振り返ってみて、いかがですか?
もともと、安室奈美恵さんに憧れて歌手になるのが夢でした。でも向いていないと言われ、女優の道に。多分、私の人生の中でいちばん大きな選択はここでした。最初に思い描いていた夢から変更したけど、女優を目指してよかった。去年、カラオケ番組にゲストで出演させていただいたときに、めちゃくちゃ歌が上手い人たちが、大勢の前で採点されていて、私にはとても出来ないと思いました(笑)。
あと、ありきたりかもしれませんが、色んな人の人生を体験できるのは、贅沢ですよね。本来であれば自分の人生だけしか体験できないのに、いろんなパターンの人生を経験できるし、そこにたくさんの家族もいる。そしてキャスト、スタッフの皆さんと作品という濃密な時間を作り上げることができるのは、女優ならではだと思います。児童劇団に応募した昔の自分、グッジョブです(笑)。
■夢の歌手活動は「執念」
――昨年からは、夢だった歌手としても活動されています。
親からは「執念だね」と言われました(笑)。25年越しくらいの夢なので確かに執念ですねよね。でもこれも今まで女優をやってきたから、繋がった縁なので、本当にやってきて良かったなと改めて思いました。
――それでは最後に。今作で妄想が活力になっているコロですが、本仮屋さんの女優としての活力は何でしょうか?
もちろん全部のシーンでは上手くいかないんですが、奇跡みたいに全てが美しく表現されるシーンがあるんです。それは共演者の方とのケミストリーやスタッフの方が作って下さった環境含め、役を演じているという意識がどこにもないかのような一体感と全員が手ごたえを感じている高揚感など様々な条件が重なって起こる。私はその瞬間を目指して、やっています。それが舞台だったら生のお客さんもその一部として体感できるし、映像だったら時間を超えて、人に届けることができる。
私は、俳優は表現することで、人の人生に影響を与える可能性のある職業だと思うので、元気がないときや疲れているときに、どこかで私を見て「何かやってみよう」とかポジティブな意識を与えられたらと思いながら取り組んでいます。「元気出ました」とかお声や反響をいただくと、私にとっても大きな力になります。
■本仮屋ユイカ
1987年9月8日生まれ、東京都出身。10歳で子役としてデビューし、2001年にTBS系『金八先生 第6シーズン』や2004年にTBS系『世界の中心で、愛を叫ぶ』に出演。2005年にはNHK連続テレビ小説『ファイト』でヒロインを演じ、話題を集めた。昨年からは「ゆいか」として歌手デビューも果たした。