そんな兼子のバックグラウンドを含めた葛藤を、残り5回で表現しなければいけなかった大島は「大変です」と本音を告白。「兼子の声のトーンやしゃべり方のスピードなどは、1つずつ監督と一緒に作っていきました。私も放送で千代さんを見ていたから、兼子が対象的な女性だとはわかっていたけど、そこをどういうふうに演じたらいいのかと、すごく考えながらやっていました。でも、思い切って栄一さんに自分の思いを吐露するシーンの撮影は、あとのほうに回してくださったので、すごくありがたかったです」と語る。

とても切なかったのが、コレラで亡くなった千代のことを忘れられない栄一を、兼子が目の当たりにするシーンだという。「栄一さんは何度も千代のことを思い出すんです。その姿を見て、兼子はすごく寂しい思いをしますが、逆に言えば、それぐらい栄一さんが千代のことを大事にしていたことにも気づき、その思い出も大切にする栄一さんを、兼子は素晴らしいと受け止めていきます。そんな栄一さんの思いを大事にしてあげようと思える兼子は、すごく強い人というか、懐が広い人だなと。すべてをまるっと包み込むような母性があるいい女性だなと思いました」とリスペクトする。

「兼子を演じる身として、できれば視聴者のみなさんに愛されるような素敵な人として映りたいなとは思いました。また、栄一さん自体がすごくチャーミングな人なので、その隣にいるパートナーの役割もいろいろあっていいのかなと。千代さんはもちろん、喜作(高良健吾)さんもそうですが、兼子もその役割の一部を担うという意味で、また他の方とは違う役割を考えていきました。そこでもやはり兼子はすごく強い人で、自分がぶれない人だとは思いました」

妻を愛する一方で、大内くに(仁村紗和)との間に設けた子どもを自宅で引き取るなどの一面もある栄一だが、大島は「兼子としては、本当にどうしようもないなと思いつつ、とても愛嬌のある人だし、常に心に遊びのある人だなという目で栄一さんを見ていたのかなと」と捉えた。「栄一さんが言うひと言で、こっちがハッとさせられるし、とても影響力がある人なので。楽しいほうにも大変なほうにも人を振り回す人間だからこそ、やっぱり栄一さんのそばにいると、自然に自分も心を動かされたんじゃないかと思います」

栄一役の吉沢亮については「エネルギーがすごい人」と表現。「こちらに与えてくれるエネルギーも強いので緊張感も生まれます。だからこそ、自分自身ももっと頑張りたくなるし、もっと吉沢さんの芝居に乗っかりたいというか、隣にいられるような人でありたいと思わせてくれる方。すごく周囲を盛り上げてくださる方です」と心から称えた。

■大島優子
1988年10月17日生まれ、栃木県出身。近年の主な映画出演映画は『ロマンス』(15)、『真田十勇士』(16)、『疾風ロンド』(16)、『生きちゃった』(20)、『明日の食卓』(21)、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(21)、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)など。『とんび』が2022年公開予定。ドラマは連続テレビ小説『スカーレット』(19)、『東京タラレバ娘』(17、20)、『七人の秘書』(20)、『ネメシス』(21)、『正義の天秤』(21)などに出演。

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