多くの人にとって1,000万円といえば年収の数年分。ということは、1,000万円の貯金があればしばらく仕事をしなくても優に数年以上は生活できそうなイメージがありますね。家族構成や生活レベルが違えば生活費も変わってくるものですが、本当に1,000万円で生活するとすれば何年暮らせるのか気になる人もいるかもしれません。
本記事では世帯モデルを3つに分けて、それぞれ何年暮らしていけるか解説していきます。
1,000万円でどれだけ暮らせる?
今の生活費が月15万円なら年間180万円、20万円なら年間生活費は240万円です。単純計算すると、1,000万円の貯金があれば前者は約6年半、後者は4年2カ月生活できることになります。
しかし、今のライフスタイルが会社員で、仮に会社を辞めて貯金で暮らすとすれば月々の生活費も変わってくるのが通常です。現実的には失業給付を受けられる場合もあるものの、会社員でなくなることで税金や健康保険・公的年金保険料などを自分自身で支払わなければならなくなり、慎ましい生活を求められます。
実際に今と比べて生活費がどう変わるかは生活スタイルや家族構成、生活地域などにもよるため一概には言えません。ここでは世帯モデルを「独身男性」「夫婦」「3人家族」の3つに分け、総務省の家計調査の平均生活費データを用い、生活レベルを変えずに国民健康保険料と公的年金保険料の負担が増えるものとして計算してみます。
独身男性の場合
総務省の家計調査によると、男性の単身世帯の1カ月の消費支出は15万1,095円です。このままの金額で単純計算する場合、1,000万円あれば約5年6カ月(66カ月)生活できる計算です。
生活費の内訳は次のとおりです。
退職後に国民健康保険料と国民年金保険料が加わり、生活費は17万2,329円になりました。この金額をもとに計算すると。貯金1,000万円で暮らせる期間は4年10カ月(58カ月)となり、8カ月分短くなりました。
なお、ここでは所得ゼロとし税金はかからないものとしましたが、本来、国民健康保険料と住民税は前年所得をもとに計算されるものです。そのため、実際には退職年と翌年は住民税の支払いもあります。国民健康保険料も表中の金額よりも高くなります。また、自治体によって保険料額は異なることも知っておきましょう。
夫婦の場合
続いて夫婦の場合で見ていきましょう。
総務省の家計調査で働いている2人家族の1カ月の消費支出は28万1,647円です。このままの金額で単純計算する場合、1,000万円で2年11カ月(35カ月)生活できる計算です。
生活費の内訳は次のとおりです。
参照した家計データは共働き世帯と専業主婦(夫)世帯が混在している2人家族です。ここでは夫婦共に退職するものと仮定して、国民健康保険料と国民年金保険料は夫婦2人分の金額としています。生活費は32万4,118円に上がり、貯金1,000万円で暮らせる期間は2年6カ月(30カ月)となりました。5カ月分短くなる計算です。
三人家族の場合
最後に3人家族の場合で見てみましょう。
総務省の家計調査で3人家族(勤労者世帯)の1カ月の消費支出を見ると、29万8,915円です。このままの金額で単純計算する場合、1,000万円で2年9カ月(33カ月)生活できる計算です。
生活費の内訳は次のとおりです。
参照した家計データは共働き世帯と専業主婦(夫)世帯が混在している3人家族です。ここでは夫婦共に退職するものと仮定し家族全員国民健康保険料に加入、国民年金保険料は夫婦2人分の金額としています。
生活費は34万1,385円に上がり、貯金1,000万円で暮らせる期間は2年5カ月(29カ月)となりました。4カ月分短くなる計算です。今回の3つのモデルケースのなかで家計支出額は最も多いですが、退職前後で暮らせる月数の差は最も小さくなっています。
いざという時の安心にはつながるが、継続して収入を得ることも大事
3つのモデルケースで1,000万円あればどれくらいの期間暮らせるかを見てきましたが、どの場合も案外短いと感じた人も多いのではないでしょうか。今回は月々の生活費だけという仮定のもとに計算していきましたが、旅行に行ったり、家賃の更新料、自動車の車検料・税金といった特別費の支払いがあれば、あっという間に1,000万円を消費してしまう可能性も考えられます。
今回見た計算は、老後生活を考える上でも参考になりそうです。以前、老後2,000万円問題が話題になったように、公的年金という収入源があっても貯金の取崩しも必要になる可能性は多くの人が持っています。
現役時代も老後に入ってからも、長い人生をお金に困らず生きて行くには継続して収入を得続けることや、資産形成に努めることが大切であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。