2001年に放映された特撮テレビドラマ『ウルトラマンコスモス』が、今年で20周年を迎えた。
日本映画界における特撮(特殊撮影)の第一人者として、数々の戦記映画や『ゴジラ』(1954年)などの東宝特撮映画で活躍した「特撮の神様」と呼ばれる特技監督・円谷英二氏(1901~1970年)は、1963年に円谷プロダクションを創設して『ウルトラQ』(1966年)『ウルトラマン』(1966年)『ウルトラセブン』(1967年)をはじめとする数々の特撮テレビシリーズを世に送り出した。『ウルトラマンコスモス』は、円谷英二氏の生誕100年とウルトラマン誕生35周年にあたる2001年に製作されたウルトラマンシリーズである。
杉浦太陽(すぎうら・たいよう)。俳優。1981年生まれ、大阪府出身。1998年のテレビドラマ『おそるべしっっ!!!音無可憐さん』でデビュー後、2001年『ウルトラマンコスモス』で主役の春野ムサシを演じ、子どもたちのヒーローとなる。その後、NHKドラマ『てるてる家族』(2003年)『ゲゲゲの女房』(2010年)をはじめ、数々のテレビドラマ・映画・バラエティ番組で活躍。NHK Eテレ『趣味の園芸 やさいの時間』、BS日テレ『旬感レシピ』、TOKYO FM『TOKYOこどもTIMES』、などにレギュラー出演中。2007年に元モーニング娘。の辻希美さんと結婚して4児のパパ。「理想の夫婦」「イクメン」ランキングの常連でもある。
市瀬秀和(いちのせ・ひでかず)。俳優。1975年生まれ、山梨県出身。市川雷蔵丈に憧れて俳優を目指す。NHK大河ドラマ「葵 徳川三代」(2000年)や『ウルトラマンコスモス』(2001年)(フブキ隊員役)で注目を集め、さまざまな映画、ドラマ、舞台で活躍。特に刀道(七段・師範)、空手弐段の腕前を活かした凄みのある殺陣、アクションを得意としている。アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!』(2006年)獄寺隼人役など、声優を務めた作品も多く、また近年はスーパー歌舞伎IIへの出演や殺陣師としても活躍している。
『ウルトラマンコスモス』には、大自然が遣わした猛威であったり、宇宙からの闖入者だったり、さまざまな理由で地球上に出現する「巨大怪獣」に対し、人間側の都合で一方的に排斥するのではなく、積極的に「保護・共存」を試みる設定が与えられた。
主人公・春野ムサシ(演:杉浦太陽)は人間と怪獣が平和に共存できる日が来ると信じ、どんな困難な状況にあっても優しさを忘れない青年。そしてムサシが入隊した特捜チーム「TEAM EYES」は、たとえ凶暴な性質の怪獣であっても武器による攻撃を極力行わず、基本的に「調査」と「保護」を優先する。
TEAM EYESのフブキ隊員(演:市瀬秀和)は元防衛軍のパイロットで、当初は怪獣に対しても攻撃的な姿勢を取ってムサシとぶつかることが多々あったが、行動を共にするうちに意気投合。ヒウラキャップ(演:嶋大輔)の命名による「春風コンビ」として活躍を見せた。
怪獣保護という困難な目標を実現するべく努力を重ねる、ムサシと仲間たちの熱きドラマが視聴者の胸を打った『ウルトラマンコスモス』。その20周年を祝うべく、春野ムサシ役・杉浦太陽とフブキ隊員役・市瀬秀和の対談インタビューを行った。
20年前に青春を燃やして挑んだ特撮ヒーロー作品の撮影現場での思い出や、『コスモス』の持つ深いテーマについての感想、そして55年もの長い歴史を誇り、さらなる未来へ向かって発展していくであろう「ウルトラマンシリーズ」への憧れを熱く語ってくれた。
――スペシャルイベント「ウルトラマンコスモスナイト ~20th Anniversary 君にできるなにか~」(2021年8月27日開催)では、杉浦さんは『ウルトラマンサーガ』(2012年)、市瀬さんは『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(2003年)の役衣装で出演されました。当時のコスチュームを久々に着たときの感想はいかがでしたか。
市瀬:まだ着られたんだ……という感動がありました(笑)。もう18年にもなるというのに、体型が変わっていないことに我ながら驚きましたね。
杉浦:この衣装、WEB配信の『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』(2016年)でも着ていたんですが、そのときすでに胸が厚くなっていて、チャックが首まで締まらなかったんです。そして今、着てみるともっと締まらない。こっちは、人って成長するんだなあって思いました(笑)。
市瀬:筋トレしすぎなんだよ(笑)。
杉浦:体脂肪率は当時よりも減っているんですけど、体重は20年の間に12~13kgくらい増えていますからね。
――『ウルトラマンコスモス』が20周年を迎えた記念イベントが開催されました。
杉浦:20年前『コスモス』を観てくれていた子どもたちが大人に成長し、仕事の現場でご一緒する機会が多くあります。「子どものころ観てました」ってよく声をかけられるんですが、そんなとき「僕たちが作ってきた作品が、みんなの心の中に残っているんだなあ」と感慨深い気持ちになります。
市瀬:20周年を迎えたことで、こんなご褒美がもらえるなんて、ふつうに楽しいなと感じています(笑)。こういうイベントじゃないと、なかなかこの2人が会うこともないですから。
杉浦:放送が終わった直後はよく会ってたりしたけど、僕が結婚してからはあまり集まりにも出られなくなった。
市瀬:俺はメインの活動の場が舞台になったしね。
杉浦:舞台とか、声優をやってるんだよね。
市瀬:仕事での接点もなくなっていったよね。でも、久しぶりに会っても2人の距離感はぜんぜん変わらない。
杉浦:いつ会っても、すぐに当時の感覚に戻ることができるんです。
――20年前のムサシとフブキは初期のぶつかりあいを経て、とてもウマのあった名コンビぶりを発揮するようになっていきました。撮影現場でのお2人も、劇中と同じく相棒同士という感じだったのでしょうか。
杉浦:当時からいっしょにバスで帰ったりしていて、仲良かったんですよ。撮影が早い時間に終わったら、ちょっと食事に行こうかとか。
市瀬:シノブリーダー役の坂上香織さんと3人で、よく食事に行ったりしていました。
杉浦:僕らは役としてもチームワークがよかったのですが、役の裏というか、素でもこんなに仲がいいのかと驚かれるくらいでした。
――ずっと『ウルトラマンコスモス』のファンでした、という「かつての子どもたち」の中で、特に印象的な方がいたら教えてください。
杉浦:それはもう、濱田龍臣くん(『ウルトラマンジード』(2018年)朝倉リク役)ですね。彼が『怪物くん』(2010年/日本テレビ)に出演していたころ、バラエティ番組『VS嵐』(フジテレビ)で一緒になったことがあって、リハーサルのとき「ぼくウルトラマンコスモス観てました!」って目を輝かせながら言ってきたんです。そんな龍臣が、数年後すっかりデカくなって、ウルトラマンになってる!?ってビックリしましたから(笑)。『コスモス』をテレビで観ていた子が、成長してウルトラマンになるというのは、かなりの衝撃でした。
市瀬:へえ~。
杉浦:でも、よーく聞いたらコスモスじゃなくて、ウルトラマンジャスティスが好きなんだって……。
市瀬:俺もけっこうジャスティス派だよ(笑)。
杉浦:ジャスティスかいっ!って、大人になってからツッコんだ(笑)。
市瀬:僕はいま(舞台の)現場で若い子たちに殺陣の指導をすることが多いんです。そうして初日を迎え、公演を重ねて千秋楽を迎えるタイミングになったとき「先生、ちょっといいですか」って彼らに呼ばれて楽屋へ行くと、いきなり『ウルトラマンコスモス』のエンディングテーマ「ウルトラマンコスモス~君にできるなにか」をみんなで合唱し始めた。
杉浦:わぁ、感動するなあ。
市瀬:いきなりですから、まあ君たち落ち着きなさいと(笑)。それで話を聞くと「僕たちみんなコスモス世代だったので、市瀬先生に初めて会ったときから『コスモス』観てましたって言いたかったんですけど、なかなか言えませんでした」て言うわけなんです。もう1か月くらい稽古してるってのに(笑)。最後になって、歌で歓迎されちゃって。ちょっとこっ恥ずかしかったですけどね。
杉浦:うれしいじゃないですか。
――若い方たちがそうして杉浦さんや市瀬さんに会って感激されるのも、お2人が20年前の若々しいイメージを保たれているからではないでしょうか。
市瀬:『コスモス』が終わってからも、わりと後ろを向いていない気はします。常に前を向いて、次行こう、次行こうと思う、気持ちは若いと思っています。
杉浦:僕の場合、落ち込んだときや悩んだときにはいつも『コスモス』の総集編「ムサシの青春」(スペシャルセレクション vol.2に収録)を観ることにしているんです。がむしゃらにやっていたころの自分の姿を見ると、勇気をもらえるんです。「よし、一から頑張ろう!」という気持ちになります(笑)。