「逢魔が時」という言葉の意味を知っていますか? この言葉は現代ではあまり使われることがないため、読み方や意味について知らない人も多いでしょう。本記事では、「逢魔が時」の意味や由来、類語、対義語などについて解説します。

  • 逢魔が時とは

    「逢魔が時」とは?

逢魔が時とは

逢魔が時という言葉は日常会話で頻繁に使う言葉ではないものの、ゲームのタイトルになっていたり、人気映画のワンシーンに使われていたりしたことから、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。とはいえ、意味までは知らない人も多いはず。まずは、逢魔が時の意味や由来を紹介します。

逢魔が時の意味

逢魔が時は「おうまがとき」と読みます。広辞苑では「夕方の薄暗いとき。たそがれどき」と説明されていて、日が暮れた時間帯を意味する言葉です。

逢魔が時の由来

逢魔が時という言葉の由来は「大禍時」という日本語にあります。「大禍時」という言葉の由来は諸説ありますが、ひとつは「日本の古神道」にあるとされています。

古神道とは、日本にキリスト教や仏教などの外来宗教が入ってくる前に存在していたとされる日本古来の宗教です。この宗教の特徴は自然崇拝で、古神道では自然の山河・海・川・太陽・月・風・雷・季節など、自然のすべてが神であると考えられています。そのため、夕日が沈んで空が暗くなっていく時間帯である「逢魔が時(大禍時)」は、人々から恐れられていました。

逢魔が時は何時のこと?

「夕方の薄暗いとき。たそがれどき」とは、具体的に何時ごろのことを指しているのでしょうか。

逢魔が時は夕暮れの時間のこと

前述のとおり「逢魔が時」は夕日が沈んで空が暗くなっていく時間帯のことです。具体的には、夕方の5時ごろであるといえるでしょう。季節によって日没の時間に差はありますが、この頃夕日が徐々に沈み、藍色の暗い空が広がり始めるからです。

魔物に遭遇する時間帯

「逢魔が時」は、読んで字のごとく「魔に出逢うとき」です。昔から、得体の知れない魔物に遭遇する時間帯、もしくは大きな災いが起こる時間帯と信じられていました。

平安時代には、逢魔が時になると妖怪や魔物が動き始め、夜が完全に更ければ百鬼夜行といわれる魔物たちの行進が始まるとされていました。百鬼夜行に遭遇すると死んでしまうので貴族たちは外出を控えたといいます。

また、江戸時代には鳥山石燕が逢魔が時を表した浮世絵を描いており、そこには怪しげな妖怪たちが描かれています。

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    魔物に遭遇する時間帯、逢魔が時

逢魔が時の類語

逢魔が時の類語と言い換え表現を紹介します。代表的な逢魔が時の類語として、「黄昏時」「雀色時」が挙げられます。どちらも日没直後、まだ空に夕焼けの色が残る時間帯を指す言葉です。

黄昏時

黄昏時の読み方は、「たそがれどき」です。広辞苑では、「夕方うす暗くなり「誰たそ、彼は」と人の顔の見分け難くなった時分。夕方。夕暮」と説明されています。

黄昏時の語源は、広辞苑の説明でも登場した「誰たそ、彼は」という言葉にあります。この言葉は、「あなたは誰ですか」という意味で、日が沈んで薄暗くなり、他人の顔が見えにくくなったときの問いかけとして使われた言葉です。それから「誰たそ、彼は」という言葉が「たそがれ」に変わり、「黄昏時」という言葉が誕生しました。「黄昏」という漢字自体は、当て字だといわれています。

雀色時

雀色時の読み方は「すずめいろどき」です。広辞苑では、「夕暮。日暮時。たそがれどき」と説明されています。

雀色は日本の伝統色のひとつです。日本の伝統色は、平安時代に女性が身にまとう襲(かさね)装束や染織物、陶芸、詩歌、絵画、文学など、昔から日本人の暮らしに溶け込んでいます。その中で雀色は、雀の頭のような赤黒い茶色のことです。日が沈み夕日の赤色が空に若干残る様子が雀色に見えることから、夕暮れ時を雀色時と呼ぶようになりました。

逢魔が時の言い換え表現

逢魔が時の言い換え表現を紹介します。

夕暮れ、夕闇、夕間暮れ、片夕暮れ、暮れ方、入り方、暮合い、薄暮れ、 黄昏、 薄暮、 夕暮、夕刻、夕間暮、黄昏時、雀色時、日暮れ

「逢魔が時」は頻繁に使われる言葉ではないため、場合によっては言い換えた方が相手には伝わりやすいかもしれません。

  • 逢魔が時の類語

    逢魔が時の言い換え表現はたくさんあります

逢魔が時の対義語

「逢魔が時」が夕日が沈んで空が暗くなっていく時間帯なら、対義語は太陽が昇って空が明るくなる時間帯と考えられます。そのため、逢魔が時の対義語としては、「かわたれ時」「誰時」「東雲」などが挙げられます。

かわたれ時

かわたれ時は漢字で書くと、「彼は誰時」です。広辞苑では、「(薄暗くて、彼は誰か、はっきりわからない時の意)明け方または夕方の薄暗い時刻。後には夕方の「たそがれどき」に対し、明け方をいった。かれはたそどき。」と説明されています。

ここで、黄昏時の由来である「誰たそ、彼は」に漢字表記が似ていることや、広辞苑の「明け方または夕方の薄暗い時刻。」という説明で、対義語ではなく類語なのでは? と思った方もいるかもしれません。

元々は「黄昏時」「かわたれ時」の両方とも夕暮れ・明け方のどちらでも用いていました。しかし、今は夕暮れが黄昏時、明け方がかわたれ時と使い分けされています。

「かわたれ時」の由来は黄昏時の由来ととても似ていて、明け方で薄暗く、人の顔が見えにくくなった時間帯に、問いかけとして使われた「彼は誰ぞ(かはたれぞ)」という言葉から来ています。そして「彼は誰ぞ」から「かわたれ」に変化し「かわたれ時」という言葉が使われるようになりました。

間違えやすいですが、夕方は「誰そ彼」が語源の黄昏時、明け方は「彼は誰ぞ」が語源のかわたれ時、と覚えておきましょう。

黎明

黎明の読み方は、「れいめい」です。広辞苑では、「(1)あけがた。よあけ。(2)比喩的に、新しい時代・文化・芸術など、物事の始まり。」と説明されています。

1.私は、仕事のため黎明に家を出た。

2.当社は、スマートフォンの黎明期を支えていました。

1では「明けがた」、2では「新しいことが始まる頃」という意味で「黎明」が使われており、2の「黎明期」という表現はその物事が盛り上がる前の段階を指しています。ビジネスシーンでも使用頻度が高いので覚えておきましょう。

東雲

東雲の読み方は「しののめ」です。広辞苑では、「東の空がわずかに白むころ。明け方」と説明されています。

古今和歌集恋に「東雲のほがらほがらと明けゆけば」という和歌があるように、東雲という言葉は古くから使われてきた、明け方を表す日本語です。

  • 逢魔が時の対義語

    日本語には時間を表す言葉が多く存在します

逢魔が時を英語でいうと?

逢魔が時は「夕日が沈んで空が暗くなっていく時間帯」を示すので、英語でもその意味を持つ単語が該当します。

evening

eveningは、夕方・夕暮れ時のことを指します。

<例文>

  • I always go to watch a movie on Monday evenings.(私はいつも月曜日の夕方に映画を観に行く。

dusk

duskはまだ完全に暗くはなっていない夜、日没前という意味があります。

<例文>

  • I've been working from dawn to dusk. (夜明けから日没前まで働いていた。)

逢魔が時を英語で説明すると?

逢魔が時を海外の人に英語で説明する機会があるかもしれません。そんな時に使える簡単な英語での説明文を紹介します。

"Omagatoki" means the time just before night when the day is losing its light but it is not yet dark. The word also means the time ghosts and monsters appear.

(逢魔が時は夜になる直前、まだ完全に暗くなっていない時間帯のことをいいます。また、妖怪や幽霊、魔物に遭遇する時間ともいわれています。)

  • 逢魔が時を英語でいうと?

    逢魔が時を英語でいうと?

「逢魔が時」がタイトルに使われている作品

逢魔が時という言葉は、ゲームや本などの作品のタイトルとしても多く使われています。ここでは、そのなかからいくつかを紹介します。

ゲーム「逢魔が時」

2001年にビクター インタラクティブ ソフトウエアから発売されたプレイステーション用ゲームソフト「逢魔が時」。江戸時代を舞台に、タイムスリップした主人公が未解決犯罪や猟奇事件などさまざまな事件に巻き込まれていく怪談サウンドノベルです。プレイヤーの選択内容によってストーリーの展開が変わります。シリーズ作品として「逢魔が時2」も発売されているので、気になる人はチェックしてみてください。

小説「逢魔が時に会いましょう」

2018年に集英社文庫より発売された小説「逢魔が時に会いましょう」。1997年「オロロ畑でつかまえて」での小説すばる新人賞をはじめ、2005年「明日の記憶」での山本周五郎賞や、2016年「海の見える理髪店」での直木三十五賞など、多くの受賞経歴を持つ小説家・荻原浩さんの作品です。

物語の主人公は大学4年生。民俗学者の助手のアルバイトをつとめることになり、訪れた現地調査先で巻き起こる現象を描いています。

逢魔が時の意味や使い方を理解しよう

日が沈んで空が暗くなっていく時間帯を意味する「逢魔が時」という言葉について紹介しました。あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、意味や由来を知るとおもむきを感じられる言葉です。