東京・上野の東京国立博物館 本館特別5室にて、3月1日から5月8日まで特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が開催されます。日本史の教科書でもおなじみの「空也上人立像」をはじめ、京都・六波羅蜜寺にゆかりのある彫刻が一堂に集う同展の見どころをレポートします。

見どころは360度から眺められる「空也上人立像」

口から6体の阿弥陀仏が出ている姿が印象的な「空也上人立像」は、平安京に疫病が流行した際、「南無阿弥陀仏」と唱えて極楽往生を願う阿弥陀信仰を広め、市井の人々から信仰を得た僧侶・空也上人(くうやしょうにん)の姿を表した像。制作されたのは空也上人の没後200年以上経った鎌倉時代で、当時を代表する仏師・運慶の息子である康勝(こうしょう)の作品です。

空也上人が開いた京都東山の六波羅蜜寺(創建時は西光寺)に伝えられている「空也上人立像」が東京で公開されるのは実に半世紀ぶり。さらに今回、普段六波羅蜜寺では正面からしか拝観できないところ、360度ぐるりと鑑賞することができます。

  • 重要文化財「空也上人立像」康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

開いた口から出ている阿弥陀立像は、空也上人が「南無阿弥陀仏」の名号を唱えると、その声が阿弥陀如来の姿に変じたとする伝承を表現したものだそう。

平安時代中期の天暦5年(951年)、京都で流行り病が蔓延していた時代に、空也上人は疫病がおさまり世の中が穏やかになるよう、十一面観音菩薩立像を造り西光寺(現在の六波羅蜜寺)を創建したといわれています。

空也上人が活動していた時代は1000年近く前ではあるものの、コロナ禍が続く今と同じく疫病が流行っていた時代でした。日本史の教科書や修学旅行、京都旅行で一度は見たことのある姿かもしれませんが、今見るからこそ惹かれるものもありそうです。

またこの特別展は「第1章 空也上人と六波羅蜜寺の創建」「第2章 六波羅とゆかりの人々」と大きく2つの構成になっており、六波羅蜜寺に収蔵されている平安・鎌倉彫刻の名品が多数展示されています。

  • 中央:重要文化財「薬師如来坐像」平安時代・10世紀、左:重要文化財「持国天立像」平安時代・10世紀、右:重要文化財「増長天立像」鎌倉時代・13世紀、京都・六波羅蜜寺蔵

展示室の奥には、寄木造り最古の像と言われる重要文化財「薬師如来坐像」を中心に、六波羅蜜寺の創建時に作られた重要文化財「四天王立像」が左右にズラリ。

  • 重要文化財「伝平清盛坐像」鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

また鎌倉時代に作られ平清盛と伝えられる僧形像、重要文化財「伝平清盛坐像」も。12世紀後半、六波羅には平氏の邸宅が建ち並んでいたそうで、平の清盛にもゆかりのある地です。この像は平氏が滅亡してからそれほど時が経たない時期に作られたと言われています。

  • 重要文化財「地蔵菩薩立像」平安時代・11世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

  • 重要文化財「閻魔王坐像」鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

定朝作と伝えられる地重要文化財「地蔵菩薩立像」や、ギロリとした目つきの重要文化財「閻魔王坐像」、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけ活躍した仏師・運慶が作った重要文化財「地蔵菩薩坐像」も展示されています。

  • 三途の川で亡者の衣服を剥ぎ取ると言われる"奪衣婆"の像も「奪衣婆坐像」江戸時代・寛永6年(1629年) 京都・六波羅蜜寺蔵

なお音声ガイドナビゲーターは、仏像好きとして知られる声優・小野大輔さんが担当。出典作品の背景にある歴史もわかりやすく解説してくれます。解説時間は約20分で、貸出料金は1台600円。

  • 音声ガイドナビゲーターは声優の小野大輔さん。入口にはサイン入りの案内も

「茶の菓」コラボや六波羅蜜寺公認フィギュアも

「空也上人と六波羅蜜寺」では、会場特設ショップにて展覧会オリジナルグッズも販売されます。

  • caption「マールブランシュ 茶の菓」(3枚入り450円)

京都の洋菓子店「マールブランシュ」のお濃茶ラングドシャ「茶の菓」とのコラボは、空也上人のシルエットをあしらった特別パッケージにオリジナルの焼き印を施したもの。3枚入450円で、1日30個限定販売の予定とのこと。

  • フィギュア「六波羅蜜寺公認 空也上人立像」(9,800円)

精密でリアルなフィギュアを手掛ける海洋堂が作った「六波羅蜜寺公認 空也上人立像」(9,800円)は、初の同寺公認フィギュア。高さ約13cmと手のひらサイズではありますが、圧倒的な存在感のある一品です。数量限定販売で、販売期間は第1期が3月1日から1,400個、第2期が3月末以降4月初旬予定で900個を入荷するそう。

  • 左:「A4クリアファイル」(450円)、右:「トートバッグ」(黒、1,000円)

トートバッグやTシャツのほか、展覧会公式サイトで展開されている「空也上人ファンクラブ」のデザインをあしらった「A4クリアファイル」(450円)や、こちらも展覧会オリジナルの「アクリルスタンド」(1,200円)も。

  • 「アクリルスタンド」(1,200円)

また空也上人の没後1050年の御遠忌にあわせて、六波羅蜜寺初の「空也」御朱印も授与されるそう。展覧会の会期中は会場限定、会期終了後は六波羅蜜寺にて授与の予定とのこと。

  • 六波羅蜜寺 特別御朱印「空也」(700円)

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」は5月8日まで。混雑状況によっては入場を待つ場合や、当日券の販売が終了している場合もあるそうなので、公式サイトをチェックして日時指定の事前予約をしてから行くことをおすすめします。

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」
会期:2022年3月1日(火)~5月8日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5室(東京都台東区上野公園13−9)
開館時間:午前9時30分~午後5時
休館日:月曜日、3月22日(火)、※ただし3月21日(月・祝)、3月28日(月)、5月2日(月)は開館
観覧料:当日 一般1,600円、大学生900円、高校生600円、特別展観覧の当日に限り総合文化展(平常展)も観覧可能
※事前予約(日時指定券)推奨、購入は公式チケットサイト「ART PAA」や各プレイガイドで受付中