顧客や取引先とのトークスキルは、ビジネスシーンでは大切なものです。しかし「相手が頷いてくれない」「思い通りに話の流れを作れない」など、自分のペースに持ち込めなかった苦い経験がある方もいるのではないでしょうか。

心理現象のひとつに「カチッサー効果」と呼ばれるものがあります。カチッサー効果を知っておけば、トークを優位に進めやすくなります。この記事では, カチッサー効果の意味や、ビジネスや営業で活かせるよう具体的な使用例も交えて紹介します。

  • ノートに何かを書いている人

    カチッサー効果の意味や具体例を確認していきましょう

カチッサー効果の意味と由来

カチッサー効果とは「ある働きかけによって、深く考えることなく無意識に行動を起こしてしまう心理現象」のひとつです。この効果を利用すると、他者に何かを頼むときにもっともらしい理由を添えると承諾・承認を得やすくなるとされています。

「カチッサー」は聞き慣れない言葉ですが、テープレコーダーの再生ボタンを押したときの「カチッ」という音と、その後に流れる砂嵐の「サー」という音が由来とされています。「人間の心もスイッチが入ったように切り替わる瞬間がある」ということを例えた言葉です。

カチッサー効果に関する心理学実験

心理学者のエレン・ランガーが行った、カチッサー効果についての実験があります。コピー機の順番待ちをしている列の先頭へ行き、順番を譲ってほしいという依頼を3通りの言い方で試したというものです。

1.先にコピーをとらせてもらえませんか
2.急いでいるので、先にコピーをとらせてもらえませんか
3.コピーをとる必要があるので、先にコピーをとらせてもらえませんか

用件だけを伝えた1よりも、理由を含めて伝えた2や3のほうが承諾率は高くなりました。また、コピーする枚数が少ない場合、「急いでいるので」という本来の理由と、「コピーをとらなければいけないので」というこじつけの理由で、承諾率は大きく変わりませんでした。

これらの実験から、

  • 頼みごとは「○○なため、○○してもらえますか」と理由を添えたほうが承諾率は上がる
  • 些細な頼みごとの場合、こじつけの理由でも承諾率は上がる

ということがわかりました。

  • パソコン

    エレン・ランガーが行ったカチッサー効果の実験を紹介します

カチッサー効果をビジネスや営業に活用した具体例

「もっともらしい理由を添えると承諾・承認を得やすくなる」というカチッサー効果の心理的な法則とともに、ビジネスシーンでの使い方をご紹介します。テクニックをうまく活用できるよう、自分に関わる商品・サービスに置き換えて確認していきましょう。

どんな伝え方をすると相手の反応が良くなるのか、日ごろから考えていることが大切です。

数量や期間を限定した販売方法

通販やスイーツなど、幅広い場面で「数量限定」「期間限定」という言葉を目にします。これらは「珍しい商品だから」という理由づけによりその価値を高め、「買わなくてはならない」という印象を与えます。

ビジネスシーンでも、「先に契約した方限定で」「もう在庫は少ないのですが」などの言葉を自然に織り交ぜてトークができればよい印象を与えられます。

これらは「希少性の法則」(商品やサービスなどが限定的な場合、魅力的に思われること)と呼ばれています。カチッサー効果は「こじつけの理由でも承諾率が上がる」ため、希少性の法則と合わせることで購入や承諾してもらえる可能性が高まります。

有名企業の先行導入事例を紹介

有名企業など、権威のある方や団体からの意見は信頼度が高まります。「有名企業も導入しているから」という理由を与え、安心感をアピールします。

有名企業や大手企業における似た事例についてリサーチし、メリットを説明できるよう準備しておきましょう。これらの現象は「権威性の法則」と呼ばれ、マーケティングでも活用されています。

著名人や専門家によるお勧め

こちらも著名人や専門家の権威性を利用した方法です。「有名人が言うのなら正しいだろう」と自動的に信頼してしまう心理を活用します。

「あの○○さんも愛用している」「専門家が監修した」など、権威のある方の存在を通してアピールしましょう。「○○賞を受けた」という言葉も当てはまります。

無料サンプルや無料の見積もり

「せっかく無料で何かしてもらったのだから、お返ししよう」と思う心理を利用します。相手から何かしてもらったとき、相手にお礼しなくてはならないと感じる「返報性の原理」を活用した方法です。

ビジネスシーンでも、無料でサンプルを提供したり、顧客の相談に乗ったりするなどの機会を設けましょう。「してもらってばかりで悪いから」という心理が働き、相手が契約や購入に踏み切る可能性が高まります。

  • パソコンで何かの作業をしている人

    カチッサー効果をビジネスで活用しましょう

カチッサー効果の英語表現

カチッサー効果は英語で「Automaticity」と表し、ある働きかけによって、深く考えることなく行動を起こしてしまうことを意味します。「automatic」には「無意識的」「自動的」という意味があり、そこに接尾辞「ity」を足した名詞です。「(深く考えず)自動的に返事をした」は、「Replyed automatically」という表現になります。

カチッサー効果をビジネスに活用しよう

カチッサー効果の意味や活用方法について紹介してきました。理由をつけて話すことや心理的な法則を活用することにより、相手が無意識的に承諾する可能性が高まります。

自分の商品・サービスに置き換えて考え、ビジネスや商談の場において、カチッサー効果を上手に活用していきましょう。