コロナ禍における防犯対策をアップデート

新型コロナウイルス感染症パンデミックが宣言された2020年3月から、約2年。ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始の帰省もままならず、高齢の家族が気になる働き盛り世代は少なくないでしょう。

警備サービス会社のセコムは、東京都三鷹市にセコムIS研究所を置き、技術研究拠点としています。主務研究員の舟生岳夫(ふにゅう・たけお)さんに、最新の安全・防犯事情を伺いました。

  • 高齢者をターゲットにする「特殊詐欺」

犯罪者は心のセキュリティーホールを狙う

――コロナ禍で防犯事情は一変したかと思いますが、いかがでしょうか。

舟生さん: 最近は、詐欺が圧倒的に問題になっていますね。特に、高齢者をターゲットにした特殊詐欺です。

――退職後、社会との結び付きがなくなったり、加齢によって判断力が低下したりするため、騙されやすくなるのでしょうか?

舟生さん: それもありますが、事態はもっと深刻です。社会的に評価されていた人が退職すると、人から認められることや社会とのつながりがなくなることが多いです。

そこで、良からぬ者から頼られたり、声をかけられたりでもすれば、「自分がなんとかしなければ」と、詐欺の手口にあっさり引っかかってしまうのです。

――あちこちで注意喚起されているのに、騙される人が減らないのか理解できませんでした。そのような心の問題があるのですね。

舟生さん: 犯罪者側もこうした「心のセキュリティーホール」を狙ってきます。社会として解決していくのが望ましいですが、個人ができることとして「日頃から家族でコミュニケーションをとる」という状態を作っておくのが良いと思います。

――社会でさまざまな経験をしてきたことが高いプライドになって、人の意見を聞き入れづらい頑固な高齢者になってしまう……なんてこともありそうですね。

舟生さん: そうですね。まだ無垢で素直な子どもなら、その日にあったことや困ったことを報告することを習慣付けることができますが、その人なりのスタイルが確立している大人はなかなか難しいものです。ましてや、高齢の親では、「子どもの言うことなんて」と、素直に聞き入れないこともあるでしょう。

特に現役時代、バリバリ仕事をしていた人の引退後は注意した方がよいです。お金を十分持っていて、ちょっと頼られたりでもすると、コロっと騙されてしまいます。そうならないためにも、趣味や家族・友人とのコミュニケーションの時間があると安心です。

見守り携帯など最小限の備えからスタート

――最近の犯罪は悪質化していて、気を付けていても、突然巻き込まれることがありますよね。やっぱり、ネットやスマホが発達しすぎて人の心を荒廃させた一面もありそうですね。

舟生さん: コロナ禍でビデオ会議が普及して、離れて暮らす親とビデオ通話することも身近になりました。これば良い面の一つですが、コミュニケーションのあり方全体で見ると、危険と隣り合わせです。

昔は、1人1台スマホを持つわけではなく、家の固定電話が普通でした。家族が一度取り次ぐことで、不審な相手をシャットアウトしたり、会話の内容を家族で共有したりできました。今は、携帯電話やスマホで、犯罪者と直接やり取りできてしまう時代です。

――常に見守ってあげるわけにはいきませんが、完全に放っておくのも心配ですよね。何か、手頃なサービスがあれば紹介してください。

舟生さん: コロナ禍で在宅時間が増えていますが、空き巣ではなく、在宅時を狙う「居空き(いあき)」「忍び込み」という手口があることも知っていただきたいですね。

防犯の基本サービスとして、「セコム・ホームセキュリティ」をお勧めします。外出時や在宅時でも侵入を検知するとセコムに通報されます。それから、「自分はまだ若い」「制限付きのスマホなんて」と考える親御さんは少なくないと思いますが、救急ブザー用ストラップ付きで、引っ張るとセコムに救急通報できる「セコムみまもりホン」も、健康に不安のある親御さんにお持ちいただけると安心かと思います。

取材協力:舟生岳夫(ふにゅう・たけお)

セコム株式会社 IS研究所 ソーシャルアフェアーズディビジョンリスクマネジメントG所属。防犯設備士、インテリアコーディネーターとしても活躍し、子どもの防犯にも詳しい。