『副業は、自己PRがすべて。 「稼ぐ人」が実践する成功戦略』(プレジデント社)を上梓したばかりの戦略的PRコンサルタント・野呂エイシロウさんは、副業をはじめるにあたり迷いがある人たちに向けて、「副業をはじめるためには、まず会社員を心のなかで辞めてみよう」とアドバイスを送ります。

  • 副業に年齢は関係ない。心のなかで「会社員を辞める」ことがはじまりだ /放送作家、戦略的PRコンサルタント・野呂エイシロウ

かつては人気放送作家として、『ザ! 鉄腕! DASH!!』『特命リサーチ200X』『奇跡体験! アンビリバボー』などの人気番組を手がけていた野呂さん自身も、放送作家をしながら企業PRの仕事をはじめた過去を持ちます。そんな「副業の達人」が語る、副業の心得とは—。

■100%自分に返ってくる働き方を決意した出来事

副業をすることに迷いがあったり、あるいは本業が忙しくて落ち着いて考えられなかったりするようであれば、頭のなかだけで一度「会社員を辞めてみる」といいと思います。まず、マインドを変えるきっかけを自分に与えるのです。

僕がかつて放送作家としての大成を目指しながら、さも当然のように副業をはじめられたのには、学生時代に株式投資をした経験が影響しています。「成長する」と見込んでいた銘柄に当時持っていたお金をつぎ込んで、期待どおりに銘柄の価値が上がり、売却益を得ることができました。

その体験から、「社会は資本家(投資家)のためにできている」ことを実感したのです。その企業を汗水流して成長させたのは、ほかでもないその企業の経営者や社員たちです。それなのに、資本を投下しただけの僕が収益を得ているのですから。

「就職して働き続けることを目標にしたら、資本家(投資家)に還元するばかりの人生だ」

そう思ったら、企業に一生を捧げる気にはなれませんでした。就職しても、それは労働と成果を提供し、自分の成長や対価を得るために過ぎない。ならば早く独立し、自分の仕事が資本家(投資家)にではなく、100%自分に返ってくる働き方をしないといけないと痛感したのです。

結果として、出版社で働いたのち、チャンスを得てフリーランスに転身し、すべて自分に還元される働き方を楽しんでいました。さらに、「自分の力を活かしてもっと稼げるチャンス」があったから、素直に副業をはじめることができたのです。 

■「妄想」はバカにできないモチベーションを生み出す

みなさんにぜひおすすめしたいのは、「会社に所属する」という発想をまず捨てること。そのうえで、これまで培ったスキルを活かしてどんな仕事ができるか想像してほしいのです。それは、単なる「妄想」でも構いません。妄想はすべてが都合のいいぶん、バカにできないモチベーションを生み出します。

それでも妄想しにくければ、「宝くじで1億円当たっちゃったから速攻で会社を辞めよう。その先、なにを仕事にしたら楽しいかな?」でもいいのです。

その次に、インターネットを活用して自分と同じスキルを持つ人がどんな商売をしているのかを調べたり、どんなメディアを活用できるのか仕組みを調べたりしてみましょう。いわば、副業前のリサーチをするのです。

イメージがより具体的になればなるほど、モチベーションも高まっていきます。「わたしもこんなことしたら、人に感謝されるのかな」とか、「同業者と語り合う機会があったら楽しそうだな」とか、「めちゃめちゃ儲かったらどうしよう!」というように、妄想を膨らませましょう。いまの会社だけでは張り合いがなかった「自分の仕事」の可能性に、新しい価値とよろこびを感じ、ワクワクすることが大切です。

知り合いづてに有料・無料でサービスを提供してみたり、専門家としてのブログやSNSをはじめてみたり、自分のイメージする働き方をしている人のオンラインサロンに入って一緒に活動してみるなど、実際に行動を起こしてみましょう。

あまり心配しなくても、どこの誰ともわからない人にいきなり大きな仕事や依頼が来るほど副業は簡単ではありません。本格的にはじめるとなれば、甘いことは抜きにして全力で取り組まなければなりません。その前に自分の名前を貶めない程度に予行練習をするのは、リサーチの一環としてありだと思います。

■60代でも「俺のフライドチキン食べてくれ!」

こういう話をすると、例えば50代以上の人たちは「自分には関係のない話だ」と思っているかもしれません。副業は脂の乗っている30代〜40代がやるものだと思い込んでいて、ヘラヘラしながら「僕もあと10年若かったらなあ」なんていっている…。

いやいや、「もっとも副業が必要で尻に火がついているのは50代以上」です。先に述べたように、企業が最優先でリストラしたがっているのは50代なのですから。まだどこかで、「自分は平穏に定年を迎えられる」と思っていて、なんだかんだでこのまま「60歳で定年」「65歳まで嘱託で働き」「年金受給」になると考えているとしたら、申し訳ないのですが、その危機感のなさこそが「企業が50代以上をクビにしたい」理由です。

つきあっている彼氏や彼女の発するSOSや危険信号に気がつけなくて、破局してしまった経験はありますか? 同じように、「終身雇用は無理だけど堂々とは言い出し難い」立場にある企業の発するサインに注意を払わないと、「なぜ自分がリストラに?」とか「こんなはずではなかった」と悔いることになります。だからこそ、自分で生き残れる準備をはじめてください。

いま60代以上で嘱託などをされている人も、副業に年齢はまったく関係ありません。アメリカのベンチャー起業主は40代〜50代が中心で、60代の人も多いそうです。また、日本でも新規開業者の約25%は50代以上です。これは日本政策金融公庫のデータなので、融資を受けて新たな事業に乗り出す人たちということです。

ベンチャー1本で借金を背負って生きるリスクに比べたら、副業なんてほぼノーリスクではありませんか。それを、「もう歳だから…」といっていては、この先なにも実現できないでしょう。僕らがよく街で見かける「ある有名人」も60代から世界的フランチャイズチェーンを立ち上げたことで知られています。その有名人は、ケンタッキーフライドチキンの創業者、カーネル・サンダースです。

彼は30代後半からガソリンスタンド兼カフェを運営し、カフェで販売していたオリジナルのフライドチキンの人気もあって繁盛していたようです。しかし、65歳のときに近くに高速道路ができたことで車の流れが変わってしまい廃業。そこで、自分の運転で車中泊しながら全米中のレストランをまわり、フライドチキンのレシピを教える代わりに販売数量に応じたマージンを取るフランチャイズビジネスを持ちかけたのです。

苦戦しながらも確かな味で契約を勝ち取り、73歳のときには600店舗を超えるフランチャイズ網を展開したといわれています。

■「頑張って働く」習慣を途絶えさせるな

恐ろしいほどのバイタリティだと思います。でも、カーネルおじさんほどではなくても、いまの60代は病気さえしていなければ、たいてい身体は元気です。また、頑張る気力が衰えるのは加齢が原因ではありません。「頑張って働く」習慣を途絶えさせたからです。気力が湧かないのなら、自分を少しずつ働かせて成功体験を積み直し、「頑張って働く」日々をあたりまえに感じるように戻せばいいのです。

僕はいま54歳ですが、趣味のゴルフでシニアプロに挑戦しようとしています。すぐ冗談をいう性格なので笑い話と思われがちなのですが、長期計画でスコア目標を立てて、着実に達成しています。そうやって自分の成長を確認しながら進めることで成功体験を積み重ねていくと、モチベーションはますます高まるばかりです。

みなさんも、「定年は早くて70歳だ!」。ひとまずそう考えて、この先あらゆる「想定外」が起こっても稼ぎ続けられる方法を真剣に考えてみてください。

※今コラムは、『副業は、自己PRがすべて。 「稼ぐ人」が実践する成功戦略』(プレジデント社)より抜粋し構成したものです

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/石塚雅人