サービスブループリントとは、顧客の視点でサービスの提供プロセスを一覧にした、いわば業務フローの設計図。近年、サービスの内容は多岐にわたっており、サービスブループリントのように事業を俯瞰してみることのできるツールは注目を集めています。

そこでこの記事では、サービスブループリントの目的や導入することでのメリットなどをご紹介。サービスブループリント作成の手順なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

  • サービスブループリントとは

    サービスブループリントの意味を理解しましょう

サービスブループリントとは

サービスブループリントについて説明する前に、まずは「ブループリント」の意味を押さえておきましょう。ブループリントは「青写真」と訳されます。青写真は印刷技術のひとつを指し、設計図に多く用いられることから、設計図やおおよその計画のことを指します。

つまりサービスブループリントとは、「サービスを可視化した設計図」ということ。顧客がサービスを受ける際にどのような体験をするのかを、業務フローと照らし合わせながら時系列で表し、一覧にしたもののことです。

サービスブループリントの目的とは

サービスブループリントの目的とは、シンプルにいえば業務フローを改善して顧客満足を高めることにあります。ここで重要となるポイントが、「UX(User Experience)」。UXとは顧客が商品やサービスを通して得られる体験とのことです。その体験によっておこる心情の変化や頭に残る記憶、印象なども含めてUXと表されます。

サービスブループリントは業務フローを可視化したツールですが、顧客の視点で可視化されている点が特徴です。つまり、顧客の立場から商品やサービスを検証することで、UXを高めていくことがサービスブループリントの目的となります。

サービスブループリントの例とは

【レストランの場合】
レストランを例に考えてみましょう。レストランに入店した客が席につくまでの間。ここにも「店員が席へ案内する」「順番待ちのリストを用意する」などの業務フローが考えられます。サービスブループリントには、顧客が入店した瞬間からの顧客の行動と、店の業務フローを時系列に書き出していきます。

その後も席についてから店員が注文を取りにくるまでの時間、料理が届くまでの時間など、常に顧客の視点でサービスの全容を可視化します。UXを高めるためには、顧客が入店してから、料理を食べ、支払いをして退店するまでの業務フローをいかにスムーズに行うかが決め手となります。

【ECサイトの場合】
サービスブループリントが活用されるのは実店舗に限りません。ECサイトでのショッピングにも活用できます。例えば「加湿器が欲しい」という顧客がいたとします。ECサイトが目指すのはその顧客が目的の加湿器ページへたどり着き、無事に購入することです。また「加湿器」という明確な目当てがなくても「最近、乾燥が気になる」というニーズのある顧客が、商品を検索するなかで加湿器にたどり着き、購入することもあります。

顧客がこのように商品を検索して支払いをする際に、ストレスなくスムーズに顧客の行動を促すことができるようにするのも、サービスブループリントの目的だといえます。

  • サービスブループリントのメリット3つ

    サービスブループリントはUXの向上に役立ちます

サービスブループリントのメリットとは

サービスブループリントを作成することで得られるメリットを、大きく3つにまとめました。

1.課題を発見しやすい

サービスブループリントでサービスの全容を可視化することは、課題を見つけやすくなるということです。繰り返しになりますが、サービスブループリントは顧客の視点で作成されます。つまりレストランの例では「待ち時間が長い」「おすすめメニューが分かりにくい」などの課題も可視化されます。レストランのホールスタッフとキッチンスタッフ、すべてのスタッフの業務フローを一覧にすることで、こうした課題が浮き彫りになり、改善点を見つけやすくなります。

2.サービスの無駄を減らす

「異なる店員が同じ質問をしている」「支払いページにたどり着くまでの確認ボタンがやたらと多い」など、サービスが重複している部分を洗いだすことができます。こうしたサービスの重複は、顧客もストレスを感じているはず。改善することでUXを高めることにつながります。

3.メンバー間で共有しやすい

サービスが多岐にわたる現在、1つの商品やサービスを提供することにも多くの部署が絡んでいます。例えばレストランで顧客が料理を待つ間、テーブルの上に置かれたチラシに興味を持つかもしれません。また注文用タブレットで広告を流せば、広告収入が得られるかもしれません。こうしたビジネスのチャンスを浮かび上がらせることも、メンバー間で共有されやすいサービスブループリントならではのメリットだといえるでしょう。

  • サービスブループリントとカスタマージャーニーマップとの違い

    サービスブループリントによって俯瞰して見ることができ課題が明確に

サービスブループリントとカスタマージャーニーマップの違いとは

サービスブループリントとよく似たツールに、カスタマージャーニーマップというものがあります。どちらも顧客の体験を可視化したツールですが、ここでその違いを整理しておきましょう。

サービスブループリント カスタマージャーニーマップ
定義 顧客が商品やサービスを利用するときの複数の業務フローを、時系列にして一覧にしたもの 顧客が商品やサービスを利用するときの行動や感情の変化を、具体的に追って一覧にしたもの
目的 業務フローの重複や滞りを発見して、改善する 顧客の体験を再現することで課題を見つける
焦点 業務フロー ペルソナに基づいた顧客の体験

サービスブループリントはサービス全体を俯瞰から見て、全体の業務フローの改善へ結びつけるもの。対してカスタマージャーニーマップはさらに顧客の視点に立ち、感情や思考の変化までを「ジャーニー(旅)」のように忠実に再現したものを指します。

どちらもUXを高めることが目的という点では同じですが、アプローチが異なることが分かるでしょう。

カスタマージャーニーマップではペルソナが重要

カスタマージャーニーマップでは、ペルソナが重要視されます。ペルソナとはターゲットの人格を表すもののことで、「30代女性」という簡潔なものではなく、一人のターゲットの人格を掘り下げて、職業や趣味、休日の過ごし方や愛読書など、細かく設定したもののことをいいます。

カスタマージャーニーマップでは、そのペルソナに基づいた顧客が、商品やサービスを利用するときにどのような行動を起こすか、そこにはどのような感情の変化が伴うのかを、やはり時系列にして一覧にしていきます。顧客の体験を忠実に、実感を伴うものとして再現することで、UX向上へとつなげます。

  • サービスブループリントを構成する要素

    カスタマージャーニーマップは目的は同じですがアプローチが異なります

サービスブループリント作成のポイントとは

それでは具体的に、サービスブループリントはどのような内容で構成されるのでしょうか。

基本的な項目は4つ

サービスブループリントは、基本的に以下の4つの項目から成り立ちます。これら4つがそれぞれに、時系列に可視化されていきます。

  • カスタマーアクション: 顧客の行動
  • フロントステージアクション: 顧客が直接目にすることになる、サービス提供者の行動
  • バックステージアクション: 顧客の目には見えていない、サービス提供者の行動
  • プロセス: 顧客と直接交わることはないが、サービスを提供する際に必要な行動(メニューや価格の設定など)

3本の線で立場を明確に分ける

上記の4つの項目は、3本の線で区切られています。これらを区切る線は「境界線」と言われ、以下のような明確な立場の違いがあります。

  • インタラクションの境界線(line of interaction)
    上記のカスタマーアクションとフロントステージアクションの間にある線。顧客の行動と、サービス提供者から顧客への直接的な行動を区別しています。

  • 可視境界線(line of visibility)
    フロントステージアクションとバックステージアクションの間にある線。この線によって、顧客の目に見える行動と、見えない行動とをわかりやすく区別しています。

  • 組織内のインタラクションの境界線(line of internal interaction)
    バックステージアクションとプロセスの間にある線。顧客へのサービスを担当するものと、顧客と直接的にやり取りしないものとを区別しています。

5つの補足要素

サービスブループリントでは、時系列による業務フローがどのように関わり合っているのかを、誰が見ても分かりやすくするための工夫が必要となります。そのために、以下のような要素を補足していきます。

  • 矢印: 要素間の関係、依存関係を表す
    一方向のやりとりを示す「→」や、合意の有無や共存関係を示す「⇔」などを使う
  • 時間: 時間経過とかかる時間に対する評価を表す
  • 規則や指針: システムの改善につながるような、変更可能な規則や指針を挙げる
  • 感情: 顧客とサービス提供者の感情を表現する
  • 指標: サービスを通じて顧客が達成したい目標(得たい状態)を明記する
  • サービスブループリント作成の手順

    サービスブループリンは補足して充実させていくことが大切

サービスブループリント作成の手順とは

サービスブループリントを作成する手順を簡単にご紹介します。上記に挙げた4つの項目、3本の境界線、5つの補足要素を押さえながらすすめましょう。

1.カスタマーアクションを作成する

顧客の行動を時系列に書き出していきます。カスタマージャーニーマップの「アクション」もこれにあたります。

2.フロントステージアクションを作成する

次に、顧客が目にすることになるサービス提供者の行動を書き出していきます。

3.バックステージアクションを作成する

次に、顧客の目には入らない、バックステージにおける行動を書き出します。

4.上記のプロセスを照合する

1~3のプロセスはそれぞれ、顧客の行動に沿うように時系列に書き出されています。互いの関連性が分かるように、情報を補足していきます。

5.5つの要素を補足する

時系列にまとまったら、それらを検証し、改善ポイントを補足していきます。

  • サービスブループリントを活用して現場の業務を改善しよう

    サービスブループリントの作成は難しいものではありません

サービスブループリントは業務フロー改善に役立つツール

サービスブループリントについて紹介してきました。作成に当たっては、顧客の視点に立つことが基本です。具体的にどのような行動がとられ、そこにどのようなサービスが提供されているかが可視化され、俯瞰して見ることができるのがサービスブループリント。一覧にすることで課題を見つけやすく、その課題も共有しやすいというメリットがあります。

サービスブループリントはレストランなどの実店舗に限らず、ECサイト上でも役立つとされるツールです。ビジネスパーソンとして、ぜひその内容を理解しておきましょう。