「収束」と「終息」、読みは同じ「しゅうそく」ですが意味は微妙に異なります。本記事では、「収束」と「終息」それぞれの意味と両者の違いについて解説します。
意味の違いを知ることで、ニュースを見聞きしているときもどちらの意味で使われているのか理解しやすくなるので、ぜひ確認しておきましょう。
収束の意味とは
「収束」とは、混乱した物事がいったん収まるという意味です。ただし、その物事は完全に終結したわけではなく、一定の範囲内に収まり落ち着いた状態を指します。
「収まる」という意味の漢字と「束ねる」という意味の漢字の組み合わせをみると、落ち着いた状態をイメージしやすいのではないでしょうか。
終息の意味とは
一方、「終息」とは、物事が完全に終了する、という意味です。
「終」は文字通り終わるという意味で、「息」にも止む(途絶える)という意味合いが含まれます。そのため、二重で「終了」が強調された言葉といえます。
収束と終息の違い
「収束」は「混乱した状態が落ち着く」、「終息」は「完全に終了する」という意味があることを理解していれば、使い分けはそう難しくありません。
例えば、「インフルエンザが流行って学級閉鎖が続いていたけど、流行もようやくシュウソクして欠席者が減ってきたから授業再開になったよ」という状況ではどうでしょうか。この場合は、まだ完全にインフルエンザの流行が終わっていないため「収束」を使うほうが適しています。
「インフルエンザが流行って学級閉鎖が続いていたけど、インフルエンザの流行もようやくシュウソクして今日から全員出席だ」ではどうでしょうか。このケースでは、「インフルエンザの流行が終息した」という表現のほうがより適切です。
新型コロナウイルス感染症の流行「しゅうそく」はどっち?
新型コロナウイルス感染症関連のニュースでも頻繁に聞かれる言葉ですが、文脈によってはどちらもあり得るため、「収束」と「終息」どちらが正しいのか混乱する人もいるのではないでしょうか。
基本的には「終息」を使う
新型コロナウイルス感染症の場合は、基本的に「終息」を意味する場合が多くみられます。「新型コロナウイルス感染症の終息宣言」とは、新型コロナウイルス感染症を完全制圧した状態のことです。
新型コロナウイルス感染症を完全に克服したと宣言するには、新規患者を出さないほど徹底的に制圧しなくてはなりません。
現在の状況からいえば、新型コロナウイルスに有効なワクチンや抗体の獲得などによって、新型コロナウイルスの感染を完全に抑え込むには、まだまだ歳月がかかるという状況です。
文脈によっては「収束」もあり得る
ただし、新型コロナウイルス感染症関連のニュースでも、文脈によっては「収束」の意味になる場合もあります。例えば、「〇〇では、新規感染者数が1日数名にまで落ち着いており、収束に向かっている」という場合はその一例です。
新型コロナウイルス感染症関連のニュースでは、「収束」と「終息」どちらの言葉も使われる可能性があります。ニュースを視聴するときは、どちらの意味で「しゅうそく」という言葉が使われているのかを確認してみてください。
「収束」「終息」どちらにも解釈できる例
次のように、「収束」と「終息」のどちらか判断しかねる表現もあります。
「〇〇では感染の広がりがシュウソクに向かっている」というケースでは、「収束」であれば、“大勢の感染者がいたが、人数が減少してきた"、という意味に。「終息」であれば、“感染者がいなくなりつつある"という意味になります。
また、「(新型肺炎の問題が)早くシュウソクしてほしい」という場合は、「収束」なら混乱状態から落ち着きを取り戻したい、という意味です。「終息」であれば、新型コロナウイルス感染症が完全になくなってほしい、という意味合いになります。
新型コロナウイルス感染症の流行収束と終息はいつ?
「収束」と「終息」の意味の違いについて解説してきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行収束および終息はいつになるでしょうか。時間的な予測は難しいため、それぞれの状況に至る条件について解説します。
「収束」には安全なワクチンの開発と接種が前提
新型コロナウイルス感染症が収束するのは、安全なワクチンの開発と接種によって、新規感染者数が一定期間減少していると証明されたときでしょう。
記事執筆現在では新型コロナウイルス感染症用の新しいワクチンが開発され、効果が高いと報道されている状況で、すでにそのワクチン接種も進んでいます。しかし、変異株などの影響もあり、新型コロナウイルス感染症の流行が収束して落ち着いた生活を取り戻すには、まだ時間がかかりそうです。
終息宣言が出るまでにはさらなる時間が必要
新型コロナウイルス感染症が終息したと宣言するには、新型コロナウイルス感染症の新規患者がほとんどいない状態にまで至らなくてはなりません。終息は、収束よりもかなり先になるでしょう。
「収束」と「終息」の英語表現
「収束」と「終息」それぞれの英語表現も、日本語と同様に異なります。英単語での表現および例文でその違いを確認していきましょう。
「収束」の英語表現と例文
「収束」を意味する英単語はいくつかあり、「control」や「curb」などはその一例です。ここでは、「収束」という意味を含んだ例文をいくつか紹介します。
Japan issued a state of emergency in May to curb the rapid spread of COVID-19 infection.
(日本は新型コロナウイルス感染症の急激な拡大を抑え込むため、5月に緊急事態宣言を発動した。)
Compared to Western countries, East Asian countries are controlling the spread of
COVID-19 infection. However, it is unclear why this is the case.
(欧米諸国と比べ、東アジア諸国は新型コロナウイルス感染症の拡大を抑制している。ただし、なぜそうなるのかは不明である。)
COVID-19 infection, which was controlling, is turning to spread again. When will we be able to return to normal life?
(収束しつつあった新型コロナウイルス感染症が、また感染拡大に転じつつある。いつになったら通常の生活に戻れるのだろうか。)
いずれの「収束」も、「終わる」というニュアンスはなく、「抑え込む」「抑制」などを意味する表現です。
「終息」の英語表現と例文
「終息」という意味を英語で表現する場合は、以下の2パターンがあります。
- 終了を意味する「end」を使う
- 「完全に」を表す副詞「fully / totally / completely」と「抑える」を意味する動詞「contain / control」などを組み合わせる
これらの表現を使って「終息」という意味を含んだ例文をいくつか紹介します。
WHO has declared the end of the pandemic. The period from the start of full-scale countermeasures for the disease to the declaration of termination is 30 years.
(WHOはパンデミックの終息宣言をした。病気の本格的な対策を開始してから終息宣言をするまでの期間は30年である。)
When will COVID-19 infection be completely contained?
(新型コロナウイルス感染症が完全に終息するのはいつになるのでしょうか?)
Currently, no one can get the vaccine for COVID-19 infection. More efforts are needed to completely control the virus.
(今はまだ新型コロナウイルス感染症のワクチンを誰でも接種できる状態ではない。このウイルスを完全に抑え込むには、まだまだ努力が必要だ。)
いずれの「終息」も、「完全に終わる」「終了」といった表現で、「収束」よりも強めの表現になっています。
収束と終息どちらの意味かを考えながらニュースを聞こう
新型コロナウイルス感染症のニュースは、まだしばらく続くと考えられます。ニュースで「しゅうそく」という言葉が出てきた際は、収束という意味なのか終息なのかを考えながら聞き分けましょう。
「収束」と「終息」の意味を忘れかけたときは、漢字を見て「収束は収まる、終息は完全終結」ということを思い出してください。さまざまな場面で「しゅうそく」を使うときも、どちらの意味で使うべきかを考えて正しい表現を選びましょう。