慶喜とはとてもいい関係を築けている篤太夫。地元に残した千代(橋本愛)のことも気にかけている。手紙を書いて大事な懐剣まで送っているのに、返事が来ないとやきもきして、成一郎(高良健吾)に悩みを吐露する。ちょうど血洗島に帰って千代の気持ちを聞いていた成一郎は、篤太夫も千代もお互いを思いやっていることを十分わかっているから、にやにやしている。

離れていても大切に想い合う麗しい夫婦関係を描く脚本家の大森美香氏は、朝ドラ『あさが来た』(2015年度後期)でもこの時代、当たり前だった妾をもつ慣習を描かず、夫婦の純粋な愛情を徹底的に描いて好評を博した。『青天を衝け』でも夫婦の仲睦まじさの描き方は踏襲されていて、それがとても好ましく映る。千代との仲以上に深そうな慶喜とどんなにいい関係を築いても千代のことは決して忘れない。

残念ながら篤太夫と千代には跡継ぎとなる息子がいない。外国に行くときには先に跡継ぎを決めておく決まりがあり、尾高平九郎(岡田健史)を「見立て養子」にしようと考える。

どんどん出世している篤太夫だが、地元の家族や親戚関係を大事にしている。因われたままの長七郎(満島真之介)に面会に行くことも忘れない。

篤太夫と成一郎とは運命がまったく変わってしまった長七郎。少年時代、満月の夜に陣屋の鬼(囚われていた高島秋帆〈玉木宏〉を栄一は鬼と思っていた)を見にいったことを思い出す篤太夫たち。あの頃、子どもたちは等しく好奇心と希望に満ちて、勉強や剣術に励んでいたのだが、月をこの目で見ることもできず、思い浮かべることしかできない長七郎は「(捨てるはずの命を捨てることもできず)生きたまま死んでいるみたいだ」と嘆く。

志半ばで死んでしまった人たち、死ぬこともできずただただ苦しんでいる人たち、生きようと前を向く人たち。篤太夫は主人公ながら自分の主張を過度にはしないであくまで冷静に様々な立場の人たちと向き合っている。吉沢亮の大きな賢そうな瞳が、世界を映し出す瞳にふさわしい。これからパリに行ってさらに広い世界をその瞳で見てくると思うと、胸がぐるぐるする。

一緒にパリに行く外国方の杉浦愛蔵(志尊淳)をはじめ、福沢諭吉(中村萬太郎)、外国奉行支配・福地源一郎(犬飼貴丈)など、またまた新キャラが登場。にぎやかになってきた。福地役の犬飼と吉沢は朝ドラ『なつぞら』で兄弟役だったので、なつかしき共演となった。

『なつぞら』でも兄弟は仲良く麗しき家族愛だった。吉沢亮は家族愛に育まれのびのびと信念に従っていく姿が似合う。

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