「ランチェスターの法則」とは、簡単に説明すると「強者」と「弱者」がそれぞれ取るべき戦略を示した考え方で、第一次世界大戦時での軍事作戦をもとにして生まれたビジネス戦略です。

本記事では「ランチェスターの法則」の詳しい意味や企業での実際の活用事例、基本法則と計算式をわかりやすく紹介。戦略を立てるためのポイントもまとめました。

  • ランチェスター

    「ランチェスターの法則」についてご紹介します

ランチェスターの法則とは?

「ランチェスターの法則」とは、イギリスのエンジニアであるフレデリック・ウィリアム・ランチェスター氏が、第一世界大戦時の軍事作戦をベースに考案した概念です。

具体的には、戦場における「強者」と「弱者」がそれぞれどのような戦略を取るべきかを示したもので、「ランチェスターの法則」には、「第一法則」と「第二法則」の2つの法則が存在します。

ランチェスターの法則はビジネスに応用できる

日本でランチェスターの法則が知られるようになったのは、マーケティングコンサルタントの田岡信夫氏が「ランチェスターの法則」を研究したことがきっかけです。田岡氏は、戦場における「強者」と「弱者」に大手企業と中小企業を当てはめ、企業の経営戦略として体系化しました。今では多くの日本企業がこの法則を実践しています。

ランチェスターの法則を取り入れるべき企業は?

ランチェスターの法則は、強者といわれる大手企業にも、弱者といわれる中小企業にも取り入れられますが、より取り入れるべきは中小企業でしょう。この「ランチェスターの法則」を用いることで、その市場において弱者である中小企業でも大手企業と戦う方法を考えることができます。

「ランチェスターの法則」を経営戦略とした場合の「強者」と「弱者」は、マーケットをどの程度獲得しているかで判断でき、シェア1位の企業を強者、2位以下の企業はすべて弱者と考えます。

  • 2つの基本法則

    「ランチェスターの法則」とはフレデリック・ウィリアム・ランチェスター氏が提唱した概念です

ランチェスターの法則を利用している企業の事例

ランチェスターの法則をビジネスに応用し、戦略として実践している企業は多いです。ここでは、強者の戦略を利用した企業と、弱者の戦略を利用した企業の事例を紹介します。

強者の戦略を利用した企業事例

まず、強者の戦略を利用した企業の代表例は、アメリカのテクノロジー企業であるAppleです。

Appleは、競合がマーケットシェアを獲得していた商品を自社の製品に応用しました。幅広い分野の市場に参入しながら事業規模を拡大した代表的な例といえるでしょう。

他社が独占しているシェアを獲得するのはとても難しいことですが、潤沢な資金や高度な開発力を生かした強者の戦略を利用して、市場のトップへとのぼり詰めました。

弱者の戦略を利用した企業事例

弱者の戦略を利用した企業の例は、ソフトバンクです。今では「大手通信キャリア」に名を連ねる大きな企業ですが、モバイル業界に参入したばかりの頃は圧倒的に不利な状態でした。しかし、低価格を前面に押し出した事業戦略などを展開したことで、今の地位を手に入れています。

  • 企業が弱者か強者か

    ランチェスターの法則をビジネスに応用している企業はたくさんあります

ランチェスターの法則における基本法則と計算式

「ランチェスターの法則」には、「第一法則」と「第二法則」の2つの法則が存在すると先ほどご紹介しました。ここでは、この2つの法則とはどのようなものかを掘り下げていきます。

第一法則

「第一法則」は、またの名を「一騎打ちの法則」といいます。1対1で戦う一騎打ちをイメージした法則で、同じ性能の武器を使用している場合には兵士の数が多い方が勝ち、兵士の数が同じ場合には武器性能が高い方が勝つ、というものです。

例えば、同じ武器を使用した兵士が30人いるグループと、15人しかいないグループとでは、30人のグループは15人が生き残り、15人のグループは全滅してしまうと考えます。

一方、刀を持った15人と、銃を持った15人が戦った場合は、銃のほうが刀よりも武器性能が高いため、刀側が全滅すると考えられます。

計算式で表すと

「戦闘力= 武器効率(質)×兵力数」

となります。

第二法則

「第二法則」は、またの名を「集中効果の法則」といいます。これは、1対1の一騎打ちではなく、1人で複数の相手を同時に攻撃できる、またはある集団が同時に複数の相手に攻撃できる場合のもので、広範囲で戦う広域戦と遠方から戦う遠隔戦をイメージしています。

計算式で表すと

「戦闘力= 武器効率(質)×兵力数の2乗」

となり、兵士の数が多いほうが圧倒的に有利です。

  • BtoBビジネスに

    「ランチェスターの法則」には、「第一法則」と「第二法則」があります

ランチェスターの法則を活用したビジネス戦略

現代ではビジネス戦略として応用されている「ランチェスターの法則」。ここでは、強者と呼ばれるマーケットシェア1位の戦略と、弱者と呼ばれる1位以外の企業が取るべき戦略についてみていきます。

強者の戦略

強者である大企業が取るべき戦略は、「第二法則」です。大企業には、中小企業にはない豊かな経営資源やブランド力(ネームバリューや信頼など)があります。これらを生かした戦術を取ることで、中小企業とさらに差をつけることができます。

この強者の戦略のことを「ミート戦略」と呼びます。ミートとは、マーケット1位の企業に倣って追随する企業のことを指しており、弱者が基本戦略として取っている差別化戦略を封じ込める戦略です。

弱者の戦略

一方で、弱者である中小企業が取るべき戦略は、「第一法則」です。ランチェスターの第一法則の定義は、戦闘力= 武器効率(質)×兵力数ですが、多くの資金や社員のいる大企業には量では到底かなわないため、中小企業は質を高めるほうに注力するべきと考えられます。押さえておくべき基本戦略は、強者との差別化です。

戦略を立てるためのポイント

「ランチェスターの法則」の「第一法則」と「第二法則」をうまく活用するには、市場での自社の立ち位置を明確にし、どこを目指すべきかを考えることが大切です。

そこで役に立つのが、「マーケットシェア理論」です。マーケットシェア理論では、市場で目指すべきシェア率の目安が示されています。戦略を立てる際は、下記を参考にして考えてみましょう。

  • 上限目標値…73.9%(市場を独占している状態)
  • 安定目標値…41.7%(安定した地位を獲得した状態)
  • 下限目標値…26.1%(業界トップであるための最低ライン)
  • 上位目標値…19.3%(複数の企業が同じレベルで競っている状態)
  • 影響目標値…10.9%(市場に影響力を持つようになる位置)
  • 存在目標値…6.8%(競合に認知されているものの影響力はない)
  • 拠点目標値…2.8%(競合に認められるには程遠いが、新規参入時にまず目指すべき位置)
  • ランチェスター

    自社の目指すべき場所を明確にしよう

ランチェスターの法則を活用してビジネス戦略を立てよう

「ランチェスターの法則」は、元々軍事戦略から見つけられた法則でしたが、現在ではビジネスに応用したものが体系化され、多くの企業が経営戦略として利用するようになりました。「ランチェスターの法則」を使用して戦略を立てるにあたって大切なことは、自社の立ち位置を明確にしたうえでどこを目指すべきかを考えることです。

マーケットシェア理論を利用して自社の立場を見極め、ランチェスターの法則の「第一法則」もしくは「第二法則」をうまく生かして戦略を立ててみてはいかがでしょうか。