「道の駅いちかわ」に設置されたコンテナ型スマートストア「いちかわGo」は、スマートフォンのみで商品の選択から決済までが完結する、24時間営業のキャッシュレス店舗だ。運営元の日本メックスは、同店舗によって人手不足、感染予防、効率的な店舗運営という3つの課題解決を目指す。

  • 24時間無人営業&キャッシュレス店舗「いちかわGo」の狙いとは?

    「いちかわGo」とNTT東日本の眞木宣文氏(左)、「道の駅いちかわ」駅長の麻生岳人氏(右)

昼夜問わず多くのドライバーが訪れる「道の駅いちかわ」

自動車で都心から都外に移動する際、もっとも近場にある道の駅として知られる「道の駅いちかわ」。地方創生や観光の拠点となる「都市型道の駅」をコンセプトとして2018年に誕生した。市川市のアンテナショップとしての役割を持ち、同市の魅力を絶えず発信している。

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    都心からでも気軽に立ち寄れる"都市型道の駅"として2018年に誕生した「道の駅いちかわ」

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    市川市を初めとした千葉県内各地のご当地グルメやグッズが来訪者を楽しませる

市川北インターチェンジにほど近く、そして近隣の住民も足を運びやすいという好立地ゆえに、昼夜問わず多くのドライバーが来訪する。Webページから駐車場の混雑状況が定期的に発信されているが、その表示のほとんどは"混雑"。その人気の高さが窺える。

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    サイクリングで訪れる人も多く、スポーツサイクル専用スタンドも用意されている

「道の駅いちかわ」の営業時間は本来、9時~22時。だが現在はコロナ禍を受けて19時に閉館しており、深夜に買い物ができるのは飲料の自動販売機のみという状況になっている。運営元の日本メックスはドライバーの需要に応え、さらなる販売機会を得るために、夜間に営業できる施設を模索していた。

年中無休・24時間無人で営業できる「いちかわGo」

そんな日本メックスがNTT東日本と手を組み、2月1日よりスタートさせたのが、無人で24時間営業できるスマートストア「いちかわGo」だ。トレーラーに乗せたコンテナを店舗としており、建築費用や時間、手続きの手間をかけずに営業を開始できるという。「いちかわGo」の店舗は、約1ヶ月で設置が完了したそうだ。

最大の特長は、iOS/Android用アプリ「SmartStore」を利用し、入店から商品選択、精算、決済まで顧客自身で完結できることにある。NTT東日本が開発したアプリで、本社ビルなどで運営している実証実験店舗「スマートストア」でも用いられている。

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    スマホのみで購買を行えるコンテナ型スマートストア「いちかわGo」

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    入り口にはゲートがあり、その奥に商品が陳列されている

使い方は簡単。アプリに表示されるQRコードをゲートに読み込ませて入店。スマートフォンのカメラで商品のバーコードを読むとアプリ内のカートに入り、そのままアプリに登録したクレジットカードで決済が可能。買い物を終えたら退店用のQRコードを表示させ、お店を出るという流れになる。

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    お買い物をする際に利用するアプリ「SmartStore」

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    ゲートにQRコードをかざして入店する

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    「商品スキャン」ボタンをタップしてバーコード読み取り画面へ

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    スマホのカメラでバーコードを読み込むとアプリ内のカートに入る

「いちかわGo」の主な取り扱い商品は、おにぎりやパン、お菓子などの食品や飲料、市川市の特産品や千葉県産品、地元農家や店舗との連携による土産品など。店内には防犯カメラが設置されているが、現金を置く必要が無く、それほど高価な商品を扱っておらず、また四方から店内が見えるため、セキュリティ面での心配は少ないだろう。

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    取り扱っている商品はちょっとした飲み物や食品、土産品など

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    盗難などを防止するため、店内には防犯カメラが設置されている

商品陳列や清掃には人の手が必要だが、購買時に人が直接介在しないため、感染予防や経費削減という観点でも有用だろう。ゲートでは入場人数を確認しており、密接・密集も避けられる。人件費がかからないぶん、売り上げがそれほど多くなくとも運営可能だ。また店舗の仕組み上、電気・通信ケーブルさえ繋がっていれば運営できるため、ある程度の移動は自由に行える。シーズンによって場所を変えることも検討しているという。

「道の駅いちかわ」の駅長を務める麻生岳人氏は、「『いちかわGo』の形態であれば非接触で販売が行えますので、お客さまだけでなく従業員にも安心感を持ってもらえると思います。またこれまで営業できなかった夜間に販売を行えますので、販売機会の確保とドライバーさまの利便性向上にも繋がるのではないかと考えています」と期待感を述べた。

AIを活用して売れる商品と数を予測

NTT東日本の眞木宣文氏は、「いちかわGo」の運営にNTT東日本が関わっている理由として、キャッシュレスの実現とともにAIの利活用を挙げる。

「アプリを介することで、売れた商品や購入者の属性、路面店舗の売れ行きに影響が大きい気候データなどを取得し、把握することができます。これらのデータをもとにして、AIに明日、明後日売れる商品とその数を予測させ、発注が可能です。売れ残ったら廃棄するしかないおにぎりやパンといった食品のロスを減らすことができますし、多くの販売が見込まれる日には販売機会のロスを防ぐことができるでしょう」(眞木氏)

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    NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当部長 眞木宣文 氏

現在は観光客、地域住民、夜間のドライバー、どの層に向けた商品を選定するか調査しているという。今後はアプリ「SmartStore」の利用者を対象として、新商品や限定商品、値引き商品、キャンペーンなどの情報をプッシュ配信することも検討しているそうだ。

「無人のキャッシュレス店舗にはさまざまな形態がありますが、例えばウォークスルー型の設備を入れる場合、同規模でも初期投資に1,000万円くらいかかります。ですがスマートストアであれば170万円ほどの初期投資で導入が可能です。仮にゲートすら必要としないのであれば、ほぼ初期投資なしで利用することができます」(眞木氏)

NTT東日本はスマートストアを7店舗運営しているが、3月中には新たにホテル内の売店として1店舗、山形県長井市に2店舗がスタートする。路面店ではなく、基本的に企業内売店や地域の施設売店として展開を進める予定だ。「SmartStore」を利用したサービスの正式リリースは、現段階で2022年度第1四半期(予定)を検討しているという。

「小さいお店こそ確実に利益を出さなければなりません。そのために我々の仕組みの中で商品選別や来店機会を作ることができればと考えております。とはいえ商品に魅力がなければ足を運んでもらえませんので、まずは日本メックスさまのこれまでの実績をもとに選別してもらい、実証実験を進めていきたいと思います」(眞木氏)