2つの意味をもつ「見送る」は、敬語表現も複雑なので、誤用しないように注意したいところです。本記事では「見送る」の意味や使い方を解説します。また、類語や英語表現なども紹介するので、「見送る」という言葉の理解を深めるのに役立ててください。
「見送る」の意味は2つ
「見送る」には、下記の2つの意味があります。
- 出かける人や乗り物などを遠ざかるまで眺める
- 物事を見合わせる
日常会話では主に「出かける人や乗り物を送る」の意味で使われますが、ビジネスシーンでは「物事を見合わせる」の意味で用いられるケースも少なくありません。
なお、葬儀では「旅立つ故人とお別れをする」という意味合いで「見送る」が使われます。
葬儀に参列して故人を見送った。
「見送る」の敬語表現を解説
「見送る」の敬語表現は複雑なので、シーンや相手によって正しく使い分けられるようにしておきましょう。目上の人に対して正しく使うためには「尊敬語」と「謙譲語」の違いを確認することも大切です。
「見送る」の尊敬語
目上の人や社会的地位の高い人に使う「見送る」の尊敬語を紹介します。尊敬語にはいくつかの形があるので、それぞれの違いを確認しておきましょう。
■お見送りになる
「お○○になる」は、尊敬語の一般的な形のひとつです。ビジネスシーンでは、丁寧語の「ます」を組み合わせた「お見送りになります」を使うといいでしょう。
■お見送りになられる
「○○れる」「○○られる」も動詞から尊敬語を作るときに使われます。丁寧語の「ます」を組み合わせた表現は「お見送りになられます」です。
明日は部長がお見送りになられます。
■お見送りなさる
「お〇〇なさる」も、一般的な尊敬語の形です。丁寧語の「ます」を組み合わせると「お見送りなさいます」になります。
明日は部長がお見送りなさいます。
■お見送りだ
「お〇〇だ」も尊敬語の形のひとつです。ビジネスシーンでは丁寧語の「ます」を組み合わせた「お見送りです」を使いましょう。
■お見送りくださる
「お〇〇くださる」の形を使った尊敬語です。丁寧語の「ます」を組み合わせると「お見送りくださいます」となります。
部長がお見送りくださいます。
「見送る」の謙譲語
「見送る」の尊敬語と謙譲語は混同しやすいので誤用しないように注意しましょう。なお、謙譲語には以下の2種類があります。
謙譲語1:自分側、または相手側が「向かう先の人物」をたてる。
謙譲語2:自分側の行為や物事を相手に対して丁寧に述べる。「丁重語」とも呼ばれる。
謙譲語1、2のどちらにもいくつかの形があるのでチェックしておきましょう。
■お見送りする
「お〇〇する」は、謙譲語1の一般的な形です。丁寧に表現する場合は「お見送りします」となります。
■お見送りしていただく
「お〇〇していただく」も謙譲語1の一般的な形です。ビジネスシーンでは丁寧な表現「お見送りしていただきます」を使いましょう。
■お見送りいたす
「〇〇いたす」は謙譲語2の表現です。ただし、「お見送りいたす」という言い方は一般的とはいえないため、丁寧な表現「お見送りいたします」を使うといいでしょう。
「見送る」の丁寧語
「見送る」を丁寧に表現したいときには、丁寧語の「です・ます」を付けて使います。
- 見送ります
- 見送りです
丁寧語は一般的な会話でも使われるので、尊敬語、謙譲語とあわせて覚えておきましょう。
「見送る」の使い方と例文
「見送る」の例文を「出かける人を送る」と「物事を見合わせる」の意味に分けて紹介します。どちらもビジネスシーンでよく使われるので、ぜひ参考にしてください。
「出かける人を送る」意味の例文
「見送る」を「出かける人を送る」の意味で使う場合の例文を紹介します。シーンや相手にあわせて尊敬語と謙譲語を使い分けることが大切です。
私がお見送りいたします。
部長がお見送りになります。
相手に「見送ってください」と依頼する場合は、以下のような表現を使います。
お見送りいただければと存じます。
お見送りいただきたく存じます。
お見送りいただきますようお願いいたします。
ただし、「お見送りいただきますようお願いいたします」のような表現は基本的にメールや文書で使います。会話や電話で使う場合は以下のような表現を使った方がいいでしょう。
お見送りいただけますでしょうか。
見送っていただけますでしょうか。
見送ってくれた相手にお礼をしたい場合は、以下のような表現を使います。
先日はお見送りいただきましてありがとうございました。
「見合わせる」意味の例文
「物事を見合わせる」の意味で「見送る」を使う場合の例文を紹介します。
先日はお見積もりをいただき、ありがとうございました。
慎重な検討を重ねました結果、大変残念ではございますが今回はお取引を見送らせていただくこととなりました。ご期待に沿えず申し訳ございません。
またの機会がございましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
上記のように「大変残念ではございますが」などの言葉と併用すると、より丁寧でしょう。
「見送る」の類語
「見送る」を「出かける人を送る」という意味で使う場合の類語を紹介します。
同行
途中までの同行は「見送る」の類語として使えます。目的地まで同行した場合は「見送る」の類語にはならないので注意しましょう。
先日は駅までご同行いただきありがとうございました。
バス停まで同行いたします。
付き合う
「付き合う」を「見送る」の類義語として使う場合も「途中まで」が条件になります。最後まで付き合った場合は「見送る」の類語になりません。
駅までお付き合いいただきありがとうございました。
タクシー乗り場までお付き合いいたします。
付き添う
「付き添う」も「○○まで」と限定すれば「見送る」の類語として使えます。
お車まで付き添います。
保留
「見送る」を「見合わせる」という意味で使う場合には「保留」が類語として考えられます。
大変申し訳ございませんが、先日の件は保留とさせていただきます。
「見送る」の英語表現
「出かける人を送る」の意味で「見送る」を使うときの英語表現は「see off~」です。
I will see you off to the airport.(空港までお見送りします)
「物事を見合わせる」の意味で使う場合は「decide not to~」を使います。
I decided not to participate this time.(今回は参加を見送ることにします)
「延期する」などの意味合いが含まれる場合は「postpone」を使うといいでしょう。
I caught a cold, so my trip was postponed.(風邪をひいたので旅行は見送った)
「見送る」の敬語表現を正しく使い分けよう!
「見送る」には、「人を見送る」や「物事を見合わせる」などの意味があります。尊敬語と謙譲語も多彩なので、相手やシーンに応じて使い分けられるようにしましょう。
意味や目的によって異なる用法や類義語、英語表現を覚えれば、ビジネスシーンでもスムーズに活用できるはずです。