ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は2月22日、決済のデジタル化における「Visaデビット」の果たす役割についてメディア向けにオンライン説明会を開催。ビザ・ワールドワイド・ジャパンのほか、千葉銀行がスピーカーとなり、VisaデビットがもたらすDXと新しい生活様式、銀行戦略における新たな価値提供などについて解説した。

Visaデビットを取り巻く現状 - 2021年にはデビット利用が現金を超えた

Visaデビットの現在の状況などについて、ビザ・ワールドワイド・ジャパンコンシューマーソリューション部長の寺尾林人氏より解説が行われた。

  • 消費者にとってのデビットの魅力

近年、コロナ禍や政府のキャッシュレス推進により市場が大きく変貌を遂げている。消費支出はコロナ禍を受けて減少傾向にある一方で、Eコマース市場は急激に拡大。日本におけるキャッシュレス決済比率は増加傾向が続いている。そのような中で同社は、日本におけるキャッシュレス戦略として、世界中いつでもどこでも誰からも選ばれ、受け入れられる決済手段となることを目指している。

中でもVisaデビットは、Visa加盟店であれば国内外・ネットショッピングなどいろいろなシーンで利用でき、銀行口座直結のためすぐに口座から引き落とされるサービス。利用のたびに通知があるため安心感があり、ポイントやキャッシュバックもあるため現金を使うよりも特典が多い。

  • 現金と比較したデビットの社会的メリット

世界では2019年にはデビットよりもクレジットの取扱高の割合が大きかったが、2021年には逆転。デビットの利用が増加傾向にある。英国では、デビットが現金の代替になるほど取引件数が増加しているという。日本においては、Visaデビットを発行する銀行は37行、発行枚数は1,770万枚となっている。取扱高は近年10年で20倍にもなっており、急速に普及が進んでいる。

  • 世界におけるVisaデビット

  • 日本におけるVisaデビット

銀行では近年、顧客のニーズが対面からデジタルに変化していることなど、さまざまな要因からデジタルトランスフォーメーション(DX)化が求められている。

ユーザーが銀行口座を活用する際に、口座からキャッシュカードを使ってATMから現金を得て、ショッピングなどに消費することになるが、Visaデビットであれば、銀行口座から直接、ショッピングなどで消費でき、脱現金化を進められるだけではなく、取引をデジタル化、データ化し"見える化"することができる。

Visaデビットによるキャッシュレス化は、ATMや現金調達コストなどのコスト削減が見込めるほか、"見える化"されることによりより良いサービスを開発したり、データを活用したOne-to-Oneマーケティングを実践したりと、利用者に新たな付加価値を提供できるように。銀行業務の革新的な変化をもたらす可能性があるという。

実際に、Visaデビットのユーザーは銀行ATMを使う頻度が全体平均よりも5%ほど低くなっている。また、銀行のインターネットバンキングの利用頻度全体平均よりもは約35%も高く、残高確認の頻度も高い。また、貯蓄に対する考え方も、デビットをメインに使う層は全体平均、クレジットメイン、現金メインで利用する層に比べて貯蓄意識が高くなっている。Visaデビットの利用者の満足度は93.6%、特に高校生では97.1%と非常に高い。デジタルネイティブ世代には、銀行口座をデビットで使うということは当たり前になっていると考えられるという。

  • Visaデビットで銀行口座へのデジタルアクセスを可能に

「Visaデビットにより銀行口座へのデジタルアクセスを可能にし、お金の管理ストレスを軽減できる世界を目指していきたい」と寺尾氏。

千葉銀行の取り組み - キャッシュレスは166兆円増加の可能性を秘めた市場

続いて、千葉銀行執行役員カード事業部長の俣木洋一氏よりVisaデビットの導入事例とその背景について説明が行われた。

  • 「TSUBASAちばぎんVisaデビットカード」ポスター

千葉銀行は、千葉県内に160店舗、東京都内に15店舗、その他県外に24店舗の189店舗を拠点に営業活動しており、グループ子会社なども含め15社でビジネスを展開している。

カードビジネス分野においては、従来まで子会社の手掛けるクレジットカードが中核を担っていたが、今後は銀行本体もカードビジネス、キャッシュレス事業に取り組んでいくという。

政府による未来投資戦略2017の発表においてキャッシュレス化を進めていく旨が示されたこともあり、キャッシュレス比率は着実に上昇。コロナ禍の後押しもあり、2025年にはキャッシュレス比率40%達成が確実視されている。将来的には80%を目指すというキャッシュレス市場は、今後まだ166兆円も増加する可能性を秘めた市場となっている。当然、競争も激化しており、従来の銀行決済取引が縮小していく流れでもあるので、本格的に取り組んでいく必要性のある分野となっているそうだ。

千葉銀行では、2019年10月より、関連会社で行っていた加盟店事業の業務とシステムを内製化。加盟店管理システムと決済センターを構築し、デビットカード発行事業を2020年10月より開始した。業務内製化により、年会費などを無料で提供することが可能となったため、すべての顧客に紐づけることができている。

さらに、ポイント管理システムも構築し、独自のポイント戦略を実施することもできるようになった。コスト削減に加え、自社開発サービスの自由度も高まったため、競争力、サービス供給力も強化された。

キャッシュレス決済には、二次元コード決済、電子マネーなど、あらゆる選択肢があるが、同行がVisaデビットを選択した理由は、口座から即時引き落としとなるカードとなる点が挙げられるという。

口座との紐づけは銀行ならではの強みであり、ほとんどの顧客がキャッシュカードを利用しているため、デビットカード機能を付加しやすい。また、Visaの加盟店は国内のみならず世界中の多くの店で利用できる。ユーザーにとって、キャッシュレスがもっとも便利に使える環境が整っていることも選択の大きな理由とのこと。

チラシやポスターなどでカードの切り替えを推奨しているが、現在のところ利用率は30%ほど。まだ70%の開拓余地がある。決済金額をあげていくことを狙いとしたゴールドカードやプラチナカードなどのプレミアムカード、法人決済のキャッシュレス化を進めるために法人カードも用意している。

  • 「TSUBASAちばぎんVisaデビットカード・Visaビジネスデビットカード」のラインアップ

また、銀行ユーザーのデジタル化ニーズも急速に進んでいる。2011年にはATMが1日の利用者数のほとんどを占めていたが、2021年には29%がアプリ利用となっている。同行では2023年3月にはアプリ利用が69%にまで増加すると予想、「デジタルバンクとリアルバンクを両立させて選ばれる銀行になっていきたい」としている。

  • リアルとデジタルの融合

  • アプリ及び地域商社との送客支援

将来的には、加盟店提供のお得な情報を属性の適したデビット会員にタイムリーに届けるサービスなどを展開し、送客につなげたいという。決済データが蓄積されるほどパーソナライズも進む。現在、加盟店事業の店舗数は活動開始から2年3カ月で8,000店舗を超えた。2022年3月には1万店舗に達する見込みだ。取扱高も増加しており、2021年12月のデビット会員数は17万6,000人、単月のショッピング利用額は12億円にまで成長している。

千葉銀行では、今後もこの規模戦略を継続しつつ、デビットが現金からの置き換わりとなるように、デジタル化を取り入れながら、顧客のニーズに応えていくという。

今後さらに広がると見られるキャッシュレス市場。その変化は、銀行の在り方も大きく変えていくのではないだろうか。