東武鉄道は19日、復元作業を終えた蒸気機関車C11形123号機を使用し、「SL大樹」3重連イベントを南栗橋車両管区で開催した。イベント当日、報道関係者らが蒸気機関車3重連の走行シーンを取材する時間も設けられた。
今回のイベントは東武トップツアーズおよびクラブツーリズムの旅行商品として、計400名限定で販売された。当日は東武トップツアーズのツアー参加者、クラブツーリズムのツアー参加者がそれぞれ3班に分かれ、1班ずつ順にSL検修庫付近のイベントエリアからC11形3重連の牽引する客車に乗車。訓練線の車庫付近から報道関係者の撮影エリア付近を通り、管区内の施設付近までの距離を3往復した。イベントエリアでは物販をはじめ、ツアー参加者用の撮影場所も設けられた。
イベント当日、「SL大樹」の蒸気機関車3重連は、C11形123号機を先頭(浅草方)に、C11形207号機、C11形325号機の順で連結。その後ろを「オハフ15 1」「オハテ12 2」「スハフ14 1」「オハテ12 1」「スハフ14 501」の順で客車が連結された。C11形123号機は前照灯をLEDに換装しており、遠くからでも点灯している様子がはっきりと見えた。
蒸気機関車1機ごとに1回ずつ汽笛を吹鳴し、いよいよ「SL大樹」3重連の列車が発車。この日の最高速度はおおむね30km/h以下とのことで、蒸気機関車・客車の8両編成は比較的ゆっくりとした速度で訓練線を走行した。報道関係者らの撮影エリア付近にあるホームへ到達すると、再び蒸気機関車が1機ずつ汽笛を鳴らし、目の前を通過。管区内の建物付近に客車がさしかかったあたりで停車した。その後は客車が先頭になり、バックでイベントエリアまで戻っていく。再び発車を知らせる汽笛を鳴らし、ゆっくりと加速を始め、3重連の蒸気機関車が後ろから客車を押しつつ戻っていった。1回の往復にかかった所要時間は約10分だった。
筆者は4月21日に行われたC11形123号機お披露目の報道公開も取材しており、単機で行った試運転も鮮明に覚えている。しかし、今回の蒸気機関車3重連は、単機での運転とは比較にならないほどの迫力と重厚感があったように思えた。SL全盛期を知らない世代である筆者にとって、今回の3重連運転は大いに胸を熱くさせるものだった。
今回の3重連運転の特徴として、発車時と訓練線ホーム通過時、1機ごとに1回ずつ、計3回も汽笛を吹鳴したことも印象深かった。発車時は「ボォォォォ!」と高らかに吹鳴し、ホームにさしかかったときは「ボォォォォ! ボッ! ボッ!」と断続的に鳴らす。汽笛を鳴らした順に蒸気も吹き上がった。東武鉄道によれば、3機すべてに機関士が乗務し、協調運転を行うため、先頭の機関車、後部の機関車、中間の機関車の順に汽笛を鳴らすことで、それぞれ合図を送り合っているのだという。同一形式の蒸気機関車を3機保有するからこそ成せる技といえるだろう。
東武鉄道によると、今回のイベントでは、東武トップツアーズ・クラブツーリズムでそれぞれ200名ずつを定員として募集を行い、東武トップツアーズは200名の応募を完売、クラブツーリズムでも6月7日の時点で161名の応募があったとのこと。
会場の南栗橋車両管区まで、東武トップツアーズのツアーは往路(北千住駅10時37分発・南栗橋車両管区留置線11時51分着)で100系「スペーシア」の「デラックスロマンスカー」カラー編成、復路(南栗橋車両管区留置線14時25分発・北千住駅15時13分着)で350型に乗車。クラブツーリズムのツアーはその逆で、往路(北千住駅12時53分発・南栗橋車両管区留置線13時45分着)で350型、復路(南栗橋車両管区留置線16時33分発・北千住駅17時22分着)で100系「スペーシア」の「デラックスロマンスカー」カラー編成に乗車した。なお、南栗橋車両管区内でのイベント内容は両社とも共通だった。
C11形123号機は今後、本線上での試運転を経て、7月18日から営業運転を開始する予定となっている。同機の営業運転開始に合わせ、7月18日から東武線の主要駅にて「C11形123号機営業運転開始記念乗車券」を発売予定。7月1日以降、新鹿沼駅、下今市駅、東武日光駅、鬼怒川温泉駅にて「SL大樹 C11形123号機営業運転開始記念扇子」の発売も予定している。
本線上での試運転を無事に終え、営業運転開始を迎えることができれば、東武鉄道は日本国内で唯一、同一形式の蒸気機関車を3機保有することとなり、3機による運行体制が実現する。C11形123号機の日光・鬼怒川エリアでのデビューまで、いよいよあと1カ月を切った。