マーケティングと営業は似たようなイメージを持たれることがありますが、それぞれの役割には違いがあります。具体的には、掲げる目標、対象とする「顧客」、重視されるスキルなどに違いが見られます。

会社の業績を伸ばすには、お互いを理解して上手に連携することが必要です。今回はマーケティングと営業の役割の違い、協力するために必要なことについて解説します。

  • マーケティングと営業の違いは?

マーケティングと営業、それぞれの仕事内容とは?

そもそも会社においてマーケティングと営業は、どのような役割を担っているのか見ていきましょう。

1.マーケティングの基本的な仕事内容

マーケティングの主な役割は、売れる仕組みを構築することです。市場や顧客のニーズを把握し、ニーズを満たすように自社製品・サービスをうまく結び付てさまざまなプロモーションを実施します。

マーケティングは仕組みづくりがメインであるため、マーケティングが終わった段階ではまだ何も売れていません。

2.営業の基本的な仕事内容

営業は目の前の顧客に対して製品・サービスを販売するのが主なミッションです。マーケティングで構築した仕組みを利用しながら顧客と商談を行い、製品・サービスの魅力やメリットを伝えて説得します。

食品や日用品といった一部のB to Cの分野では、基本的に消費者に直接販売することはありませんが、スーパー・コンビニ・ドラッグストアといった小売業が顧客となり、商談をすることになります。

マーケティングと営業の違い5つ

先述の仕事内容をもう少し深堀して、両者の違いについてさらに見ていきましょう。

1.「顧客」の違い

マーケティングは潜在顧客の特定、ニーズの把握、プロモーションがメインです。これに対し、営業は実際に目の前にいる顧客に対して製品・サービスの販売を行います。

マーケティングは潜在顧客にどうアプローチするかが重要なのに対し、営業は実際の顧客をどう説得するかが重要となります。

2.目標の違い

マーケティングの主な目標は、見込み客を顧客にすること、実際の顧客との関係を良好に保つことです。WEBサイトのアクセス数などの目標が定められることもありますが、通常は売上や利益などの数値目標は定められません。顧客との信頼関係を構築することにより、成約に結び付きやすくすることが重視されます。

これに対して営業部門では、売上目標が明確に定められています。四半期・半期・年間といったタームごとに目標達成をしたのか問われます。

3.顧客と関わる期間の違い

マーケティングは顧客との良い関係を構築することを重視します。短期間で関係が構築できることはなく、顧客となった後も関係を良好に保つ施策が必要になるので、顧客に関わる期間は長くなります。

営業は会社や部署の方針にもよりますが、なるべく効率よく成約に結び付けるために、商談にかける期間はあまり長くないほうが望ましいと考える傾向です。

4.重視されるスキルの違い

マーケティングはデータの分析力、市場に対する客観的な視点が重要です。消費者の行動や考えを把握しターゲット層に響くマーケティング施策を打つためには、自社の事情にとらわれた目線ではなく、客観的な目線が必要です。

マーケティングはデジタル化が進行しており、WEBサイトやSNSなどを利用した施策が増えています。デジタルマーケティングは結果がデータで測定できるため、データを分析しながら現状を把握するスキルがますます重要になっています。

これに対して営業では、交渉力や説明力が重要です。顧客はもちろん、社内の他部署と関わることも多く、コミュニケーションをうまく取りながら仕事を動かしていくことが求められます。

また商談は一筋縄ではいかないことも多く、交渉がうまくいかず失注してしまうこともあります。うまくいかない度に落ち込んでいては負のスパイラルに入るだけなので、メンタルの強さや良い意味での鈍感力、楽観的な考えを持つことも必要です。

5.利用するツールの違い

マーケティングではMA(マーケティング・オートメーション)が使われることが増えています。見込み客の獲得や育成、成約率の高い顧客のリスト化、マーケティング活動のコスト・成果の分析などができます。

またデジタル化が進んでいるため、アクセス解析ツールやBIツールの利用も増えています。BIツールとは莫大なデータから必要なデータを抽出し、グラフや表で分かりやすく見せるツールです。ビッグデータの分析・活用のため、注目が高まっています。

営業でよく利用されるのはSFA(営業活動支援システム)です。SFAでは個々の案件管理、案件シナリオの設定、商談やスケジュールの管理などが効率的にできます。

SFAは営業活動を可視化・効率化し、勘や経験に頼らない活動をするのに役立ちます。

マーケティング部門と営業部門が対立を避けてうまく協力するには?

  • マーケティングと営業、それぞれが協力しあうコツは?

マーケティングと営業は密接な関連がありますが、対立してうまくいかなくなるケースもあります。上手に連携するために大切なポイントは下記のとおりです。

1.目標の違いを理解する

マーケティングはやや中長期的な目標、営業は短期的な目標を掲げることが多いです。相手の部門の目標も理解したうえで、どちらの目標も達成するためにはどうすればいいか、しっかりコミュニケーションを取ることが大切です。

また共通の目標を掲げることも、衝突を避ける方法として挙げられます。同じ目標を追求することで、成果を最大限に生むための協力体制を構築できます。ダッシュボードなどを使い、KPIをすぐに見られる状態を共有するのも有効です。

2.必要な情報を上手に共有する

有益な情報を、マーケティング・営業で共有して活用することも大切です。たとえば成約率の高い顧客リストや顧客像を営業と共有することで、営業活動が効率的になります。

営業が成約できたケースとできなかったケース、その理由をマーケティングにフィードバックすることで、施策を改善するのに役立ちます。

3.ツールを共通化する

前述したようにマーケティングはMA、営業はSFAなど、使っているツールがバラバラなケースも多いです。使っているツールや環境が違うと、言語も共通化しづらく、共通の目標の構築や共有化も難しくなることがあります。

マーケティング・営業それぞれが求める機能のある、統合されたツールを使うのも有効です。たとえばERPは社内の業務システムを一元管理するツールで、営業・マーケティング・会計・人事などを同一のツールで管理できます。

マーケティングと営業がうまく連携できると相乗効果が生まれる

マーケティングがうまく機能すると、営業効率が向上するため、多くの工数をかけなくても成約しやすくなります。営業が現場での顧客の反応などをマーケティングにフィードバックすることで、マーケティング施策の精度が向上します。

具体的には、営業現場で対面する顧客は、マーケティングにて設定したペルソナやカスタマージャーニーの検証にも役立ちますし、顧客の生の声は新たなニーズの発見につながる場合もあります。

また、プロモーション施策は、営業販売においてセールストークや店頭展開などに使用することで、購買決定の後押しをすることも可能です。

このようにマーケティングと営業が上手に連携できると、相乗効果によってさらに成果が生まれやすくなります。連携することのメリットをしっかり提示することで、対立しがちな部門も歩み寄りやすくなるでしょう。