トヨタ自動車「カローラ」の超高性能バージョン「GRカローラ」が公開となった。カローラといえばいわずと知れた大衆車だが、このクルマをベースにモンスターマシンを作成することは可能なのだろうか。「モリゾウエディション」とは何なのか。実車を見て確認してきた。

  • トヨタ「GRカローラ」

    トヨタ「GRカローラ」が世界初公開!(写真はモリゾウエディション)

求めたのは「野性味」

トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)は「GRカローラ RZ」と「GRカローラ モリゾウエディション」を世界初公開した。GRカローラ RZは2022年3月末に北米仕様のプロトタイプが公開された「GRカローラ」の日本仕様で、発売は今年秋ごろを計画。モリゾウエディションは秋ごろに予約抽選の受け付けを開始し、冬ごろに台数限定で発売する予定だという。

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  • 「GRカローラ」の日本仕様「GRカローラ RZ」

大衆車の象徴的な存在というイメージの強い「カローラ」だが、実はモータースポーツとの関連は非常に深い。2018年に12代目カローラ(現行型)が出たとき、豊田章男トヨタ社長には「お客様を再び虜にするカローラを取り戻したい」との強い思いがあったそうで、その思いがGRカローラの開発につながっているとのことだ。GRカローラ披露会の会場には章男社長自身がハンドルを握ったGRカローラの試作車や、章男社長にとって最初の愛車だったという4代目カローラも展示されていた。

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    左から「GRカローラ RZ」「GRカローラ モリゾウエディション」「GRカローラの試作車」「4代目カローラ」

GRカローラは「カローラスポーツ」をベースとし、まずは体幹を鍛えるべく、スポット溶接の打点を349カ所も増やすとともに、構造用接着剤を2.7m追加して塗布した。さらに、床下の3点とリアサスペンション取り付け部の結合の計4点のブレースを追加することで、強固な骨格を実現した。

パワートレインは「GRヤリス」も搭載する1.6リッター直列3気筒ターボの「G16E-GTS」型エンジンを使用。動力性能はGRヤリスの272psから304psに出力を向上させている。過給圧を高めたことに合わせて高圧燃料噴射ポンプの容量を増加。冷却や排気効率の向上を図ったほか、ピストンの重量合わせまで行なったという。

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    「GRヤリス」も使っているエンジンだが、馬力は304psに向上している

シャシーにも手が加えられている。GRのラインアップの中で最も長いホイールベースによる持ち前の優れた操縦安定性と高いコーナリングの限界性能のもと、「GR FOUR」システムをよりいかし、圧倒的な性能を着実に路面に伝えるべく、トレッドをフロント60mm、リアを85mm(4WD車比)も拡大。空力についても、車両の黒い部品のそれぞれに機能が与えられており、床面もフラットにされている。

開発に参加したレーシングドライバーの石浦宏明選手によると、最初に試作車をドライブしたときには走りが上質で快適な印象すら受けたというが、マスタードライバーでもある豊田章男社長の「野性味が足りない」という指摘もあって、よりGRカローラにふさわしい走りを追求して作り込んできたという。水素エンジンを搭載して参戦中のスーパー耐久シリーズで得たノウハウもいかされている。

リアシートなしのカローラ?

モリゾウエディションは章男社長のこだわりを具現化したモデル。「気持ちが昂り、ずっと走らせていたくなる走りの味」を追求したグレードとなる。「モリゾウ」というのは同氏がレース活動などの際に使っているニックネームだ。

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  • 「GRカローラ モリゾウエディション」

GRカローラ RZと同じくドアは4枚だが、リアシートを取り去って2人乗りとしていることには驚いた。これにより、約30kgの軽量化を達成したとのこと。後席のスペースには走行会などで交換するためのタイヤ4本を並べて積める。

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  • リアシートを外して軽量化を図った

走行性能が高まったため、ドライバーにより高い前後左右のGがかかるようになることに合わせて、前席にはしっかりと身体をホールドする専用セミバケットシートを標準装備。ステアリングやコンソールにはウルトラスエード表皮を採用したほか、ドアトリムオーナメントやインストルメントパネルなどに鋳物ブラック塗装を施してスポーティーさと上質さを演出している。

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  • 写真の「マットスティール」はモリゾウエディション専用のボディカラー。ウインドシールドガラスの「モリゾウサイン」もオーナー心をくすぐりそうだ

エンジン性能は最高出力こそRZと同じだが、最大トルクは370Nmから400Nmへと高めて低回転域のトルク向上を図っている。ディファレンシャルギアのローギアード化や1~3速のクロスギアレシオ化により、動力性能の向上と気持ちのよいギアのつながりを追求した。

ボディについても、RZに対してさらに構造用接着剤を3.3m多く塗布するとともに、ボディ補強ブレースバー2点を追加することで、いっそう高いボディ剛性を実現。足まわりにはモノチューブダンパー(フロントは倒立式)を装着し、235から245サイズへと10mm拡幅したハイグリップタイヤを履かせることで、より高いコーナリングの安定性とブレーキ性能を実現している。

走りを本格的に追求したGRカローラのような特別なクルマに関心を持つ人が少なくないことは、登場からずっと話題となり、ひとつのムーブメントを起こしたともいえるGRヤリスが証明している。その兄貴分であり、発展版ともいえるGRカローラにも、多くの人が注目するはずだ。もちろん価格も気になるところだが、それについては続報を待ちたい。GRカローラのRZとモリゾウエディションがどんな走りを見せてくれるのか、楽しみでならない。