マーケティング戦略を立てるうえで要とされる、「STP分析」。ビジネスパーソンならばぜひ知っておきたいマーケティング用語の1つです。
それではSTP分析とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。本記事ではSTP分析の意味や考え方、具体的なやり方についてくわしく解説します。STP分析を活用したユニクロの事例なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
STP分析とは
STP分析とは、マーケティング戦略において要となる作業をいいます。読み方は「エスティーピーぶんせき」です。ではこのSTPは何を表しているのでしょうか。
STPとは3つの単語の頭文字
STP分析とはアメリカの経営学者が提唱したもので、マーケティング戦略のなかでも基礎となる枠組みとなります。具体的には、以下の単語の頭文字をとって名付けられました。
- Segmentation(セグメンテーション): 市場を細かくグループ化
- Targeting(ターゲティング): ターゲットとなるグループの選出
- Positioning(ポジショニング): 競合他社との差別化・自社の立ち位置を明確化
STP分析の位置づけとは
マーケティングにおける分析は、大きく分けると以下のように、環境分析・戦略立案・施策立案の3つの段階から成り立っていると考えられています。
環境分析 | ・3C分析(競争環境の把握) ・5F分析(業界環境の把握) ・PEST分析(外部・マクロ環境の把握) ・VC分析(弱みと強みの把握) ・SWOT分析(内部環境と外部環境の弱み・強み・機会・脅威を明確化) |
戦略立案 | ・STP分析(市場の明確化・顧客の決定・アプローチの方向決定) |
施策立案 | ・4P分析(具体的な施策の立案) |
上記の表から分かるように、STP分析は戦略立案の段階に位置付けられます。業界を取り巻く環境全般を分析する「環境分析」と、具体的に商品や価格設定に落とし込む「施策立案」の中間地点にある、いわばマーケティング戦略の要となるのがSTP分析です。
STP分析のやり方とは
先ほどご紹介したSTPの頭文字にそって、具体的に見ていきましょう。分析は基本的にS→T→Pの順で進めますが、場合によってはP→T→Sと逆に遡るなど、双方向に行き来しながら分析を進めることもあります。
セグメンテーション(Segmentation)
セグメント(segment)とは「区分」のことをいい、セグメンテーション(segmentation)は「市場細分化」と訳されます。具体的には市場に存在する不特定多数の人々を、年齢や職業、嗜好などに沿ってグループ分けする作業をいいます。指標となるのは主に、以下の4つです。
・人口統計的変数(デモグラフィック)
年齢、性別、家族構成、職業、収入、最終学歴など
・地理的変数(ジオグラフィック)
国、都道府県、市区町村、気候、文化、宗教、発展度、人口密度など
・心理的変数(サイコグラフィック)
ライフスタイル、性格、好み、価値観、購買動機など
・行動変数(ビヘイビア)
利用経験、利用水準、製品に対する知識、使用用途、購買状況、購買パターン、購入時のベネフィットなど
ターゲティング(Targeting)
セグメンテーションによってグループ化したなかから、次に商品を売り込むターゲットを絞り込んでいきます。この作業をターゲティングといいます。マーケティングにおいて、万人受けを狙う商品は誰からも支持されない、ともいわれます。そのため、このターゲティングの作業も非常に重要なものだといえます。
このターゲティングの作業には、以下のようなタイプがあります。
差別型マーケティング
グループ化したなかから1つを選び出すというのではなく、複数のグループが抱えるニーズにこたえる形で、複数のタイプやサービスを提供するというもの。具体的にはサイズや色のバリエーション、異なる料金プランを設定するなどで、自動車メーカーなどに多く採用されています。無差別型マーケティング
セグメンテーションにおけるグループをあえて無視して、ターゲットを絞らずに提供するもの。トイレットペーパーなどの日用品や青果などがその一例です。資金力のある大企業が用いる手法だとされますが、消費者のニーズが多様化している現代では、必ずしも有効な手法とはされていません。集中型マーケティング
アプローチするグループをひとつに絞り、集中してマーケティングを行うものです。消費者のニーズや嗜好を徹底的にリサーチすることができるので、特定の消費者にとってはとても満足度の高い商品やサービスを提供することができます。高級ファッションブランドなどが用いる手法で、満足度の高い商品やサービスによって、よりそのブランドへの依存性を高めることができます。
ポジショニング(Positioning)
ターゲティングができたところで、次に自社に勝ち目があるかどうかを見極める作業が必要です。何か商品やサービスを提供しようとしたとき、すでにそこには競合他社がいることがほとんど。そのなかで勝ちに行くために、自社がどの立ち位置を目指し、どのような差別化をするかを定める作業をポジショニングといいます。
ポジショニングをするうえで大切なことは、
- ターゲットに「意味がある」と思わせる付加価値を付けること
- 自社の強みがターゲットに伝わりやすいものであること
があげられます。
ポジショニングでは、ターゲットにしたグループが具体的にどのようなニーズを抱えているかを把握し、そのニーズにわかりやすく説明できるような付加価値を付けることができるかどうかがポイントとなります。
STP分析の活用事例
ここからは、STP分析を活用したビジネス事例を簡単に紹介します。
STP分析におけるユニクロの事例
ユニクロは、「LifeWear」という「生活を豊か・快適にする究極の普段着」をコンセプトに商品を開発・展開。日本だけではなく世界20ヵ国以上で展開しています。そこには商品の企画から製造、販売まで一貫して行うというユニクロならではの強みがあります。
セグメンテーション |
・トレンドではなく飽きのこない服 ※年齢や性別など人口統計的変数ではなく、ユーザーのニーズに着目して市場を細分類 |
ターゲティング | ・カジュアル志向 ・ベーシック志向 |
ポジショニング | ・トレンドを追求しない ・老若男女すべての属性やニーズに対応できる ・企画から一貫して行う強みを生かし、安価で高品質な衣料品を提供する |
STP分析におけるすき家の事例
1982年神奈川県横浜市に1号店をオープンしたすき家は、競合店との差別化を強化。その結果、店舗数で日本一を争うほどに大きく躍進しています。
セグメンテーション |
・外食、中食、内食の3つに細分類 ※外食は外部の料理を店舗で食べること、中食は外部の料理を自宅で食べること、内食は自宅で料理をして食べること |
ターゲティング | ・外食、中食市場 ・女性やファミリー層 |
ポジショニング | ・メニューを豊富に用意 ・テーブル席を用意 ・女性だけ、家族連れも入りやすい雰囲気 |
STP分析におけるライフネット生命の事例
ライフネット生命は、2008年に生命保険のオンライン販売をスタート。2019年には保有契約数が30万件を突破しています。
セグメンテーション | ・未婚or既婚、末子の年齢など家族タイプやライフステージによって分類 ・ネットの活用度 |
ターゲティング | ・ネットリテラシーが高い ・対面営業を敬遠している ・若い世代、若い夫婦、子どもに未就学児がいる |
ポジショニング | ・必要な分だけを自分で選択できる ・シンプルな仕組みでユーザーのニーズに合う ・人件費の抑制により安価な保険を提供できる |
STP分析を理解しよう
STP分析はセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取って作られた言葉で、アメリカの経営学者のフィリップ・コトラーが提唱しました。基本的にはS→T→Pの順に分析をすすめていきますが、場合によってはS、T、Pを往復しながら分析し、戦略を立てていくことが求められます。
マーケティング用語の1つであり、大手企業も取り入れているSTP分析。ビジネスパーソンとしてぜひ理解しておきましょう。