ゴミを全然分別しない会社は、だいたい6年以内に潰れる

――滝沢さんが仕事をしてきた9年間の中で、一番変わったゴミ事情ってどんなことですか?

滝沢:断然、ペットボトルです。(お茶のペットボトルを手に取りながら)ペットボトルなんか、これを出せばいいわけじゃないですか?でもその理屈をわかっていないというか、ラベルを剥がしていないとかキャップを取っていないことがほとんどだったんですけど、シャンプーの容器やキッチン漂白剤の容器とかを全部、ペットボトルだと思って出してるんですよね。あとは卵のパック、弁当の容器とか。TENGAみたいなものもよく入ってましたもん。

  • 終始楽しくゴミのことについて語ってくれた滝沢。最新刊も知らないことだらけで興味深い内容になっている

――それはちょっと嫌ですね(笑)。

滝沢:最近見なくなりましたけど。本人の中では分別してるんでしょうけどね。9年前なんかもっとひどかったですから、ペットボトル1つにしても、周知をするのにこれだけ時間がかかるんですよ。ず~っと地道に、「ラベルを剥がしてください」「キャップを外してください」って言ってきて、それでもこれだけ時間がかかるんです。やっぱり、リサイクルってすごく時間がかかるんですよね。もちろん、変わってる地域と変わってない地域はありますけど。人がラベルを剥がせば自分も剥がすし、剥がしてなかったら剥がさない人が増えたりとか、ゴミって人に影響されるので、やっぱり地域によって全然違いますね。

――集積所がなくなって、家庭への戸別回収を導入したらゴミが減ったという、「集積所をやめたらゴミが減った?」というエピソードも本に載ってますね。

滝沢:ちゃんと分別しないと家の前から持って行ってくれないので、ちゃんと分別するようになるんですよね。東京以外で多いのは、名前を書いてないと持っていってくれないというところも結構あるんですよ。それはまあ、プライバシーに関わってくるので僕はどうなのかなって思いますけどね。でも、そうすれば分別はちゃんとするはずなんですよ。

――この本の中で、滝沢さんが一番紹介したいお話を1つ挙げてもらうとしたら、どれですか?

滝沢:千葉県市川市の「24時間生ゴミボックス」です。これは、全国で取り入れてほしいですね。ゴミって、紙を抜かしてプラスチックを可燃ゴミから抜けば1/3ぐらい減るんですよ。ただ、次にぶつかるのが生ゴミなんです。生ゴミを24時間いつでも捨てられるとしたら、意外とゴミってでないんですよね。それ以外は、例えばおむつとか、いろいろ分別したけどこれは燃やすしかないという「燃やすしかないゴミ」という状態になると思うんですよね。だから僕はコンポスト(微生物の力で生ごみを分解して堆肥にする)みたいなことをやってみたりしているんですけど、それを家庭でやるのを強制するわけにもいかないじゃないですか?でも、自治体が「生ゴミをいつでもここで回収するから持ってきてください」ってやれば、結構ゴミは減ると思うんです。しかも、そのゴミを有効活用するということなので、良い取り組みだと思うので広がってほしいですね。

――可燃ゴミを捨てそびれてしまうときもあるので、24時間出しに行けるのはありがたいです。

滝沢:夏は腐ったりしますからね。ゴミ清掃員としても、生ゴミがなければゴミ汁が生まれなかったりするので。焼却にしても、あれって火で燃やすから、水は大敵なんですよ。そうするとまたエネルギーを足さないといけないし、税金を使うことになるんです。それを考えると、良い取り組みだと思います。ゴミ清掃員も助かるし、無駄な税金も使わなくて済むので。

――オフィスワークだと、デスクごとに個別の小さいゴミ箱があってみんなそこに捨てると思うんですけど、そういうときに気を付けてほしいことなど、アドバイスはありますか?

滝沢:アドバイスというよりは、ゴミってその人自身を表すと思います。ゴミって思ったらみんな無茶苦茶な捨て方をしたりするんですよね。やっぱり、誰かが回収するって考えてもらえると、どういうゴミの出し方をしたらいいのかなって自分なりにわかると思います。ゴミって、人が見ていないところで自分がどうありたいのかが問われるものだと思うんですよ。「自分が捨てた後はどうでもいい」ってなる人は、結構仕事でもそういう影響を与えると思います(笑)。僕もちょっと会社のゴミを回収したりするんですけど、全然分別しない会社とか結構あるんです。そうするとだいたい6年以内に潰れるんですよ。これは「あそこのあのゴミなくなってるな」って6年目のときに気付いたんですけど。要は、ゴミだからって適当に、誰が回収するかも考えずに捨てる、「あとはお前らの仕事だろ」ってわざと汚くしているような会社は、何か他のところでほころびが絶対出てくるので。そこらへんは配慮してやった方がいいと思います。例えば、コロナのことが今よりよくわかってなかった頃、自分の家にマスクを入れたくなくて、マスクを集積所に捨てていく人が結構いたんですよ。集積所をゴミ箱みたいに考えて、誰かが回収してくれると思ってるんですよね。そこの先に回収する誰かがいるっていうことを考えるのって、その人の人間形成にとっても大切なことだと思うんです。ゴミだから誰かが捨てればいいっていうことではなくて、そこに配慮することが他のことにも影響を与えると思います。

プロフェッショナルの仲間を増やして、よりよい社会に

――滝沢さんはお子さんもいらっしゃいますが、ゴミ分別のことは教育にも活かされていますか?

滝沢:いや、とくに何かやってるということはないですね。「これをやりなさい」とか言ってもやらなかったりするので。だけど、親が楽しんでゴミを分別していると、「何やってるの」って、真似したがるというか。うちの下の子は、「これ、古紙?」って言いますから(笑)。

――古紙という言葉を覚えているんですか(笑)。

滝沢:そうなんですよ。「これ雑紙?」とかも聞いてきます。雑紙って集めるとまた紙に生まれ変わるんですけど、それを5歳の娘は知ってますね。

――そうやって自然に覚えてくれたらうれしいですよね。滝沢さんがこうして本を出している理由である「共通認識を作りたい」というのは、広がっている実感はありますか。

滝沢:本当にゴミを少なくしたいですし、共通認識を作りたいというのはもちろんなんですけど、そういう志を同じくする人たちが集まってくるんですよね。なので、やっぱり言い続けていかなければいけないなと思っています。結局、1人でやろうとしても物事って続かないんですよね。なので、ドラクエみたいに仲間を集めてやっているんです。ゴミの中でも、お互いのプロフェッショナルな部分が違うんですよね。自分が足りないところを補ってもらったりとか、教えてもらったり教えたり、あと僕は芸能活動をしているので、「今こういうことで困っています」とか言えるじゃないですか?それが僕の得意技だったりするので、そういう仲間を増やして、よりよい社会にできたらいいなと思っています。

――この本もその活動のための1つとしてあるわけですね。とくにどんな人に読んでもらいたいですか?

滝沢:この本はやっぱり、自治体の方々に読んでもらいたいですね。たぶん、知らないこともあると思いますし、そこで評判が良かったらまたみんな読んでくれると思うので(笑)。よろしくお願いします!

  • 最新刊『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』