「蓋然性」とは、ある事柄が発生する確実性や真実である確実性の度合いを示す言葉です。もともとは哲学用語なので難解な部分もありますが、蓋然性という言葉の理解を深めれば、ビジネスシーンでも違和感なく使えるようになります。

本記事では蓋然性の意味や由来、可能性との違いや英語表現などについて詳しくご紹介します。蓋然性合理主義についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

  • 蓋然性の意味

    蓋然性の意味や類語との違いがわかれば、スムーズに使えるようになります

蓋然性の意味

蓋然性とは、「事柄が起こる確実性」や「確実性の度合い」「確からしさ」を意味する言葉です。なお、確からしさを示す目安を数学的に定式化して算出した数値が「確率」です。

数値としては算出できないが「どうやらそうなりそうだ」ということを表現したいときに蓋然性という表現を用いるといいでしょう。基本的には「蓋然性がある・ない」という言い方をします。

蓋然性の由来

蓋然性という言葉は、哲学用語辞典「哲学字彙(てつがくじい)」に、「probability」の訳語として使われたのが初出とされています。「哲学字彙」の著者である井上哲次郎は明治の代表的な哲学者で、帝国大学で日本人初の哲学教授になった人物です。

蓋然性と可能性の違い

蓋然性と可能性は、どちらも「そうなるだろう」と予想される状態を表す言葉です。ただし、蓋然性は「物事が現実になる確実性の度合い」を表しますが、「可能性」は「物事が実現する見込み」を表します。

また、蓋然性という表現は、客観的な根拠がある場合に限って使われます。「彼の推測は蓋然性に乏しい」などのように使うのが一般的です。蓋然性という言葉そのものが度合いを限定しているので、「必然」や「偶然」と呼べる状態で蓋然性を使うことはできません。

一方、可能性を測る尺度には主観が含まれます。「次の試合ではあの選手が活躍する可能性は高い」のように、「個人的にそう思う」といった場面でも使われます。蓋然性は客観的で、可能性は主観的な評価と覚えておくといいでしょう。

なお、可能性は「possibility」なので「ある・ない」を表し、蓋然性は「probability」なので「程度」を表すという考え方もあります。

  • 蓋然性と「可能性」の違い

    蓋然性は客観的、「可能性」は主観的な評価と覚えておきましょう

蓋然性の対義語は「必然性」

「必然性」とは「必ずそうなる」という意味の言葉です。蓋然性のように「確実性の度合い」を示すのではなく、「そうなると決まっている」ことを指すため、蓋然性の対義語として使えます。

「夜が来たら次は朝が来る」のような自然の摂理や、「徹夜明けだから眠くなる」といった現象は必然性になります。

必然性が蓋然性と大きく異なるのは、以下の2つです。

  • そうなる以外ありえない
  • 法律や法則などで制約されていること

なお、必然性は主に「ある・ない」で表現され、英語では「necessity」になります。

蓋然性の使い方

蓋然性を使うときには、主に以下に注意する必要があります。

  • 客観的な評価を表現する

主観的な意見には「可能性」などを使います。

  • 「ある・ない」または「高い・低い」で表現する

「強い・弱い」や「多い・少ない」などの言い方はしないので注意しましょう。

蓋然性の例文

蓋然性を使った例文をご紹介します。

「食品の保存状態が良くないので、食中毒になる蓋然性が高い」

保存状態の悪い食品が食中毒につながるのは、「客観的に見ても」そうなる確実性の度合いが高いと考えていいでしょう。「個人的にそう思う」の場合は「可能性」になりますが、このケースでは蓋然性を使っても違和感はありません。

「調査結果から判断しても、この場所に出店して収益をあげられる蓋然性は低い」

「調査結果」を基に客観的な判断をしているので蓋然性が使えます。「私はここに出店しても成功する蓋然性は低いと思う」という言い方は誤りです。この場合には「可能性」を使いましょう。

「特許権の侵害を起こす蓋然性の高い行為があったかどうかが重要だ」

蓋然性という言葉は、法律用語としてもよく使われます。たとえば、特許権侵害訴訟の「特許権侵害の被害立証」に必要な4要件には蓋然性も含まれているのです。訴訟で使われる蓋然性は、当事者同士だけではなく、客観的に見て特許権が侵害されたと納得できる要素が必要になります。

  • 蓋然性の使い方

    例文を参考にすれば、シーンに合わせて蓋然性が使えるようになります

蓋然性合理主義の意味

「蓋然性合理主義」とは、「確率に基づいて合理的に行動する考え方」のことです。自分の価値観や考え方よりも、損得を重視して合理的に行動することを意味します。

確率に基づいて効率の悪いことは排除するという悪い意味にもとらわれがちですが、ネガティブな意味とは限りません。株式投資の世界など、確率に基づいた利益の追求を重視する場合などによく使われます。

蓋然性の英語表現

蓋然性は英語で「probable」を用いて表現します。

probable

「probable」は「ありそう」や「起こりそう」という意味の英語です。

・That's probable:それは十分にあり得る・起こりそう (蓋然性が高い)

・That's not probable:そんなことはあり得ない・起こり得ない (蓋然性が低い)

蓋然性は幅広いシーンで使える言葉

蓋然性とは、ある事柄が発生する確実性や真実である確実性の度合いを示す言葉です。可能性や必然性といった言葉と誤用しがちですが、意味合いが異なるので正しく使い分けられるようになりましょう。

言葉の理解が深まれば、蓋然性の「当然のように高い確率」という意味合いをつかみやすくなり、ビジネスシーンでもスマートに使えるようになりますよ。