「割愛する」はビジネスシーンでもよく使われますが、本来の意味とは異なる気持ちで誤用する人が多い言葉です。

本記事では「割愛する」について、詳しい意味や仏教にまつわる語源、使い方と例文を紹介します。敬語表現や、「省略」「端折る」などの類語との違い、英語もまとめました。

  • 「割愛する」とは

    「割愛する」の意味や使用例・類義語などを紹介する記事です

「割愛する」の意味と読み方、語源とは

「割愛する」とは、名詞の「割愛」に動詞「する」が付いた表現です。「割愛」には「惜しいと思いながらも、思い切って手放すことや捨てること」などの意味があります。

「割愛」の「割」の意味は「一部を分ける」で、「愛」の意味は「大切な物を手放したくないと惜しむ気持ち」です。2つの漢字の意味が組み合わさり「割愛」という言葉になりました。

「割愛」の読み方は「かつあい」です。

「割愛」の語源は仏教用語

「割愛」とは、もともとは仏教用語でした。人や物事に対して愛着する気持ちを断ち切ることを、「割愛」という言葉で表現しています。

鎌倉時代の仏教説話集である「沙石集(しゃせきしゅう)」でも、「割愛」という表現が用いられているなど、日本で古くから使われている言葉です。

「割愛する」は本来の意味ではない使い方をされることが多い

「割愛する」の本来の意味は、前述のように「惜しいと思いつつも、思い切って手放すこと」ですが、近年異なる意味で使われることが増えています。

特に「不必要な物を切り捨てる」という意味で使われることがよくありますが、これは本来の使い方ではありません。

「割愛する」には、「惜しい」「もったいない」という気持ちが含まれていることがポイントです。

  • 「割愛する」とは

    「割愛する」は仏教由来の言葉で「惜しいと思いつつ手放す」という意味があります

「割愛する」のビジネスシーンでの使い方・例文

「割愛する」は、日常生活はもちろんビジネスシーンでも使いやすい表現ですので、使い方を覚えておきましょう。ここでは、「割愛する」の使い方や使用例を紹介します。

「割愛する」の使用シーン

社会人になると学生時代に比べると、大勢の前で話す機会が増えます。伝えたい内容が多くても時間が限られている場合、すべてを伝えられず残念に思いながらも省略しなければならないことは多いです。

そのような状況で、「割愛する」という表現が使われることがよくあります。

「割愛する」のビジネスシーンでの使用例

・時間が限られているため、大部分は割愛することとなった
・紙面の都合上、掲載を割愛した作品も多いです
・発表したい内容は多いのですが、時間の都合上割愛させていただきます
・時間が押していますので、一部割愛させていただき、次に進めたいと存じます
・残り時間の都合で、部分的に割愛いたします。詳細についてはお手元の資料でご確認ください

「割愛する」はビジネスシーンで使われる機会が多い表現です。状況によって「割愛いたします」など敬語に言い換えながら使い分けましょう。

補足を加えるのが望ましい

「割愛する」という表現は惜しいと思いつつも内容を省略する際に使う言い回しです。省略しっぱなしにするのは望ましくありません。

「説明は時間の都合上、割愛いたします。詳細は資料にてご確認ください」などのように、補足を加えることで、割愛したことに対するフォローができます。

「割愛する」は敬語表現ではない

「割愛する」という言葉には敬語的な意味は含まれていません。敬語として使う場合は、「する」の部分を敬語表現にしましょう。丁寧語だと「割愛します」、謙譲語だと「割愛いたします」などがあります。

状況に応じて言い回しを変えて、使い分けてください。

  • 「割愛する」のビジネスシーンでの使い方・例文

    「割愛する」はビジネスで使われることがあるので使い方を覚えておきましょう

「割愛する」の類語・言い換え表現と違い

「割愛する」には似たような意味で使われる類語がいくつかあります。ここでは、「割愛する」から言い換え可能な類語表現を見ていきましょう。

省略する・省く

「省略」には「物ごとを簡単にするために、部分的に取り除くこと」という意味があります。「省略する」は「割愛する」と同じように部分的に取り除く点では共通していますが、「惜しいと思う気持ち」は含まれていません。

「省く」も「部分的に取り除く」「不要なものとして取り除く」という意味のため、同様に「惜しいと思う気持ち」は含まれていません。

使用する場合のニュアンスが少し異なる点に注意しましょう。

・時間の都合上、一部省略することになった
・時間の都合上、一部割愛することになった

飛ばす

「飛ばす」は「途中を部分的に抜かして先に進む」という意味の動詞です。部分的に抜かすという意味では「割愛する」と共通しているものの、「割愛する」のように惜しいと思う気持ちは含まれていない点が異なります。

・後半は時間の都合上、一部飛ばして進行させていただきます
・後半は時間の都合上、一部割愛して進行させていただきます

端折る(はしょる)

「端折る(はしょる)」とは、「一部を省いて短く縮める」ことを意味しています。語源は「着物の裾を折り曲げて帯に挟む」ことです。他の類語と同様「惜しいと思う気持ち」は含まれていません。

・終了時刻が迫っているため、大幅に端折ることとなった
・終了時刻が迫っているため、大きく割愛することとなった

カットする

「カット」の意味は、「部分的に削ったり、省略したりすること」です。「割愛する」のように「惜しいと思う気持ち」が含まれていません。また、「カットする」はあらたまったシーンでは使いにくく、話し言葉で使われることが多いです。

・紙面の都合上、掲載内容を一部カットさせていただきます
・紙面の都合上、掲載内容を一部割愛させていただきます

除外する

「除外」とは、「対象範囲には入らない物として取り除くこと」を意味しています。「割愛する」のような「惜しいと思う気持ち」は含まれておらず、事務的なニュアンスで使われることが多いです。

・次の項目は説明対象から除外します
・次の項目は説明を割愛します

  • 「割愛する」の類語表現

    「割愛する」の類語表現は多くあるので状況に合わせて使い分けましょう

「割愛する」の英語表現

仕事や日常生活の中で英語を使う機会があるなら、「割愛する」の英語表現も覚えておきましょう。「割愛する」の代表的な英語表現を紹介します。

omit

「omit」には「省略する」「抜かす」などの意味があります。「割愛する」の英語表現として使われることがありますので覚えておきましょう。

・We will omit those parts.(我々はその部分を割愛します)
・I had to omit the comments for want of space.(紙面の都合上コメントは割愛しました)

skip over

「skip over」には「読み飛ばす」という意味があり、「割愛して読む」という意味で用いられる場合がある表現です。

・I skipped over certain chapters.(私はいくつかの章を割愛して読んだ)
・He skipped over hard passages.(彼は難しい部分を割愛して読んだ)

leave out

「leave out」には「除外する」「省く」などの意味があり、「割愛する」の英語表現として使われることがあります。

・They had to leave out the illustrations for want of space.(彼らは紙面の都合で挿絵を割愛した)

  • 「割愛する」の英語表現

    「割愛する」の英語表現はいくつかあります

「割愛する」の正しい意味は惜しいと思いつつ省略することだが、誤用も多い

「割愛する」は、惜しいと思いながらもやむを得ず省略するときに用いられる言葉です。ビジネスにおいては何かを説明する場面などで、発表内容を省略して後で資料を見てもらいたい場合などでよく使われます。

「割愛する」は「省略する」や「端折る」など似た意味で使われる表現は多いです。しかし「割愛する」には「惜しいと思う気持ち」があることがポイントなので、単に「省く」という意味で使用するのは誤用です。

それぞれ使用シーンが少しずつ異なりますので、状況に応じて使い分けられるようになりましょう。