「代休」と「振休」という2つの言葉にはどのような違いがあるのか、みなさんおわかりでしょうか。会社員の方であれば日常的によく耳にする言葉ですが、どちらの休みを取るかによって、運用方法だけでなくお給料の値段までもが変わってきます。

本記事では、知ってるようで知らない両者の違いや、正しい運用方法について詳しくご説明します。

  • 会社の就業規則に規定されている「代休」と「振休」とは?

    「代休」と「振休」の違いや正しい運用方法をご紹介します

「代休」と「振休」の意味

会社の就業規則にも載っている「代休」や「振休」という言葉は、会社員であれば誰しも聞いたことのある言葉だと思います。どちらも「休」という文字がついているので、休みであることに変わりないのですが、実際に労務管理をしている人以外で違いをきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。

ここでは、「代休」と「振休」、それぞれどういった違いがあるのか、また「有休」とは何が違うのかを詳しくご紹介していきます。

「代休」とは

まず「代休」とは、休日労働を行った際、その代わりとしてその日以降の労働日を休みにできる制度のことをいいます。振り替える日程があらかじめ決められておらず、労働者には休日労働分の割増賃金が支払われます。

休日労働と聞くと、土曜日や日曜日に出社して働くといったイメージが強いかもしれません、しかし実際には土曜日や日曜日だけでなく平日であっても、「休みとされていた日に出社する」ようであれば休日労働の扱いとなります。

「振休」とは

一方の「振休」とは「振替休日」の略称で、あらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、その代わりに他の労働日が休日となるよう振り替えることをとをいいます。

「振替休日」を用いた場合は休日に働いたとしても、休日労働とはみなされず、平日に働いた分の給料しか支払われません。考え方としては、休日の休みと、平日の勤務日をそのまま入れ替えたというかたちです。

なお、休日に振替を行う場合は、就業規則等に休日振替を行う旨の定めが必要になります。

「有休」とは

休日関連でもう一つよく聞く言葉が「有休」です。「年次有給休暇」の略語である「有休」とは、労働基準法によって定められた労働者の権利の一つで、「同事業主に半年間継続して雇われていること」と「全労働日のうち80%以上出勤していること」という2つの要件を満たしている場合に付与される休みのことをいいます。

「有休」を取得して休んでも、通常に働いているときと同じ給料が支払われます。「代休」にせよ「振休」にせよ、休んでいる日には賃金が支払われない点において大きな違いがあります。

  • 会社の就業規則に規定されている「代休」と「振休」とは?

    「代休」と「振休」の違いをしっかり理解しよう

「代休」と「振休」の違い

ここからは「代休」と「振休」の違いについて具体的にみていきましょう。両者は「代替休日が決まるタイミング」と「賃金計算方法」に違いがあります。

代替休日が決まるタイミング

【振休は事前に休日が決まる】

振休はあらかじめ決まっていた休日と労働日を入れ替えるため、従業員は必然的に休日労働をする日とその代替日としての休日を事前に知ることになります。この際、従業員には少なくとも休日出勤の前日までに知らせる必要があります。

【代休は事後に休日が決まる】

一方の代休は、休日労働の振り替えにあたる休日があらかじめ決められていません。この場合、休日に働いた分は単なる労働扱いではなく、休日労働扱いとなります。

つまり、代休は労働日でない休日に従業員を出勤させていることになるため、会社側は割増賃金を支払う必要があるのです。

割増賃金の計算方法

続いて「振替休日」と「代休」を利用した際に労働日にもらえる賃金の計算方法を具体的にみていきましょう。

もう一度確認しておくと、休日労働分の割増賃金がもらえるのが「代休」、通常通りの賃金となるのが「振休」です。

【「代休」の割増賃金の算出方法】

「代休」を利用して休日労働をした従業員に支払われるべき賃金は、労働基準法によって細かく決められています。休日労働を行った際の割増賃金は、法定休日であった場合は35%。法定外休日では労働時間が一日8時間、1週間に40時間を超える場合は25%の割増が必要です。

すなわち、通常1時間あたり1,000円の時給を払っている場合は、割増賃金として1,350円を支払うという計算になります。

【「振休」の割増賃金の算出方法】

基本的には、通常の勤務時と同じ賃金が支払われる「振休」ですが、条件によって割増賃金がもらえるケースもあります。その条件とは、週を越えて振替が行われる場合です。

例えば、一日の所定労働時間が8時間の会社の場合は、休日労働によって週6日の勤務となれば、週48時間労働となるため、労働基準法によって義務付けられている「1週間に40時間を超える勤務に対する時間外手当てとして、通常賃金に対する25%の割増」が必要になってきます。

  • 「振替休日」と「代休」の賃金計算方法の違い

    「振替休日」か「代休」で、賃金の値段が変わります

正しい「代休」運用のため、就業規則をチェックしよう

続いて「代休」の正しい運用方法について詳しくご紹介します。

「代休」の取得期限

「代休」は「休日労働をした後に取得できる休み」と説明しましたが、休日労働をしたら、休みをいつまでに取らなければいけないのか疑問になってくるでしょう。一見、とても大事なことのように思える期日ですが、実は労働基準法では「代休」の取得期限は明確に指定されていないのが現状です。

とはいえ、会社側で勤怠管理をする際にいつまでも社員の代休が未消化のままであると、ずっとその休みのことを覚えておかなければいけない労務側の負担になりかねません。

そのような事情もあり、「代休」の取得時期について独自の就業規則を定め、その規定に従って1カ月以内としている企業が多いようです。

欠勤日の「代休」扱いの可否

続いて、欠勤日や残業時間の超過を「代休」として処理できるかどうかについて解説します。

まず、欠勤日を「代休」として処理することは可能です。ただし、就業規則等に規定されていたり、会社と労働者との間で合意が得られていたりするケースに限られます。

さらに、残業時間が長時間となった場合に「代休」を取ることも可能です。しかし、この場合に気をつけなくてはいけないのは、残業をしたことに代わりないので、企業側は時間外労働分の割増賃金分を支払わなければならないという点です。

いずれにしても、就業規則等のルールに従って、処理するされることになるので、あらかじめ就業規則等を確認しておきましょう。

管理職への「代休」の適用

管理職に「代休」が使えるのかどうかですが、結論から言うと「就業規則等の規定次第」となります。前述の通り、代休制度は法令に定めがないので、各社の就業規則等の定め次第です。

労働基準法上41条に該当する管理監督者については、労基法上の休日の規定は除外されていますが、安全配慮の観点から代休制度を設けている場合もあります。

  • 「代休」の正しい運用方法

    「代休」は欠勤や残業時間が長時間となった場合に取得することもできますが、注意しなければいけない点もあります

「代休」関連で労働基準法違反になるケースとは

詳細についてはあまり労働基準法に決められておらず、労働時間の調整のために自由に使用できる「代休」や「振替休日」ですが、運用ルールをしっかり守らないと、労働基準法違反となってしまうケースがあります。しっかりと確認しておきましょう。

「未消化の代休」が累積する

代休が長期間消化されず溜まってしまっているようだと、労働基準法違反となる可能性があります。取得期限が決められていないとはいえ、一定期間取得されないと、労働に対する対価がずっと支払われていない状況と同じになるからです。振替休日や代休は、速やかに消化してもらうようにしましょう。

  • 労働基準法違反になる場合

    「代休」を累積させると、労基法に抵触します

「代休」と「振休」を正しく運用しよう!

「代休」か「振休」かによって、休日労働に該当するのかしないのかといった違いがあるため、支払われる賃金にも差が出てきます。

両者の違いや特性をしっかりと把握したうえで、トラブルのない社会人生活を送るようにしましょう。