人生100年時代、自分は何歳まで働き、どんな仕事をしながら人生を歩んでいきたいのだろう。特にコロナ禍で先行きが見えにくくなっている今、こんな自問自答をする場面が増えていないだろうか。

今年9月、リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所は「25歳から45歳までの若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」を実施。

そこから見えてきた社員の本音や実態について発表し、上司や組織に求められていることについても提言しているので、紹介したい。

  • 若手社員が「自律的」にキャリアを形成するため必要なことは?

約8割の若手社員が「自律的なキャリア形成」にストレスを感じる

「社員に自律的・主体的にキャリアを積み重ねていくことを期待する企業、自分の働き方を見つめ直す個人が増えていると言われながらも、あまり進んでいないように見えるのはなぜだろうという疑問が、今回の調査の背景です」と、同研究所所長の古野庸一氏。

  • リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長 古野庸一氏 提供:リクルートマネジメントソリューションズ

まず、自律的なキャリア形成とはどのような意味と捉えているかという質問に対して「自分のキャリアの責任は自分にある」と考えている人が64.6%。

さらに「これからは、多くの人に自律的に働くことが求められる」と思っている人は87.6%、「自律的に働きたい」と言う人も81.7%にのぼっていることが分かった。

一方で、大変興味深いのは「自律的キャリア形成にストレスや息苦しさを感じる」と答えた人が64.8%、「多くの人にとって自律的キャリア形成は難しい」と考えている人が76.3%に及んでいるという結果だ。

日常の仕事をこなしながら、主体的に働くのは難しい?

自律的キャリア形成という考え方にストレスを感じる理由として以下のような本音と実態が語られた。

・入社するまではいろいろ夢みるが、結局は会社の判断で異動が指示されるから
・入社当時も現在も異動の希望が通ることはない
・会社に求められるまま業務をこなしてきた上で、主体的に働けと言われても難しい
・キャリア形成の意欲はあったが、時短勤務や家庭の事情による有休の取得が多いことで、なかなか評価してもらえず、頑張っても無駄だと思うようになった

古野氏は「企業側には、日常の仕事を通じたキャリア形成に密接につながる配置や異動、評価・処遇に加えて、結婚や出産など人生の節(ライフキャリア)への配慮も必要になるでしょう」と提言している。

会社・職場への要望としては「学習支援」「副業許可」「柔軟な働き方」「キャリア支援」などが挙げられた。まずは要望を聞いてほしいという声もあった。

現場の上司が部下のキャリア形成を促進するコツは?

では、実際に現場の上司が部下の自律的なキャリア形成を行う際には、どのようなコツがあるのだろうか。

「一人ひとりの持ち味を観察しながら、やってみたいことをうまく聞き出していくのが大切でしょう。自分は何がやりたいのかがはっきり分かっていない人でも、上司からの問いかけに答えることは自己理解にもつながっていきます。ただし、個々の将来について踏み込むのは大変難しく、夢を語らせられることをドリハラ(ドリーム・ハラスメント)と感じる人もいるので配慮が必要です」(古野氏)

日常の忙しさに追われていると、自分の夢や将来への希望から目をそらし、仕事の意義を忘れがちになる。定年が近づいたときに「精一杯やった」と満足できているか、不満や後悔を抱えているかは、今の自分次第ということだろう。

ほんの少しでも立ち止まって、自分のこれからのストーリーを描くのがどれほど大切なのかを、今回の調査は示唆している。

企業の事情や時代性にただ振り回されることなく、自分に合った仕事を主体的に選び、思い通りの人生をデザインしていくために、「キャリア自律」は重要なキーワードになりそうだ。