ビジネスシーンやフォーマルな文書において見聞きすることがある「おしなべて」という言葉。日常生活ではあまりなじみのない表現のため、意味や使い方をよく知らない人もいるでしょう。

今回は、「おしなべて」の意味や使い方を例文つきで詳しく解説。また、類語や英語表現などについてもあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

  • 「おしなべて」の意味や使い方、類語や英語表現について紹介する記事です

    「おしなべて」の意味や使い方、類語や英語表現について紹介する記事です

おしなべてとは

まずは「おしなべて」の言葉の基本的な意味を見ていきましょう。

おしなべての意味

「おしなべて」は、「全体にわたって、概して」と「ありきたり」の2種類の意味がある言葉です。

現代ではほぼ「全体にわたって、概して」の意味で使われており、ビジネスシーンや本の中などでよく使用されます。

おしなべての漢字

漢字で書く場合は「押し並べて」となりますが、読みやすくするためひらがなで記載されることが一般的です。

古語であり、源氏物語にも登場

「おしなべて」は、平安時代を代表する作品である『源氏物語』などにも登場する古語です。

古文では、「の」を伴って「おしなべての」という形にし、「ありきたりの」や「平凡な」という意味で使われていました。

「すべからく」との誤用に注意

「おしなべて」と混同しやすい単語の一つに、「すべからく」という言葉があります。現代では「全体的に」という意味で使われる「おしなべて」と、「すべて」と語感の似ている「すべからく」を混同する人が多いようです。

しかし「すべからく」は本来、「当然」や「ぜひとも」という意味で使われる言葉で、「おしなべて」とは意味も使い方も異なります。

誤用を避け適切な使い方をするためにも、それぞれの言葉の正しい意味を理解しておきましょう。

「あまねく」との違い

漏れなく、すべてに及んでいるさまを表す「あまねく」という表現。「全体的に」という意味合いを持つため「おしなべて」と近しいともいえますが、ニュアンスや使い方は多少異なります。

具体的には、「おしなべて」が物事をざっくりひとまとめにして、その集まりがどういった状態なのかを表現する際に使う言葉である一方で、「あまねく」は物事が広く知れ渡っている状態や様子を表す言葉です。

例えば、「彼の功績は世間にあまねく知られている」や「このルールは業界内であまねく知れ渡っている」などの使い方をします。

  • 「おしなべて」には2種類の意味がありますが、現代ではほぼ「全体にわたって」の意味で使われています

    「おしなべて」には2種類の意味がありますが、現代ではほぼ「全体にわたって」の意味で使われています

おしなべての使い方と例文

ビジネスシーンやテレビ・書籍などにおいて使われることがある「おしなべて」という言葉。

いくつもの事柄をまとめて扱うときに使う表現のため、共通性がない物事に対して述べるときや、一つ一つのものに言及するときは「おしなべて」が使われることはありません。誤用を避けるためにも、場面ごとの使い方や例文などを確認しておきましょう。

ビジネスの場での会話やプレゼンテーションで使う場合の使い方と例文

「おしなべて」はどちらかというと、日常会話というよりは、職場の上司との会話やビジネスシーンにおけるミーティング・プレゼンテーションなどで使用されることが多い言葉です。

ただし、「おしなべて」という単語は誰もが知っている言葉ではないため、周囲の状況を見定めた上で使うようにしたほうがいいでしょう。

【例文】
・各事業部の売り上げはおしなべて良好である
・企画部の新入社員はおしなべて優秀だと感じています
・お客さまからの評価はおしなべて向上しているようです
・業界大手の企業と取り引きすることが決まり、社員の士気はおしなべて上がっているようだ

あいさつ状などフォーマルな文章で使う場合の使い方と例文

「おしなべて」は、あいさつ状やビジネスメールなどのフォーマルな文書においても使われる表現です。

特に目上の人とやり取りをする際に「おしなべて」を使うと、丁寧な印象を持ってもらえることがあるでしょう。

【例文】
・社員一同、おしなべて感謝の意を表します

  • 「おしなべて」の使い方や主な使用シーン、使う上での注意点などを理解しておきましょう

    「おしなべて」の使い方や主な使用シーン、使う上での注意点などを理解しておきましょう

おしなべての類語

言葉の意味をより深く理解したり使い方のポイントを把握したりするためには、類語や言い換え表現を知ることが効果的です。

「おしなべて」にも、似た意味を持つ言葉や言い換え表現などがいくつかありますので、それぞれの意味や使い方などを確認しておきましょう。

総じて

「総じて」は、「全部で」の他、「全般の傾向として」という意味を持つ言葉です。ビジネスシーンやフォーマルな場面などで使われる言葉ですので、「おしなべて」の言い換え表現として使える機会は多いでしょう。

例えば、「わが校の学生は総じて勤勉だ」「今年は総じて売り上げがいい」などのように使用します。

おおむね

「大部分を占める様子」を意味する「おおむね」。漢字で書く場合は「概ね」となります。「購買層はおおむね20代だ」などのように使用します。

「おおむねは理解した」というように、「大体(だいたい)の趣旨、あらまし」という意味で使われることもあります。

大体(だいたい)

「ほとんど全部」とか「大部分」というニュアンスを持つ「大体」。

「おしなべて」や「総じて」のように硬い表現ではなく、日常生活などで用いられることも少なくありません。同世代が多い場面やカジュアルに話したい場合などに、「おしなべて」の代わりとして使うといいでしょう。

なお、「ほぼ」も「大体」と同じニュアンスで使用することができる言葉です。

  • 「おおむね」や「大体」などの「おしなべて」の類語についても知っておきましょう

    「おおむね」や「大体」などの「おしなべて」の類語についても知っておきましょう

おしなべての英語表現

仕事で英語を使ったり外国人とやり取りする機会が多かったりする人の中には、「おしなべて」の英語表現を知りたい人もいるでしょう。

「おしなべて」のニュアンスで使える代表的な英語表現は、「on the whole」です。

他にも「as a whole」や「for the most part」「generally」などの表現が使えるため、あわせて覚えておきましょう。

英語の例文

・On the whole, sales of electronic equipment this year are strong.
(今年は電子機器の売り上げがおしなべて好調です)
・The new employees this year are, For the most part, excellent.
(今年の新入社員はおしなべて優秀だ)

  • 「おしなべて」のニュアンスで使える代表的な英語表現は「on the whole」です

    「おしなべて」のニュアンスで使える代表的な英語表現は「on the whole」です

意味や使い方、類語などを理解しておこう

「おしなべて」には、「全体にわたって」と「ありきたり」の2種類の意味がありますが、現代ではほぼ「全体にわたって」の意味で使われています。

ビジネスシーンやフォーマルな文書などで使われることが多いものの、人によっては伝わらない可能性があるため、使用シーンに応じて類語を用いるといいでしょう。