――ヘミングウェイの謎を追う新聞記者の新谷詠美役を白石麻衣さんが演じられます。正体を暴くために取材を続けるなかで次第にヘミングウェイに惹かれていくという役どころですが、白石さんの印象を教えてください。

とても実直な方。そして、往年の銀幕スターのような“隠せない品性”が白石さんの輝きの1つだと感じています。ヘミングウェイがこういうビジュアルなので、白石さんの持っている潜在的な品位が作品のバランスを取ってくれている。白石さんがいなかったらごく一部のマニアックな層だけが見る作品になっていたかもしれないので、いてくれて良かったなと(笑)。

――最後に、来月40歳を迎える斎藤さん自身についてお尋ねします。先日のラジオ『TAKUMIZM』(bay fm毎週土曜23:30~)では今後の人生について、「自分が関わるものに運命を感じたい。見た人に何かを与えられるようなものに残りの人生を注ぎたい、向き合っていきたいという欲が強くなってきた」と仰っていました。“運命”を感じる仕事選びのポイントがあれば教えてください。

歳を重ねるごとに自分の考え方がシンプルになってきました。対自分への感情や行動、「こうしていきたい」という発想には限界がある。でも対他人となると足し算が掛け算になっていく感覚があるんです。僕が尊敬する諸先輩方は、自身を磨くことより周りをどう活かすかということを重視しています。若者にチャンスを、さらには恵まれなかった中堅層にもチャンスを、という視野を持っている。

僕は今「発酵食品作り」に夢中で菌や微生物にまつわる書籍を読み漁って勉強しているのですが、周りを活かす環境を作って死んでいく「麹菌」の役割は、正に目指すところだと考えていて。

――周りを活かしたい、周りに光を当てたい、と。

まだまだ青二才ですし先輩面はしたくないんですけど、「周囲にどう還元できるか」を重視したい。人間は腐敗するか発酵するかの2つだと思っているんですが、これは歳を重ねることのカルマでもある。素敵なご高齢の方たちからは、発酵を感じられるんですよね。これまで生きてきた時間が人間としての旨味に変わっていて、その旨味が周りにいい作用をもたらす。僕も、周りにいる人たちの素材の良さを引き出せる存在になっていきたい。だから、僕の目標は“麹菌”なんです。

斎藤工
1981年8月22日生まれ、東京都出身。学生時代からモデルとして活動し、2001年に俳優デビュー。ドラマ『最上の命医』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『臨床犯罪学者 火村英生の推理』や、映画 『家族のレシピ』 『麻雀放浪記2020』など多数の作品に出演し、現在主演作『シン・ウルトラマン』 Netflix『ヒヤマケンタロウの妊娠』はじめ、『狐狼の血 LEVEL2』『CUBE』等が控える。 “齊藤工”名義で映画監督としても活動し、作品に、国内外で8冠を獲得した『blank13』や2020 Asian Academy Creative Awardsにて、日本人初の最優秀監督賞を受賞したHBO asia FOODLORE『Life in a Box』など。監督最新作『ゾッキ』及び『裏ゾッキ』が全国公開中。