トヨタ自動車のハイブリッド専用車「アクア」がフルモデルチェンジして新型になった。初代は発売から10年が経過した今でも街で頻繁に見かけるヒットモデルだが、2代目アクアは人気をキープできるのだろうか。試乗して新型アクアの実力を確かめた。

  • トヨタの新型「アクア」

    ハイブリッド専用の5ナンバー車「アクア」がフルモデルチェンジ! 大幅進化を遂げた2代目に試乗した

「小さな上級車」に進化!

試乗したのは新型アクアの最上級車種である「Z」グレード。駆動方式は前輪駆動(FWD)で、車両価格は240万円だった。ちなみに、新型アクアに計4種類のグレードがあり、最も価格の安い「B」は198万円だ。試乗車は注文装備の偏平タイヤや合成皮革パッケージ、駐車支援のアドバンスドパークなど、40万円以上の装備を装着しており、総額は280万円を超えていた。

  • トヨタの新型「アクア」

    新型「アクア」のグレード構成は価格の安い順に「B」「X」「G」「Z」の4種類。各グレードで前輪駆動とE-Four(4WD)が選べる。価格は198万円~259.8万円だ(写真は試乗した「Z」のFWD、ボディカラーはブラスゴールドメタリック)

写真で見た限り、前型と新型の外観は似た印象があったのだが、実車と対面してみると造形がかなり上質になっていた。前型が「5ナンバーの手ごろなハイブリッド車(HV)」としての合理性を伝えてきたのに対し、新型は「5ナンバーでも小さな上級車」と感じさせるほど、手の込んだ造形で美しかった。

  • トヨタの初代「アクア」
  • トヨタの新型「アクア」
  • 左が初代「アクア」(2011年12月に発売のモデル)、右が新型「アクア」

室内は情報時代を反映し、大型の画面がダッシュボードの中央に設置されている。ダッシュボード自体も凝った造形だし、ハンドルのスポークも手が込んでいる。

  • トヨタの新型「アクア」

    大画面のインフォメーションディスプレイが目を引くインテリア

座席は十分な大きさがあり、座った感触は少し柔らかく、体を優しく受け止めてくれる。それでいて、走り出した後の体の支えはしっかりしている。1時間ほどの運転で姿勢が崩れることはなく、腰などに疲れを覚えることもなかった。

  • トヨタの新型「アクア」
  • トヨタの新型「アクア」
  • トヨタの新型「アクア」
  • 座席の大きさは十分。座り心地も上質で走行中のサポートもしっかりとしていた

走行中の室内は静かで、後席の座り心地もいい。体全体を受け止めてくれる寸法のゆとりがあり、足元も楽だ。ドアの開口や開口部と後席の位置関係もよく、乗り降りしやすい。前型の後席もちゃんと乗れたが、やや窮屈な印象があった。新型は後席の快適性に優れ、窓も開放的で景色がよく見えて、外からの光がよく入って明るい雰囲気がある。

新型アクアの外観や内装、そして走行感覚は、一言でいえば「上質」という言葉に尽きる。老若男女を問わず満足できる5ナンバーHVといえるだろう。

  • トヨタの新型「アクア」

    上質な5ナンバーHVに進化した新型「アクア」

「快感ペダル」で運転が楽に

運転を始めて気づくのは、やはり静粛性の高さだ。理由は、新開発のニッケル水素バッテリーを搭載したことにより、モーター走行領域が増えたからだ。市街地から高速道路を含め、モーター走行状態であることを示す「EV」マークがメーター内に頻繁に表示されていた。

新開発の「バイポーラ型ニッケル水素バッテリー」とは、正極(+)と負極(-)の電極を背中合わせに組み合わせた新方式。正極と負極を別体とする従来の方式に比べると薄く作ることができるので、バッテリーケースが同じだと仮定した場合、従来の約2倍の能力を得ることができる。簡単にいえば、バッテリーのための余計なスペースを増やすことなく、容量の大きなバッテリーを搭載できたということだ。その分、電気をより利用しやすくなったのである。

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    新型「アクア」は1.5Lの直列3気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している

トヨタのハイブリッドシステムは初代「プリウス」以来、「シリーズ・パラレル式」といって、エンジンをモーターで補助しながら燃費を改善し、またエンジンで発電してバッテリーに充電できる2つの要素を備えたシステムだった。最大の目的は、ガソリンエンジンの燃費を2倍に高めることであり、そのためにモーターと発電機があった。

一方、日産自動車の「e-POWER」などは「シリーズ式」といって、ガソリンエンジンは発電にしか使わない。走行はモーターのみで行う。新型アクアは「e-POWER」のようにモーター走行部分を増やすことにより、燃費の向上はもちろんのこと、滑らかで静かな加速を獲得したのだ。

これにより、日産の電気自動車(EV)やe-POWERが特色としてきた「ワンペダル」による速度調節がアクアでも可能になった。アクセルペダルを踏めば加速するのは当然として、ペダルを戻していくとモーターが発電機に切り替わって回生が働き、適度な減速度が得られる。

  • トヨタの新型「アクア」

    ドライブモードスイッチで「POWER+」を選択すると、加速の力強さが増し、アクセルオフによる減速度も強まるので、アクセルペダルのみでの加減速の調整が容易になる。トヨタでは新型「アクア」に搭載した同機能を「快感ペダル」と呼ぶ(ドライブモードはシフトノブ左のスイッチで切り替える)

これまでのトヨタ・ハイブリッドシステムでも、シフトレバーを「D」から「B」へ切り替えれば、より強めの回生は得られた。また「D」のままでも、アクセルペダルを戻せば回生が働き、ニッケル水素バッテリーへの充電を行ったが、それはあくまでも充電が目的で、回生による強い減速は得られなかった。

ワンペダル走行についてトヨタは「走行の約40%」にいかせると説明している。ちなみに、e-POWERは「約70%」とされているが、その差はハイブリッドシステムの違いによる。

とはいえ、アクセルのワンペダル操作が積極的に使えるようになったので、新型アクアの運転は実に楽だった。ペダルの踏み替えというひとつの操作が減るだけで、これほど運転が快適になることを、もっと多くの人に知ってほしいと思う。

ただし、ワンペダル操作が使えるのは走行モードを「POWER+」にしているときだけ。「ECO」と「ノーマル」では利用できない。走行モードをそれぞれ試すと、燃費優先の「ECO」でも、市街地など日常的な利用では不足のない加速が得られた。ワンペダルでのアクセル操作が「ECO」モードでも使えれば、なおいいのだが……。

気になったのは、停止直前で回生が切れたときに、ブレーキペダルを踏むまでのわずかな間ではあったが、回生による減速が効かなくなったことにより、スッとクルマが前へ出て行ってしまうような感触になったことだ。日産の場合、EV「リーフ」とSUV「キックス」ではワンペダルで停止までできるし、停止まではできない新型「ノート」においても、制御の精度が高いと感じた。

  • トヨタの新型「アクア」

    「快感ペダル」では、アクセルから足を離してもクルマを停止させることはできない

スマホ連携にてこずる

注文装備ではあるが、自動駐車の機能も大変重宝した。作動のメインスイッチを押すと、カーナビゲーション画面に周辺の状況が映し出され、駐車箇所をタッチ操作で指定する。そして「開始」をタッチし、ブレーキペダルから足を離せば、あとは前進と後退を含め、すべて自動で駐車してくれる。手際よく、ぴたりと枠に収まる。駐車枠の線がない場所でも利用できる。

  • トヨタの新型「アクア」
  • トヨタの新型「アクア」
  • トヨタの新型「アクア」
  • 自動駐車(アドバンストパーク)機能は使いやすく、精度も抜群だった

「ヤリス」にも同様の機能はあるが、そちらは前進と後退は運転者が操作する必要があった。新型アクアでは、そこから一歩前進したことになる。モーター走行領域が増えた効果だろう。つまり、HVといえども、モーター走行領域が増えると、さまざまな機能を便利かつ容易に利用できるのだ。

最後にひとつ、気掛かりな点があった。

試乗車にはカーナビゲーションのソフトウェアが搭載されていなかったので、スマートフォンのアプリケーション(今回はApple CarPlay)を利用しなければならなかった。そのこと自体は、すでに輸入車などでも導入されている手法なので、合理的だと思う。カーナビが欲しい人は購入すればいいし、スマホで大丈夫だと思う人は購入しなければいい。

ところが今回の試乗では、イグニッションを入れてスマホを接続したにもかかわらず、アプリがすぐにたち上がらなかった。

広報車両の担当者に依頼して操作を代わってもらったのだが、それでもなかなか起動できず、出発するまでに15分ほどを要した。その間にアイドリングストップは終わって、無駄なガソリンを消費した。これまで、輸入車などでスマホのナビを何度も利用しているが、このような事態は経験したことがない。

  • トヨタの新型「アクア」

    10.5インチのディスプレイオーディオにスマホを連携させてナビを使おうと思ったのだが、スムーズに起動させられなかった。「設定」をいじると無事にApple CarPlayがたち上がり、その後は問題なくナビを使えたのだが、出鼻をくじかれたのは確かだ

トヨタは長年にわたり、カーナビの使い勝手では定評がある。「T-Connect」など早くから情報通信機能には力を入れてきたはずだ。だが、外部のスマホとの連携では後れをとっているのではないか。少なくとも、スマホを愛用する若い世代でさえ途方に暮れてしまうような状況は、即刻改善すべきだろう。

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