俳優の松坂桃李が主演するテレビ朝日系ドラマ『あのときキスしておけば』(毎週金曜23:15~※一部地域除く)。思い切り笑ってホロリと泣ける、明るくも繊細でちょっとファンタジーな同作は、金曜日の夜にもってこいのラブコメディだ。そして、一言で表現するなら“応援したくなる”ドラマでもある。
きょう21日の第4話放送に先立ち、今から合流しても間に合うよう、また復習も兼ねて、これまでのあらすじと3つの“応援したくなる”ポイントを紹介していく。
同作は『大恋愛~僕を忘れる君と』など数々の恋愛ドラマを世に送り出してきた脚本家・大石静氏のオリジナルドラマ。32歳ポンコツ独身男性の桃地のぞむ(松坂)は、大好きな漫画『SEIKAの空』作者の蟹釜ジョーこと唯月巴(麻生久美子)と運命の出会いを果たし、いつしか押し倒されてキスされそうになるまでの関係に。
ところが、2人は突然の飛行機事故に襲われる。搬送された病院で巴が亡くなったというニュースを目にし、立ち尽くす桃地の前に現れたのは、巴の魂が乗り移った見知らぬおじさん(井浦新)だった――。
体がおじさんで魂は巴……通称“オジ巴”の存在を、第2話では桃地が、第3話では巴の母が受け入れた。第4話ではおじさんの本来の魂・田中マサオの家族や、巴の元夫がオジ巴と向き合っていく。
■“尊い愛情”を応援したい――とにかくキュートな松坂桃李
序盤では、桃地と巴の関係は曖昧なまま進む。「キスを拒んだくせに」と巴は何度も桃地に不満を漏らすものの、「私のことどう思ってるの?」とは聞かない。見た目が男同士になった今でも、2人は「友達以上恋愛未満」のような程良い距離のままでいる。
巴を「蟹釜先生」と呼び続ける桃地は、まるで“推し”を偶像崇拝するかのような愛を巴に注ぐ。巴が初めて茹でた、お好み焼きのように固まってしまった素麺の失敗作にも「先生が僕のために素麺を! 信じられない!」「僕の人生に起きた奇跡!」と大喜びする。「蟹釜先生は絶対!」と刷り込みのように巴を慕う従順で無垢な桃地。思わず応援したくなる存在に仕上がっているのは、姿が変わっても一途に巴を見つめ続ける、まっすぐでキュートな松坂の「目」の芝居が大きいのではないだろうか。
番組の宣伝に使われている井浦と松坂の2ショットからは「BLドラマかな?」と誤解めいたカテゴライズをされるかもしれないが、桃地から巴への愛情は「敬愛」で、「憧れ」で、「推し」で、「初恋」といった言葉が似合う。しかしこれからはある出来事がきっかけでストレートな「恋愛」のエッセンスが加わっていくことに。そのとき桃地は、どんな視線を巴に向けるのか。
■“2人1役”を応援したい――麻生久美子と井浦新のリレーション
ヒロイン・巴は、麻生と井浦の“2人1役”で演じる。ただでさえ難しい役どころだが「同時に演じる」という特殊な構成が輪をかけて巴を難役にしている。
巴の体は葬儀を終えて荼毘に付されたが、桃地の視界では井浦演じる“オジ巴”を通して麻生演じる“本来の巴”を思い出し、思わず2人の姿が重なる……そんな描写がふんだんに盛り込まれているため、麻生も巴として劇中に出演し続ける。
巴の姿が、麻生になったり井浦になったりと頻繁に行ったり来たりすることで、井浦が麻生の巴をコピーするだけではなく、麻生もまた井浦の巴をコピーしていかなければならない。思わず応援したくなるような難しい「共同作業」だが、視聴者から「完全に同一人物に見える」とナチュラルなリレーションに感銘の声が寄せられている。麻生と井浦がしっかりと巴像をすり合わせ、お互いの巴を研究し尽くしていることがうかがえる。
本来の巴が出続けることで、途中参加の層が「もともと麻生が演じていた巴を知らない」と置いてけぼりにならないところもこの構成の利点だろう。
そんな巴の魂が乗り移っていたおじさん「田中マサオ」には、家族がいたことが明らかに。第4話ではマサオの妻や息子と関わるなかで、マサオの魂はどこへ行ったのかという謎が新たに浮上する。
■“必死なオトナの男”を応援したい――三浦翔平の「壊れる演技」
昨年、同局のナイトドラマ枠『M 愛すべき人がいて』で主人公・アユを見出すプロデューサー・マサを熱演し、大きな話題を呼んだ三浦。今回は巴の元夫で、『SEIKAの空』を二人三脚で世に送り出して来た『週刊少年マキシマム』副編集長の高見沢春斗を演じている。ヒゲの似合うダンディな姿は、桃地と対照的な“オトナの男”。ひときわトレンディな雰囲気を醸し出していた高見沢だが、次第にコミカルな「壊れぶり」を見せていく。
巴の死によって『SEIKAの空』は未完のまま絶筆となるはずだったが、オジ巴になっても描き続けていた巴は、いつものように最新話をクラウドへアップロード。出版社では、ストックがあったのか、はたまたバグなのかと不思議な現象に首を傾げながらも、蟹釜ジョーの死を会見で発表する。だが「本人が今もどこかで描いているに違いない」と考えた高見沢は、会見に乱入し「蟹釜先生は生きている」「私が必ず探し出す」と宣言。巴の家の鍵を持っている人間なら何かを知っているのではと桃地を問い詰めるのだが……。
巴が生きていることを信じ、周囲から訝しがられるような行動に出てしまう高見沢。スマートな佇まいからは想像もつかない必死な姿をさらけ出すのは、巴と『SEIKAの空』への愛ゆえ。桃地とは違うまっすぐな姿もまた、応援したくなる存在だ。ドラマ後半にかけては、三浦の腕の見せどころといっても過言ではない、“オトナの男”の魅力も存分に発揮していく。
“入れ替わり”作品は、魂が元の体に戻って大団円、という終わり方がスタンダードかもしれないが、巴の肉体は容赦なく火葬されており、どんなラストが待っているのかも気になるところ。初見の方もすでに毎週楽しみにしている方も、まずは今夜放送の第4話で桃地や巴、高見沢……誰を応援したくなるか、確かめてみてはどうだろうか。