キアヌ・リーブス主演の映画『マトリックス』シリーズ最新作『マトリックス レザレクションズ』が17日より全国公開。同作の日本向けインスパイアソング「PARADOX」を手がけたロックバンド・MY FIRST STORYのボーカル・Hiroに、同楽曲や『マトリックス』シリーズに対する愛着、そして自身について話を聞いた。
――「PARADOX」は、世界的人気を誇る『マトリックス』シリーズのインスパイアソングです。楽曲制作のオファーを受けた際のお気持ちは?
戸惑いが大きかったです。「なぜ俺らなの?」と。『マトリックス』という映画を知らない人はいないじゃないですか。なぜ選ばれたのか、喜びよりも戸惑いや恐れ多いという感覚が今も消えません。まだ実感できていない部分があります。
――「PARADOX」は、MY FIRST STORYにとってどのような位置づけの楽曲でしょうか?
僕らにとって挑戦でした。自分たちのエゴを入れるよりも、俯瞰で見て作品としていいものを作ろうという考えが大きかったです。だから、今までの僕らの楽曲や、ファンが求めている楽曲とちょっと違うかもしれません。でも僕の中では、これがマイファス(MY FIRST STORY)でできる限界、バンドでできる限界。これ以上やるとソロっぽくなってしまう。「ここがギリッギリだな」というところを攻めました。
――制作にあたって『マトリックス』サイドからのリクエストは?
めちゃめちゃありました。そのリクエストが自分としては助かりました。サビ始まりについて「英語がいい」とリクエストがありましたが、僕も英語がいいと思っていました。日本市場のことを考えるとサビの始まりは日本語が好まれるんですけど、「このメロディーだったら日本語より英語がいいな」という思いがあったところに、『マトリックス』側が「英語がいい」と言ってくれて助かりました。
――タイトルも、「PARADOX」ではない可能性があった?
ありました。最初、サビの始まりの「Never Let You Down」を仮タイトルにしていましたが、『マトリックス』っぽくないなと思ったんです。『マトリックス』の世界観に寄り添いながら、自分の見たもの・感じたものを混ぜ込んで作ったので、タイトルも近しいものにしたいと思って悩んでいたら、パッと「PARADOX」という単語が浮かんできました。サビの終わりにも歌詞としてハメているし、『マトリックス』と韻を踏んでいるし『これしかないな』と思ってつけました。迷いはなく、仮タイトルと比べて圧勝でした。
――「PARADOX」は、『マトリックス』シリーズのみならず、ご自身のことも投影しているのでしょうか?
インスパイアソングということで、楽曲やメロディーは『マトリックス』っぽさを出すことは1ミリも考えてなかったです。ただ歌詞は言語化するので、そこで間違った表現をしないように、監督の意思を反映したいという思いがありました。「僕はこう感じました」という思いと、『マトリックス』側が「こういうものを作りました」ということを合わせることはできると思ったので、すごく自由に書けました。映画の中に、歌詞に使えそうなワードは散らばっているし、それに加えて自分が当てはめられるものを当てはめて。大きな枠組みの中で自由に遊んでいる感覚で、めちゃくちゃ楽しかったです。
――『マトリックス』シリーズに関わって成長できたことや学べたことは?
『マトリックス』は、小さい頃見た印象が強くて「アクション映画だな」という感覚でしたが、今回インスパイアソングを書くことになり、もう一度シリーズを見返したら、アクションはもちろん、ヒューマンドラマがすごく描かれていました。また、『マトリックス』は詩的表現が多く、自分だったらこう言っていたことを、こう表現できるんだとバンドに生きることもありました。音楽面で成長できたと思います。