――今後、こんな仕事をやっていきたいといった展望はありますでしょうか? またおふたりで『マシューTV(Matthew's Best Hit TV)』のような局の垣根を越えたコラボというのも期待してしまいますが…。

鈴木:僕は4月から(グループ会社の)フジアール出向になったので、『マシューTV』が音声で復活してるようですし、映像でもまたやられるのであれば、堂々とできますから(笑)

木月:それは僕としてはすごく見てみたいですね。

鈴木:フジテレビも「バーチャルお台場」を立ち上げて、テレ朝さんの「バーチャル六本木」と行き来できるようになったり、ステージにいた出演者が伝送されて現れたり、そういうこともしたいですよね。他にも、フジテレビの歴代ドラマのヒロインとデートができるバーチャルツアーをやって、映画『her/世界でひとつの彼女』みたいな感じで一緒に過ごして『東京ラブストーリー』のその場面のスポットで「かーんち!」ってARに声をかけられるとか、横井となら一緒に組めるんだろうなと思ったりしてます。

  • 『世界体操』の会場

  • 北九州市民からの写真がARで投影されたオープニング演出

横井:賢太となら何でもできそうだね(笑)。僕は去年、『世界体操・世界新体操』の国際大会のデザインに加えて演出全般まで担当させてもらいましたが、その際に開催地の北九州市の人や企業と本当にいろんな仕掛けを作って、街全体が大会一色になるイベントになったんですよ。その体験が素晴らしく、テレビ画面の向こう側とか分かれた関係でなく、お客さん(=視聴者)とつなげたい。例えばリアル空間とメタバース(仮想)空間をクロスオーバーさせて、番組放送したら終わりではなく、それがさらに続いて生活の場に連動していくような体験・仕組みというかメディア、そういうものを作れると面白いなと思います。

木月:すごいですね! まさにテレビを超えた発想。

横井:その際には、お台場エリア、何だったら全部賢太にやってもらおうかな(笑)

鈴木:ついでに付けられた(笑)

横井:そう言えば、僕も賢太に呼ばれてフジテレビで『ガチャガチャポン!』っていう教育番組をやりましたから。なので次は、大型の教育ワークショップとか、地方の町おこし、メタバースのアートフェスとか、新しい枠組みも一緒にチャレンジしてみたいですね。

鈴木:一緒にやれないことはないんですよ。それこそ、木月が僕と横井を使ってくれればいいんだから。

木月:いいんですか! そんなことして。

■テレビならではの“美術ショー”ができる番組を

木月:『新しいカギ』で「人間カーリング」とか、大掛かりな美術仕掛けに対しての反響や視聴率の反応を見ていると、こういった企画を視聴者の皆さんがまた求めだしているような気がすごくするんですよ。

  • 『新しいカギ』はこね男子プレゼンツ「人間カーリング」 (C)フジテレビ

鈴木:テレビは本来、夢が見れる箱ですからね。普通では起こらないことがこの箱の中では起こってるというのが魅力だから、そこが求められるのはやっぱり然るべきことなんだと思います。

木月:やっぱりYouTubeでは、大きなセットや仕掛けってなかなかできないと思うんですよね。

鈴木:企画力という部分では匹敵されるところまで来ているかもしれないけど、やっぱりバカげた演出をやり切れる美術的体力というところは、一日の長がありますからね。

木月:そういう“美術ショー”ができるバラエティ、とにかく画が面白い番組が、もっとできればいいなと思います。そのノウハウを、フジテレビの美術スタッフの皆さんは持ってるじゃないですか。

鈴木:やれるのに求められてないという現状がありますよね。

木月:『(オレたち)ひょうきん族』からやってるという特殊効果の中溝(雅彦)さんが『新しいカギ』もやってくれてるんですけど、「人間カーリング」で落ちる熱湯の温度をちょうどいいところに保つっていう技術がすごいんですよ。冬で冷めやすいんですけど、「◯◯℃、行けるよー!」って、そういう匠の技がいっぱいあるんです。

鈴木:中溝さんは『ごっつ(ダウンタウンのごっつええ感じ)』で、上から大量の水をバーっと落とす仕掛けのときに、リハーサルで彼自体が流れ落っこちてきて、松本(人志)さんに「それより面白くできるか!!」と言われた人です(笑)

次回予告…~若手制作者編~

●横井勝
1973年生まれ、京都府出身。デジタルハリウッド卒業後、97年に全国朝日放送(現・テレビ朝日)入社。『ミュージックステーション』『アメトーーク!』などの番組のアートディレクションのほか、『ABEMA NEWS』クリエイティブ統括、テレビ朝日のCIデザインや「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り」から「バーチャル六本木」の展開、『世界体操・世界新体操』の国際大会演出など、最新テクノロジー企画、リアルからメタバース空間、商品開発も多数手がける。

●鈴木賢太
1974年生まれ、埼玉県出身。武蔵野美術大学卒業後、97年にフジテレビジョン入社。主な担当番組は『ENGEIグランドスラム』『ネタパレ』『人志松本のすべらない話』『IPPONグランプリ』『ジャンクSPORTS』『ワイドナショー』『人志松本の酒のツマミになる話』『VS嵐』『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』『全力!脱力タイムズ』ほか。14年には『VS嵐』正月特番のセットで第41回伊藤熹朔賞協会賞を受賞。22年4月からグループ会社のフジアールに兼務出向。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』『AKB48選抜総選挙』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『あしたの内村!!』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『バチくるオードリー』などを担当する。