2022年5月13日公開の『空想特撮映画 シン・ウルトラマン』の完成報告会が2日、東京・セルリアンタワー東急ホテルにて開催され、出演の斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊と樋口真嗣監督が登壇。『ウルトラマン』の“原点”に立ち返りつつ「いまだ誰も見たことのない感動と興奮のエンターテインメント作品」とされる本作を力強くアピールした。

  • 左から樋口真嗣監督、長澤まさみ、ウルトラマン(立像)、斎藤工、西島秀俊

本作は、1966年に放送された円谷プロの特撮テレビドラマ『空想特撮シリーズ ウルトラマン』(全39話)をベースに、まったく新しいストーリーとして映画化したものである。2016年に公開されて大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』と同じく、企画・脚本を庵野秀明氏、監督を樋口真嗣氏が務めることでも話題を集めている。

相次ぐ巨大不明生物=「禍威獣(カイジュウ)」の出現を受けて、日本政府は禍威獣対策のスペシャリストを集め、防災庁「禍威獣特設対策室」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長・田村君男、作戦立案担当官・神永新二、非粒子物理学者・滝明久、汎用生物学者・船緑由美が選ばれ、任務にあたっていた。
禍威獣の危機が迫る中、大気圏外から突如「銀色の巨人」が飛来する。
やがて、禍特対には巨人対策のため分析官・浅見弘子が配属。浅見による報告書には「ウルトラマン(仮称)、正体不明」と書かれてあった……。

禍特対の作戦立案担当官であり、「ウルトラマンになる男」でもある神永新二を演じる斎藤工は「約3年前に撮影が始まったこの作品が、いま完成したことに必然を感じています。撮影、そして仕上げ作業など映画制作に携わられたすべての方たちに敬意を表します」と、2019年から始まった壮大なプロジェクトが、2022年の現在ついに形となって現れたことを感慨深げに語り、同時に作品に関わったあらゆるスタッフの底知れぬ苦労をねぎらった。

公安調査庁より禍特対に途中参加して分析官を務め、神永とバディを組むことになる浅見弘子を演じる長澤まさみは「いつ公開するんだろう? って友だちから聞かれていました。このたびやっとみなさまに作品をお届けできる日が来た、とうれしく思っています」と、製作発表から完成まで長い日数がかかった本作の完成を喜び、にこやかな表情で話した。

禍特対班長・田村君男を演じる西島秀俊は「一映画ファンとして、完成を楽しみにしていました。さきほど試写を観ましたが、僕の想像をはるかに超えるすごい傑作が生まれたな、と興奮しています。早くみなさんにも観ていただき、この興奮を共有したいです」と目を輝かせながら語った。

本作のメガホンを取った樋口真嗣監督は「映画作りとは、ひとつひとつの要素を作り込んで、磨き上げていく作業。やっている間は本当に楽しいのですが、だからといってずっとその作業を続けていては、お客さんに映画を観てもらえなくなります。今日はなんとか、完成したものを観ていただける状態になりました、と報告いたします。この声が作品に関わった大勢の人たちに届くと思うと、改めて『みんなありがとう』という気持ちでいっぱいになります」と笑顔で語り、長い期間を経てようやく作品が完成した喜びをあらわにした。

庵野秀明氏が執筆した本作の脚本を最初に読んだときの感想を聞かれた斎藤は「少しだけ参加させていただいた『シン・ゴジラ』のときもそうでしたが、ページを開くとあまりの活字の量で、(思わず)一度閉じました。分厚い台本に書かれていたのは、因数分解のように複雑で、壮大な物語。一度読んだだけでは想像が追い付かない、これはもう、制作陣のみなさんにゆだねてしまおうと、すぐ考えを切り替えました。多くの方々に驚きを与え、好奇心も夢もつまっている『魔法の辞典』という気がしました」と話し、多数の出演者に膨大なセリフが割り当てられた『シン・ゴジラ』と同じく、本作でも各キャラクターのセリフ量が尋常ではないほど用意された密度の濃い脚本だということをうかがわせた。

続いて長澤は「この台本が映像になったらどうなるんだろうという想像が追い付かなかった」と、やはり複雑で膨大なセリフが大量にある庵野氏の脚本についての感想を述べつつ「描かれているキャラクターにしっかりと筋が通っていましたし、自分としては持ち場をまっとうしようという気持ちで臨みました。今日、試写を観て『こんな風になっているんだ』と感心するところがたくさんあり、一度観ただけではわからないところもあるので、また映画館に観に行こうと思っています」と、自分の役柄についての責務をまっとうするつもりで撮影に臨んだことを明かした。

西島も脚本を読んだときのことをふりかえり「最初に、面白さと情報量に圧倒されました。設定資料がすごく分厚くなっており、これを読み込んで、とにかくここにある情報をぜんぶ(観客に)伝えなくてはいけないんだなと思いました。人間のドラマを真正面から描こうとしている内容ですから、自分も全身全霊で“立ち向かって”いかないと、この台本と一緒に走っていけないぞという覚悟が必要でした」と、禍威獣(怪獣)と外星人(宇宙人)が存在するSF設定と共に、登場する各キャラクターがおりなすドラマにも力が込められていると語り、脚本に描かれた要素をすべて表現するための覚悟を決めたことを明かした。

話題が「撮影時のエピソード」に移ると、西島は「たくさんのカメラを使っての撮影が印象的でした」と話し、メインのA・Bカメラも含めて都合「17台」ものカメラが用いられたという現場をふりかえった。続けて西島は「記録さんが何をどう記録してたのかわからないっていう。ふと見ると、尾上(克郎/准監督)さんが『なんか撮ってるからね』って言ってるし(笑)。いろいろな方たちが結集して、このシーンではこの角度で撮りたいっていう画面を撮っているんですね。なぜか、他のカメラが来たときメインのはずのA・Bカメラが“退く”という瞬間があったりして、それだけすごい人たちがカメラを回していた印象。最先端の撮影現場にいるんだな……と実感していました。みんなの想像力がいちばん出る形を選んでいた。毎日の撮影が楽しくてしようがなかったです」と現場の充実感をしみじみ回想した。

カメラを回していたのはスタッフだけでなく、斎藤や長澤も芝居をすると同時にスマホのカメラを相手に向ける場面もあったという。斎藤は「演技と撮影、2つの行動が二層になっていました。通常の演技のときは、相手の方に感情をぶつけているんですけれど、その間にカメラがあったら、こうなるんだなと」と「演技をしながらカメラで撮る&撮られる」という新鮮な体験への感想を述べた。演技をしながらの撮影が「上手かった」との評判だった長澤は「以前お世話になったことのあるスタッフの方ばかりでしたし『カメラはこう持ったらいいよ』とアドバイスしていただきました。みなさんを信じたから上手くいったんです(笑)」と笑顔で語った。

樋口監督は、俳優にカメラを持たせた意図について「画(え)の材料は多ければ多いほどいいですからね」と説明しながら「でも、よく考えてみれば、俳優さんがお芝居に集中する環境を奪っていたかもしれない。配慮が足りなかったなあ」と、申し訳なさそうに俳優陣を見つめ、すかさず長澤が「楽しかったです。いい経験が出来ました」と笑顔でフォローを入れる一幕があった。また樋口監督は「僕たち(演出)が考える画は、こういう映画にしたいというものになりますが、演じる人の目線で撮ると『こうなるのか』という驚きがありました。大収穫でしたね。役者のみなさんには大変な思いをさせてしまいましたが、それに見合った何かをいただきました」と語って満足そうにほほえんだ。

本作では「禍特対」メンバーとして共演した斎藤、長澤、西島。斎藤は2人の印象について「お2人がこの作品にご一緒していただけることで、このプロジェクトは映画的な正しさを持った場所に行けるなと、心強さしかなかったです。撮影に入る前、撮影中も含めて、お2人には感謝しています」と、数々の実績および人気を誇る西島、長澤および禍特対メンバーとして集まった共演者の頼もしさに助けられたとしみじみ語った。

長澤は「斎藤さんは穏やかな方で、静かにみんなを見守ってくれる。大人っぽくて色っぽくて、本当にウルトラマンみたいな存在でした。いっしょにいるだけで、穏やかな気持ちになり、現場に集中できました。西島さんは田村班長そのままで、私たち俳優チームも班長のようにまとめ上げてくださいました。毎日、他愛もない話をしながら絆を深め合って『こういう空気感が映画に映るんだよ』と、率先して教えてくださる、すばらしい先輩です」と2人を絶賛した。ちなみに「他愛もない話」の内容については「このお菓子おいしいよとか、好きな食べ物の話とか(笑)」と、禍特対メンバーのチームワークが育まれるのも納得の、ほほえましい話題だったようだ。

西島は「工くんはいまここに座っている姿、現場の控室で見かける姿、そして普段会っている姿がまったく変わらない。長澤さんが言ったようにウルトラマンそのものみたいな印象があります。自分の視点を持ち、きちんとその場にいて、全体を見ている感じ。本当に安心感があって、僕たちは『工くんがいてくれるから安心だ』と思える、そういう人です。長澤さんは、現れるとその場が『華やか』になるんです。まさに映画女優。毎日お会いしていましたが、そのたびに感じていました。この雰囲気は、生まれつき備わっているものだと思います」と、斎藤、長澤のスター性について語り、禍特対メンバーの仲のよさ、結束の強さを感じさせるコメントを残した。

ステージ上の3人について樋口監督は「プロジェクトを始めたばかりのときは、まだどなたに演じてもらえるかわからない、白紙の状態でした。キャスティングについては『夢が現実になった!』というくらい、お願いしていた方たちがみな(出演を)引き受けてくださいました。この映画には、ウルトラマンや禍威獣、外星人が出るお話ですけど、それ以上に『ウルトラマンと人間たち』のお話なんです。ウルトラマンになる男に“仲間”ができるという……。だから『人類代表』としてのキャストを選びたかった。ウルトラマンと出会ったことで、幸せになる人は誰だろう。映画で『よい結末』を迎えられる方たちを集めたかったんです」と語り、自身が思い描く理想的なキャストがそろってくれたことに感謝の思いを示した。

斎藤、長澤、西島の3名は、この日の午前中に初めて完成した映画を観たという。斎藤は現在の心境を「自分の少年性というか、スクリーンからもらった『映画の夢』を全身で浴びた直後です。あまり言語化できない感情が持続しています。西島さんもおっしゃっていましたが、この映画は他の方と感想を『シェア』することで育っていくのではないかと思います」と述べた。

長澤は「“びっくりした”という感想です。禍特対がとても活躍し、彼らのチームワークというか、メンバーひとりひとりの感情が活き活きと描かれていて、ウルトラマンと寄り添いあっている。人間同士のドラマとして感動する部分があり、今も高揚感が残っています。映画が公開したら、また観に行かないと……というような感情になったのは初めてです」と語って、作品に対する強い愛着をのぞかせた。

西島は「圧倒されました。かつての『ウルトラマン』の作り手の高い志を継承し、ものすごい作品ができあがったなと思いました。子どものころ『ウルトラマン』を観ていた人たちは大興奮すること間違いなしですし、今の子どもたちにも観てもらいたいです。人生の記憶の中に刻まれるような、凄い作品になるんじゃないかな。僕もできることなら、今すぐもう一回観たい(笑)」と、少年のように目を輝かせながら本作の感想を熱っぽく語った。

最後にマイクを手にした樋口監督は「こんな恵まれた状態で完成した映画はありません。普通はもうちょい、公開日に合わせてあわてて作るケースがあります。そんな中で、コロナという大変な事態もありましたけれど、いろんな局面で粘り強く作ることができたのではないかと、改めて関係者の方々には感謝の言葉しかありません。庵野(秀明)ともリモートでありながら協力してもらい、一緒に作り上げることができました。ぜひたくさんの人たちに観ていただきたい映画です。早く観ていただかないと、うかつな人がネタバレを言うと思いますので……あ、俺か(笑)。公開されたら、一刻も早く観てください。よろしくお願いします!」とセルフツッコミを入れつつ、さまざまな仕掛けがあると思しき本作のストーリーを思いっきり楽しむために、なるだけ公開直後に劇場に来てほしいと力強く語った。

西島は「この仕事に携わっている人間として、こんなすごい映画に参加させていただき、感謝しています。エンターテインメントとしてもよく出来ていますし、テーマも奥深い。先ほども言いましたが、子どもたちにこそ観てもらいたいです。僕が少年時代にテレビで『ウルトラマン』を観て、何かをつかんで育ったように、『シン・ウルトラマン』からいろんなことを感じ取ってほしいと思っています」と、『シン・ウルトラマン』がかつての『ウルトラマン』の本質的な部分を継承しており、現代を生きる子どもたちの心に強く呼びかける「何か」を秘めていることを強調した。

長澤は「禍特対の絆や、人々を守ろうとする姿、そして脅威に立ち向かう姿に勇気付けられたり、同じような思いになったりしてほしいです。ぜひ映画館に足を運んでいただき、禍特対の頑張りを感じ取ってください」と、禍威獣に挑む禍特対メンバーのドラマを見てもらいたいと語った。

斎藤は「『シン・ウルトラマン』に関わっている人たちは、みな子ども時代に『ウルトラマン』から『何か』を授かっています。それは人間と自然との距離感とか、自分と異なる『他者』を思う気持ちなど、さまざまです。この映画には、今の時代に必要なものが、好奇心と共にたくさん詰まっています。そんな作品に関わることができて、心から誇らしく思います。公開されたら、僕も劇場で観てこの作品を『自分の一部』にしたい。そして『シン・ウルトラマン』という作品をきっかけにして、また新しい『何か』が生まれていくことを願っています」と、かつての『ウルトラマン』に強い影響を受けたスタッフ・キャストの思いを結実させた『シン・ウルトラマン』が、新しい世代に何らかのインパクトを与えられればという願いを込めながら、完成報告会をしめくくった。

『空想特撮映画 シン・ウルトラマン』は2022年5月13日より全国劇場にて公開。

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ