俳優の松坂桃李が主演するテレビ朝日系ドラマ『あのときキスしておけば』(毎週金曜23:15~※一部地域除く)。きょう18日に放送される最終回では、“愛する人の死”が真っ直ぐに描かれる。
■幸福なキスシーンからの急転直下
32歳ポンコツ独身男性の桃地のぞむ(松坂桃李)が、大好きな漫画『SEIKAの空』作者の蟹釜ジョーこと唯月巴(麻生久美子)と運命の出会いを果たし、いつしか押し倒されてキスされそうになるまでの関係に。しかし、突然の飛行機事故で巴の魂が見知らぬおじさん・田中マサオ(井浦新)に乗り移ってしまったことから、体がおじさんで心は女性の“オジ巴”になってしまった。
紆余曲折ありつつも、2人がいよいよファーストキスというタイミングで、「誰だお前!?」と突然オジ巴がマサオに。その後も巴になったりマサオになったりを繰り返すうち、巴でいる時間は短くなっていき、桃地は「別れの予感」を感じ始める。
そんな11日放送の第7話ラストシーンでは、改めて気持ちを確かめ合った2人が念願のキス。麻生と井浦相手の2つのキスシーンを長回しで見せた見事な演出に、視聴者からは「両方見せてくれてありがとう」「美しすぎる」「ドラマ史に残る」と感動の声が寄せられたが、物語は急転直下。桃地の声で「僕が先生に会ったのは、これが最後だった」と無情な言葉が告げられ、幕を閉じた。
■新感覚の“憑依ドラマ”が与えた「考察したくない」という感情
本作はたびたび「入れ替わり」ドラマとカテゴライズされてきたが、厳密に言うと巴の魂がマサオに乗り移っている「憑依」ドラマとなる。そのため、入れ替わりドラマのように「最後には元に戻るんだろう」という安心感は与えてもらえない。すでに巴の肉体は容赦なく火葬されているので「実は生きていた」というゴールもなさそうだ。ということは……。
その先は考えたくないと、目を背けてきた視聴者も多いはずだ。「考察したくない」という気持ちにさせるのは、新感覚の魅力といえる。そして考えることを忘れさせるほど、目の前のラブコメに視聴者を没頭させてきた。序盤では銭湯に行ったりおんぶをしたりと男同士でイチャつく姿をコミカルに描き、中盤からは三浦翔平演じる、巴の元夫で『SEIKAの空』編集担当でもある高見沢春斗がラブバトルに参戦。思わず声を上げて笑ってしまうような突き抜けたラブコメで魅了した。
底抜けに明るい展開が続いただけに、マサオの帰還に喜び幸せな家庭を取り戻していく田中家と、不安を覚える桃地たちという、光と影で表現した「残酷さ」には唸るものがあった。
■“愛する人の死”を桃地は乗り越えられるか
最終回では、編集部、高見沢、母といった巴を愛する人間との別れが丁寧に描かれる。「死」とは突然で残酷なものだが、それぞれが巴との別れに向き合う姿がしっかりと収められていることで、「最後に会えて良かった」とあたたかい気持ちにさせるようなラストをそれぞれが迎えていく。
第7話では、桃地がスーパーの先輩・郷田ひと子(猫背椿)から「桃地、この頃変わったね」と激励され、いつの間にか成長していたことに気付く。ポンコツだった桃地はいつしか「桃地は愛されてるから大丈夫。仲間もいるから大丈夫」、そんな言葉をかけられる人間になっていた。
巴との初めての恋で成長し続けてきた桃地が、最後に乗り越えなければいけないハードルは“愛する人の死”。最終回予告での結婚式らしきカットは「結婚式するの?」「妄想? 本物?」と話題になっているが、桃地は自らこの意味に気付き、最後のハードルに向かっていく――。
そして、巴の魂がこの世に現れた本当の理由も明らかに。“あのキスらしさ”の詰まった真相にも注目だ。