介護が必要な家族がいる場合、頭が痛いのが毎月の介護にかかる費用。介護保険を利用すれば負担額は一部で済むし、ある程度は年金で補えるのでは?と考える人も少なくないようですが、実際はどうなのでしょうか。今回は、50代以上で家族の介護を経験したことがあるマイナビニュース会員506人を対象に、介護費用とその内訳についてアンケートしてみました。

  • 家族の介護費用はいくら?

家族の介護費用、6割が「毎月1~10万円未満」と回答

Q1.あなたは家族の介護を経験したことはありますか?

・はい……48.0%
・いいえ……52.0%

50代以上のマイナビニュース会員506人に、これまで家族の介護を経験したことがあるか尋ねたところ、「ある」は48%、「ない」は52%でした。約2人に1人が家族の介護を経験しているようです。それでは、どのくらいの介護度の家族をケアしていたのでしょうか。

Q2.あなたが介護している(していた)家族の介護状態は以下のうちどれですか?

1位 要介護3……19.3%
2位 要支援・要介護認定は受けていない(いなかった)……18.9%
3位 要介護2……12.3%
4位 要介護4……10.7%
4位 要介護5……10.7%
6位 要介護1……9.9%
6位 要支援2……9.9%
8位 要支援1……8.2%

最も多かった回答は、食事や排泄など身の回りのことほぼすべてに介護が必要な「要介護3」でした。介護なしでは日常生活を送ることが困難になる「要介護4」、寝たきりになるケースも多い「要介護5」も合わせると23%で約5人に1人という割合です。「要支援・要介護認定は受けていない」人も2割近くいますが、もしかしたら2000年の介護保険制度が創設以前に、家族の介護を行っていた人もいるのかもしれません。

Q3.介護に際して、1カ月あたりどれくらいの費用がかかりましたか?

1位 1万円以上~3万円未満……22.6%
2位 5万円以上~10万円未満……21.8%
3位 3万円以上~5万円未満……19.3%
4位 10万円以上~15万円未満……10.3%
5位 1万円未満……9.5%
6位 不明・わからない……9.1%
7位 15万円以上~20万円未満……3.7%
7位 20万円以上……3.7%

1カ月あたりの介護費用は「1万円以上~3万円未満」「5万円以上~10万円未満」「3万円以上~5万円未満」がそれぞれ約2割。合わせると、介護費用として毎月「1万円~10万円未満」かかった人が6割を占めています。「1万円未満」と負担が少ない人が1割いる一方、「20万円以上」と高額な介護費を挙げる人も3.7%いました。

Q4.介護の形態に関して、当てはまるものは次のうちどれですか?

・入居型介護施設を利用……29.2%
・介護している(いた)人と同居……52.3%
・それ以外……18.5%

介護形態について聞くと、「同居」(52.3%)が過半数を超えました。「入居型介護施設を利用」は約3割。中には、介護施設への入所を検討していても、定員の関係で入所できずやむを得ず自宅で介護した人や、入居費用がネックとなって施設入所を諦めざるを得なかった人もいるかもしれません。

Q5.介護施設の入居時にかかった費用の総額を教えてください

1位 10万円以上~20万円未満……33.8%
2位 10万円未満……26.8%
3位 20万円以上~50万円未満……15.5%
4位 わからない……8.5%
5位 50万円以上~100万円未満……5.6%
6位 100万円以上~500万円未満……4.2%
7位 500万円以上~1000万円未満……2.8%
7位 1000万円以上……2.8%

家族が介護施設に入居する際にかかった費用は、「10万円以上~20万円未満」(33.8%)が最も多く、「10万円未満」(26.8%)が続きました。「想像していたよりも安い」と感じた人も多いのではないでしょうか。今は「入居金0円」を打ち出す有料老人ホームも多くなっているので、その影響もあるのかもしれませんね。

Q6.在宅介護をするにあたってどんなことに費用がかかりましたか?費用がかかったものをすべてお選びください(複数選択可)

1位 医療費……70.9%
2位 福祉用具の購入・レンタル……65.4%
3位 介護サービス……63.8%
4位 家のバリアフリー化……45.7%
5位 交通費……34.6%
6位 その他……15.7%
7位 費用はかからなかった……3.9%

在宅介護の場合、もっとも費用がかかったのは「医療費」でした。そのほか、訪問介護やデイサービスなど介護サービスの利用、車椅子や杖、ベッドなど福祉用具のレンタル代も多くなっています。 

Q.7 介護費用として最もお金がかかったものは何ですか?

介護に必要な消耗品や介護用品の購入

  • 「紙オムツや介護用品の購入」(男性/62歳/その他・専業主婦等/個人事業主・会社役員)
  • 「介護用ベッドの購入」(女性/59歳/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連/会社員・公務員・団体職員)
  • 「送迎用自動車の購入費用と維持費」(男性/52歳/営業関連/会社員・公務員・団体職員)

紙オムツは消耗品。1個あたりの価格は低くても、1カ月分、半年分と計算するとかなりの額になります。介護用ベッド、車椅子利用者や高齢者の送迎に適した自動車などは、介護する側・される側どちらにも便利な製品ですが、その分金銭的負担が重くなるようです。

介護施設の利用料

  • 「介護施設への入居費用が一番かかりました」(男性/58歳/IT関連技術職/会社員・公務員・団体職員)
  • 「週5回の訪問介護ヘルパーと、週1回のリハビリヘルパーへの支払い費用」(男性/69歳/その他・専業主婦等/退職者)
  • 「ディサービスとショートステイ代」(男性/51歳/営業関連/会社員・公務員・団体職員)

在宅介護の大変さからは解放されるものの、頭が痛いのは毎月の利用料。食事代にサービス利用料、管理費など合わせると、年金ではまかないきれないというのもよく聞く話です。在宅介護の場合、訪問介護やデイサービス利用に介護保険は適用されますが、回数が多くなると自己負担分も増えてしまいます。

自宅のバリアフリー化

  • 「住居のバリアフリーのリフォーム工事に結構なお金がかかるといわれたので」(男性/58歳/営業関連/会社員・公務員・団体職員)
  • 「バリアフリー化はされていたが、トイレ、廊下お風呂に手すりを付けるのにお金がかかった」(女性/60歳/その他・専業主婦等/専業主婦)
  • 「車椅子が使えるように改築」(女性/56歳/その他・専業主婦等/専業主婦)

元気な時は全く問題を感じなかった家の中の段差も、在宅介護では大きなストレスとなります。それを解消するためのバリアフリー工事にお金がかかったと回答する人もいました。階段や廊下、トイレや浴室の手すりも、設置する場所が多ければそれだけお金も必要になります。

医療費や交通費

  • 「母が歩けないので、色々な病院での検査、診察などの医療費とタクシーでの移動なので都度交通費が掛かるのが大変でした」(男性/62歳/その他・専業主婦等/求職中・無職)
  • 「病院の行き帰りの交通費が非常に掛かった。毎週2回から3回は病院に連れて行かなければならなかったので、高速代を含めた交通費がとても毎月の重しとなった」(男性/62歳/IT関連技術職/会社員・公務員・団体職員)
  • 「医療費、介護といっても様々、うちの場合は末期がんの病人の看取りだったので、とにかく医療費は洒落にならなかった、1400万かけた治療が無駄になるなんて、本当に理不尽だとも思った」(女性/52歳/その他・専業主婦等/求職中・無職)

医療費については、悲鳴に似た声も。もともとの持病に加え、加齢に伴い認知症などにかかるリスクも増加。膝や腰の痛みを訴えるケースも増え、骨折などケガをすると治癒にも時間がかかり、通院・入院で医療費がかさむことも考えられます。専門医にかかるために、遠方の病院に通院するなんていう場合、交通費も高額になることでしょう。複数の病院を掛け持ちしているときは、さらに負担額も増えそうです。

まとめ

今回のアンケートでは、もっとも在宅介護でかかった費用が高額なのは「医療費」でした。高齢になるほど、さまざまな病気にかかるリスクが高くなります。また、介護度が軽い場合は、生活援助を行うホームヘルパーや、週に数回のデイサービスといった介護サービス利用料くらいで済みますが、介護度が進み、排泄に難を抱えるようになるとオムツ代、杖や車椅子が必要になると、家屋のバリアフリー化など介護サービス以外の費用もかかるように。医療費にこうした介護サービス費用や、それ以外の費用も加わると、毎月の年金をオーバーしてしまう人も少なくないでしょう。

また、在宅での介護に限界を感じ、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームといった施設への入所を検討する場合もあるでしょう。入居時にお金がかからない特別養護老人ホームのほか、現在は「入居金0円」をうたう老人ホームも多いので、施設入居の金銭的なハードルは低くなりました。ただし、入居以降は月額利用料や食費など月々まとまった額のほか、医療費やオムツ代、雑費など介護サービス以外の費用も別途必要となります。

日本では介護保険・国民健康保険制度が整っているため、費用は一部負担で済むものの、介護度や年齢が上がるにつれ、それなりの出費は覚悟しておいた方がよさそうです。高齢の家族がいる場合、医療保険の内容を確認したり、自治体のバリアフリー補助金制度について調べてみてもいいかもしれません。

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調査時期: 2022年3月11日
調査対象: 50代以上のマイナビニュース男女会員
調査数: 506人
調査方法: インターネットログイン式アンケート
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