「医療保険はいる?いらない?」この疑問を抱いたことがある方は多いのではないでしょうか。医療保険への加入を検討するにも何から考えればいいのかがわからない、そんな方に向けて、必要な情報をわかりやすく解説していきます。
■そもそも医療保険ってどんな保険
まずは医療保険そのものについて理解を深めましょう。
<手厚い公的医療保険>
医療保険は、公的医療保険と民間の医療保険の2つに分けられます。
日本の公的医療保険は国民皆保険制度といって、国民すべてが公的医療保険に加入しています。そのため、全国どこの医療機関でも公的保険によって医療を受けることができます。
医療費の自己負担は、
・75歳以上は1割(※)(現役並み所得者は3割)
・70歳から74歳までは2割(現役並み所得者は3割)
・70歳未満は3割
・6歳(義務教育就学前)未満は2割
となっています。
※2022年(令和4年)10月1日から一定以上の所得のある方は2割
また、公的医療保険の大きな特徴として、「高額療養費制度」が挙げられます。
高額療養費制度とは、同一月(1日から月末)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、年齢・収入に応じて決められた自己負担限度額を超えた額が払い戻される制度です。
この制度があることで、病気やケガで医療費が多くかかったとしても、実際に支払う医療費は限定されます。
<公的医療保険の対象外となるものは?>
手厚い制度といえる公的医療保険ですが、治療や入院に伴う費用をすべてカバーできるわけではありません。
・自由診療
・先進医療
・入院中の食事代
・差額ベッド代
・通院や見舞いに伴う交通費
・働けないことによる収入減
・看病に伴う家族の収入減
こういった費用は、公的医療保険でカバーすることはできません。
特に、自由診療を選択する場合、本来であれば保険適用となる診療についても、その疾病に関する一連の診療に関する費用は全額自己負担となるので注意が必要です。
先進医療も自由診療と同じく全額自己負担となりますが、保険適用となる診療については保険が適用されるのが自由診療と異なる点です。
<医療保険の保障内容は?>
公的医療保険だけでは不安を感じる場合、民間の医療保険で病気やケガに備えることになります。 ここからは、民間の医療保険についてみていきます。
医療保険には、主に「入院給付金」と「手術給付金」という2つの給付があります。
入院給付金は、病気やケガで入院したときに給付されます。1日あたりの金額が設定されていて、入院日数に応じて給付金が支払われます。
入院給付金が支払われる条件は、日帰り入院でも対象となるものから、1泊2日以上から対象となるものなど、さまざまです。
また、入院するとまとめて支給される入院一時金のタイプもあります。
手術給付金は、病気やケガの治療のために手術を受けたときに給付されます。
ただし、すべての手術が対象となるわけではありません。保険会社が指定する88種類(もしくは89種類)、または、公的医療保険に連動している約1,000種類が対象となります。 給付金は、手術1回につき○円、入院日額の○倍といったように一律で決まるパターンと、手術の内容によって給付率が異なるパターンがあります。
さらに、先進医療保障や三大疾病保障、女性疾病保障など、さまざまな保障もあります
■医療保険のメリットは?
<医療保険のメリット1>すぐに経済的不安に備えられる
病気やケガによる経済的不安に貯蓄で備えるつもりでも、今、手元に貯蓄がないのであれば、必要な額が貯まるまでは不安を抱え続けることになります。 保険は、加入をすればすぐに経済的不安に備えられるのがメリットです。
<医療保険のメリット2>病気やケガによる経済的な不安を減らせる
病気やケガで治療や入院が必要になったときには、ただでさえ不安は大きくなるはずです。医療保険への加入で、経済的な心配はいらないと思えることは大きなメリットです。
<医療保険のメリット3>治療の選択肢を増やせる
先進医療特約などをつけることで、治療の選択肢を増やすことができます。
先進医療=保険適用の治療より優れた治療というわけではありません。とはいえ、受けたいと思った治療が保険適用かどうかを気にせず選びたいのであれば、医療保険は大きなメリットとなります。
■医療保険のデメリットは?
<医療保険のデメリット1>保険料の負担がある
当然ではありますが、保険に加入する以上保険料が発生します。
特に、日々の生活費の負担が大きい場合、あるかどうかわからないことに備えるための費用は負担をより大きく感じるのではないでしょうか。
<医療保険のデメリット2>費用対効果を感じにくい
医療保険は「掛け捨て」と呼ばれるタイプが一般的です。貯蓄性はなく、長期間保険料を支払っていても、病気やケガをしなければ、お金を受け取ることはありません。 経済的な不安を解消するためにかかる費用ではあるものの、費用対効果を感じにくいとも言えます。
<医療保険のデメリット3>預貯金と違い、用途が限定される
貯蓄であれば、病気やケガをしたときに限らず、さまざまな用途でお金を使うことができます。医療保険はお金を受け取れるのが病気やケガをしたときに限定されてしまいます。
■医療保険はいる?必要性が高いのはこんな人
<貯蓄が少なく医療費の自己負担額を払うのが厳しい人>
公益財団法人生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査 」によると、高額療養費制度を利用した人及び利用しなかった人(適用外含む)の直近の入院時の自己負担費用(※)の平均は20.8万円となっています(1日あたりの平均は23,300円)。
公的医療保険が手厚いとはいえ、入院日数が長くなればなるほど、自己負担額も増えます。 自己負担額を支払えるだけの貯蓄がない場合は、医療保険の必要性が高いと言えます。
※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
<自営業、フリーランス、扶養内パートなど社会保障が手薄な人>
公益財団法人生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査 」によると、入院したことにより失った収入があった割合は21.6%となっています。そして、その失った収入の平均額は32.0万円となっています(1日あたりの平均は19,500円)。
会社員や公務員は病気やケガで働けないときには、傷病手当金として1日につき標準報酬日額の3分の2が支給されます。ただし、自営業、フリーランス、扶養内パートで働く場合などはこのような手当がありません。
一時的にでも収入が減ると生活が困る場合や、病気やケガによる収入減に貯蓄などで対応できそうにない場合、医療保険で備える必要性が高いでしょう。
<治療の選択肢を増やしたい人>
医療保険のメリットでも挙げたように、経済的理由で治療の選択肢を減らしたくない人、先進医療を受けたい人にとっては医療保険の必要性は高いと言えます。
■医療保険はいらない?必要性が低いのはこんな人
<預貯金がしっかりある>
教育費や老後の生活費といった目的のある預貯金ではなく、生活防衛費として何かあったときに使える預貯金がしっかりあるかどうか、がポイントとなります。 医療費の自己負担額や収入減を補填できるだけの預貯金があるのであれば、医療保険の必要性は低いと言えます。
<勤め先に付加給付制度がある>
付加給付制度とは、大手企業などの健康保険組合において、1カ月間の医療費の自己負担限度額が決められており、限度額を超過した費用が払い戻される制度です。 高額療養費制度による払い戻しにさらに上乗せして独自に「付加給付」が行われます。
自己負担限度額は各健康保険組合により異なりますが、厚生労働省が指導する金額は1人1カ月の自己負担が25,000円となっています。
勤め先に付加給付制度がある場合、医療費そのものの自己負担額はさらに減るので、その分、医療保険の必要性が低くなります。
<先進医療を必要としない>
公的医療保険が適用される診療のみを想定する場合、高額療養費制度を利用できるので、預貯金でまかなえる可能性は高くなります。
「医療保険はいる?いらない?」この問いへの万人に共通する答えはありません。
今回の内容をもとに、ご自身の価値観や経済的な状況、リスクへの心理的負担感などとあわせて、ご自身にとっての正解を見つけてくださいね。