ビジネス書や自己啓発本で「ゲーム理論」という言葉を目にしたことはありませんか。ゲーム理論は経営の大事な意思決定や、マーケティング・商談の戦略を立てる際に活用されています。ビジネスパーソンならぜひ押さえておきたい用語ですね

本記事ではゲーム理論の意味、具体例や起源に、囚人のジレンマ、ナッシュ均衡などの関連用語も解説します。

  • ゲーム理論とは?

    ゲーム理論について、一歩ずつ理解を深めていきましょう

ゲーム理論とは?

ゲーム理論とは、利害が一致しない複数の主体をゲームに参加するプレーヤーになぞらえ、その意思決定の過程を分析する学問です。例えばビジネスシーンで商談につく際、お互いにとって何が最善の選択かを探りますね。そのプロセスで活用されるのがゲーム理論です。

ゲーム理論の起源

ゲーム理論は1940年代、アメリカの数学者であるフォン・ノイマンが提唱したのが始まりとされています。

その後、複数の学者が発展させており、現在では欧米においてMBA取得のためには必須の学問とされるほど、ビジネスシーンに深い影響力を与えるものになりました。経済活動のほか、政治や軍事問題の解決においても有効だとされています。

ゲーム理論の定義

ゲーム理論においては、日常に起きるすべての事柄は「ゲーム」です。職場での上司や部下との人間関係、取引先との商談、家族内でのトラブル、世界規模では地球環境問題などあらゆる事柄をゲームと捉え、解決の糸口を探します。

ゲーム理論で必要となるのは、そのゲームの構造や潜在する問題点を把握し、そこから起こりうる未来を予測する力です。自分だけの利益を求めるのではなく、他者の行動を予測し、両者にとって最善の方法を選ぶことが目標となります。

  • ビジネスでのゲーム理論の使い方

    「ゲーム理論」は実際にビジネスマンが戦略のために勉強しています

ビジネスにおけるゲーム理論の活用例

ゲーム理論に登場するのは、2人以上のプレーヤーです。それは人間に限らず、企業や国家なども当てはまります。複数のプレーヤーがそれぞれの利得を考えて意思決定・行動を起こすとき、それが周囲にどのような影響を与えるのかをさまざまな角度から分析し、戦術を練ります。

携帯会社の料金をテーマにしたゲーム理論

では実際に活用される例として、携帯会社の料金体系がなぜほぼ同じなのかをゲーム理論をもとに考えていきましょう。

大手携帯会社3社のA・B・Cが存在し、この3社とも携帯電話の利用料金が月額6,000円だとします。しかしA社のみ月額5,000円とした場合、どのようなことが起こるでしょうか。

利用者はできるだけ安くサービスを利用したいので、B・C社からA社への乗り換えをする人が増えます。しかしそうはさせまいと、B・C社も相次いで月額使用料を5,000円とするでしょう。その結果、利益アップのためにシェアを広げようと値下げしたA社でしたが、3社とも値下げしたことで業界全体の利益は少なくなってしまいます。3社とも横並びの料金設定はそのためです。

ゲーム理論によって他社の行動とその結果の事態を予測することで、自社の利益ひいては業界全体の利益を守ることができます。

  • ゲーム理論と一緒に覚えたい言葉

    「ゲーム理論」を理解するのに有名なゲームがあります

ゲーム理論と一緒に覚えたい言葉

ゲーム理論をより具体的に理解できるものに、「囚人のジレンマ」があります。

囚人のジレンマとは

盗みを働いたとして、2人の囚人(AとB)が逮捕されました。2人は別々の部屋で行われる取り調べにおいて、自白か黙秘かを迫られることになります。

ここでは2人に、以下の4つの選択が提示されます。

  • 1 両者が黙秘した場合(A、Bとも懲役1年)
  • 2 両者が自白した場合(A、Bとも懲役4年)
  • 3 Aが黙秘し、Bが自白した場合(Aは懲役5年、B は懲役3カ月)
  • 4 Aが自白し、Bが黙秘した場合(Aは懲役3カ月、Bは懲役5年)

2人にとっての最善の選択は「1」です。しかし別室の相手も同じように黙秘してくれるとは限りません。相手の状況が読めないなか、Aは自身にとって都合のよい「自白」を選びます。同じ思考でBも「自白」を選んでしまい、2人にとって最善の「2人とも黙秘」は選択されないというのがこの囚人のジレンマです。

囚人のジレンマから分かること

ゲームの構造を知るには、まず俯瞰して見ることが大切です。自分と他者、それぞれの利害関係を一覧にまとめると良いでしょう。そうすれば、どの選択が両者にとって最善なのかを理解しやすくなります。

パレート最適とは

パレート最適とは、お互いが不利益を生まず、その利益が保たれている状態をいいます。逆を言えば、どちらかがさらなる利益を上げたいときは、もう一方が犠牲となる状態のことです。

上記の囚人のジレンマに当てはめた場合は、「2人とも黙秘」が両者にとって最も理想的であり、パレート最適だと言えるでしょう。

ナッシュ均衡とは

ナッシュ均衡とは、ゲームのプレーヤーたちが一定のルールのもと、それぞれの利得が最大となるための最適な選択をし合っている状態をいいます。

しかしここで取られる選択は「最適なもの」であり、すべてのプレーヤーにとって「最善なもの」とは限りません。囚人のジレンマに当てはめるなら、「2人とも自白」がナッシュ均衡であると言えます。

すべてのゲームにはこのナッシュ均衡が1つはあるとされていますが、ケースによっては複数あります。利益を確実に生むためには、相手の戦略を探りながら、ナッシュ均衡を見いだすことが大切です。

  • まとめ

    問題や課題を客観的に分析、行動を予測する力が身に付きます

俯瞰的な視点がポイント

ゲーム理論とは、利害が一致しない相手がいる状況で、両者に利益をもたらす最適な行動を探るための考え方です。代表的なモデルとして「囚人のジレンマ」が有名です。

状況を俯瞰的に見ることで構造や課題を知り、相手の行動が予測できます。そして両者にとって最善の選択に近づくことができます。明日からの商談に、この理論を活用してみませんか。