「私はビジネスマナーが身に付いています! 」―――と、胸を張れるビジネスパーソンがどれだけいるだろう? 日頃から訓練を受けていない限り、多くの人が「正直、ちょっと自信がない……」と思っているに違いない。

そこで注目したいのが、日本航空が新たにスタートさせた教育事業「JALビジネスキャリアサポート」で実施している「JALマナーレッスン」だ。客室乗務員の実務経験に基づいた講師派遣型のレッスンで、講師はなんと、本物の本物の客室乗務員が務めてくれるという。

ということで、マイナビニュースでもさっそくサービスを利用してみることに。今回は新人社員たちが、日本航空のチーフキャビンアテンダント、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さんにビジネスマナーのイロハを教わった。

「第一印象」は身だしなみ、表情、挨拶、立居振舞で決まる!

  • この日の講師は、日本航空のチーフキャビンアテンダント、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さん

    この日の講師は、日本航空のチーフキャビンアテンダント、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さん

ビジネスマナーで榎本さんが最重視しているのが「おもてなし」の心だ。おもてなしとは、「相手を思いやる気持ちを、相手に伝わるように表現すること」。おもてなしの気持ちを持てば、それがマナーとなって見た目や話し方にも反映されるのだという。

それを踏まえ、まずビジネスシーンで気を付けたいのが「第一印象」。大きく分けて、第一印象を決めるポイントは次の4つである。

(1)身だしなみ

(2)表情

(3)挨拶

(4)立居振舞

「第一印象は、視覚から入る情報が約5割だと言われています。次いで、話し方、声のトーンや大きさ、話すスピード、言葉遣いが4割。残念ながら、話の内容はわずか7%程度だそうです。第一印象は10秒以内で決まるとされていて、これは『メラビアンの法則』といって学術的にも論証されています」

第一印象の9割が視覚と聴覚の情報で決まる。これを念頭に置いたうえで、第一印象を良くするためのポイントを順に見ていこう。

身だしなみに大切なのは「清潔感」「控えめ」「調和」

まずは「身だしなみ」について。ここで意識したいことは「清潔感」「控えめ」「調和」の3つだ。

ちゃんと毎日シャワーを浴びていても、髪型が乱れていたり、ヒゲのケアを怠ったりしていては、客観的に「清潔」とは言えない。また、ビジネスの場でギラギラした派手な時計を着けるのもおすすめできない。「控えめ」と「調和」を意識し、悪目立ちしないよう心掛けよう。

企業の安心感、信頼感は、ひとりひとりが作り上げていると自覚することが大切だ。

ちなみに、身だしなみで気を付けるべきポイントは、

・服に汚れやシワがないこと。

・身体に合ったサイズの服を選ぶこと。

・派手なメイクは控えること。

・爪は長く伸ばさないこと。

・綺麗な靴を履くこと。

……など。

「身だしなみは無言の自己紹介です。特に今はマスク生活ですから、目元でしか表情を表せません。女性の場合、前髪はできるだけスッキリしたほうが表情もくっきり見えていいでしょう。男性ももちろん、清潔感のあるヘアスタイルを心掛けましょう」

マスク生活では「通常の2倍の笑顔」を心掛けるべし

続いては「表情」について。今はマスク生活で、ほとんど“目”しか露出していないが、目にもしっかりと表情はあらわれるようだ。

「飛行機では、300人のお客さまに対して客室乗務員が10人程度しかいません。機内は広いので、常にお客さまの近くにいられるわけではありませんが、そんなときも、アイコンタクトで『すぐに伺います』とお伝えしています。今は特にマスクがあるので、余計に目の表情は重要です」

当然、表情で最も大切なのは「笑顔」である。

「笑顔には、2種類あります。輝くような笑顔と、作り笑いです。ゆとりを持って仕事が楽しめれば、心から笑顔になれます。きっと、家族や友達と楽しい時間を過ごしているときも、心底から笑顔になっているでしょう。逆に、心に余裕がないときや、相手への関心が薄いときなどは、作り笑いになっているかもしれません」

  • どうにか「2倍の笑顔」を作ろうと奮闘する新人社員たち

    どうにか「2倍の笑顔」を作ろうと奮闘する新人社員たち

ちなみに、マスク姿で笑顔を作るときは、「通常の2倍の笑顔を心掛けるくらいがちょうどいい」のだとか。笑顔かどうかは「目尻が下がっているか」で判断されることが多く、目尻を下げるには頬の筋肉を上げるよう意識するといいようだ。

「笑顔はミラー効果で伝染して、自分もみんなもハッピーになります。ぜひ、頬の筋肉を持ち上げ、優しい眼差しを作ってみましょう」

挨拶は明るく。できれば「プラスアルファ」にも挑戦を

続いては「挨拶」。第一印象を決める4つのポイントのなかで、唯一言葉を発するパートである。

「挨拶は明るく、しっかりと相手に届く声で。業務的な挨拶や暗い声では、相手に気持ちが伝わりません。ちゃんと挨拶をすれば心も開けますし、相手との距離感も近づきます」

ここでも目や表情は大きなポイントになるようだ。

「挨拶のときも、笑顔で相手の目をしっかり見ることが大切です。そして、『●●さん、おはようございます』と名前を呼んでみると、ずっと特別な挨拶になるのでおすすめですよ。私たち客室乗務員も、お客さまの名前がわかるときは、可能な限りお名前をお呼びするようにしています」

挨拶の際は、できるだけ「プラスアルファ」で何か一言加えるといい。

例えば、

・「いいお天気ですね」

・「今日のネクタイ、お似合いですね」

・「ヘアスタイルを変えましたか?」

・「その腕時計、とても素敵ですね」

……といった具合である。

「機内では、例えば『今日は天気がいいので、富士山がご覧いただけそうですよ』と付け加えるようにしています。前向きになれる言葉をプラスで伝えることを意識してみてくださいね」

「立居振舞」で意識したいのは“ゆっくりした動作”

ラストは「立居振舞」。ここでは次の5つのポイントを押さえよう。

(1)「姿勢をしっかり正すこと」

背筋を伸ばして真っ直ぐに立つこと。頭、肩、お尻、ふくらはぎ、かかとの5点が壁にくっつくようにして立てば、真っ直ぐで綺麗な姿勢になる。起立時は、手を軽く前で重ねるといい。男性の場合、手は身体の横に置いてもいい。

  • 頭、肩、お尻、ふくらはぎ、かかとが壁に付けば、それが真っ直ぐな姿勢となる。

    頭、肩、お尻、ふくらはぎ、かかとが壁に付けば、それが真っ直ぐな姿勢となる

(2)「指先を揃えること」

何かモノを指すときに意識するべき所作である。5本の指を揃えてモノを指すことで、見る者に丁寧な印象を与える。

  • ものを指すときは5本指を綺麗に揃えて。人差し指のみなど論外だ。

(3)「ゆっくりした動作を心掛けること」

矢継ぎ早な動きは、丁寧な立居振舞に相応しくない。何をするときも、常にゆっくりした動作で、余裕のある動き方を意識したい。

(4)動作と言葉を分けること。

動きながら話すのではなく、動作と言葉は分けて行うべし。例えば「挨拶をしながらお辞儀をする」のではなく、「挨拶をしてからお辞儀をする」と、丁寧さは格段に上がる。

(5)「動作の最後をゆっくりすること」

榎本さん曰く「お辞儀をしたあとは、ゆっくりと頭を持ち上げるようにすることで、丁寧さがまったく変わってきます」。基本的に、動作はすべて「間と溜め」を意識し、最後は相手の目をしっかり見ることで丁寧な印象を与えることができる。

また、お辞儀にも3つの種類があるそうだ。

  • 30度の角度でお辞儀をする「敬礼」が基本

    30度の角度でお辞儀をする「敬礼」が基本

まずは、15度くらいの角度でお辞儀する「会釈」。これは心遣いを示すもので、廊下で人とすれ違うときなどに使うといい。一般的な挨拶は、30度の角度でお辞儀をする「敬礼」で、深い感謝やお詫びを示すときは45度でお辞儀をする「最敬礼」となっている。

「気持ちの深さが、お辞儀の深さに比例します。お辞儀の丁寧さは相手にしっかり伝わるので、にこやかに相手の目を見ることも意識しておきましょう」

「身だしなみ」「表情」「挨拶」「立居振舞」の4つを磨くことで、第一印象は格段にアップする。そして、これらを無理なく実践するためには、「相手を思いやる気持ちを、相手に伝わるように表現する=おもてなし」の心を持つことが大切なのだ。

【後編】では、話し方やビジネスマナーについて、榎本さんにお話をお聞きしよう。